【小松泰信・地方の眼力】こんな人たちに任せるわけにはいかないんです2017年11月29日
ドイツ・ベルリンに本部を置く国際平和団体「国際平和ビューロー」(IPB)は、24日、今年のショーン・マクブライド平和賞の授賞式を行い、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する政党や団体でつくる「オール沖縄会議」に授与した(東京新聞11月25日夕刊)。IPBはオール沖縄会議の活動を「不撓(ふとう)不屈の非暴力闘争」と称賛し、満場一致で決定したとのこと。また同会議の他に、核軍縮や平和活動に尽力したとして、米言語学者ノーム・チョムスキー氏と英政治家ジェレミー・コービン氏にも授与された。何と誇らしきことか。
◆政治家の恥ずべき発言、三連発
それに引き替え、連発される政治家の恥ずべき発言。
日本経済新聞(24日)などによれば、竹下亘自民党総務会長は23日、党会合の講演で、国賓を迎えて天皇、皇后両陛下が開催する晩餐会に関し、「(国賓の)パートナーが同性だった場合、どう対応するのか。私は(出席に)反対だ。日本国の伝統には合わないと思う」と述べた。翌日には「言うべきではなかった」と、反省の弁。ところが、「日本人のメンタリティーとしてどうかという思いがあった」と、ことの本質については理解できず恥の上塗り。性的少数者(LGBT)に関して、差別解消や権利の保障が求められる中で、自民党は先の衆院選でLGBTへの理解促進をめざす関連法の制定を掲げている。もちろん、公約以前の話ではあるが。
おつぎは、山本幸三前地方創生担当相。23日に三原衆院議員の会合で、三原氏のアフリカ支援活動に触れ、「何であんな黒いのが好きなんだ」と発言。25日に「表現が誤解を招くということであれば撤回したい」と記者団に述べたそうだ。氏の事務所は取材に「昔、アフリカを表す言葉だった『黒い大陸』という意味から言ったもので、人種差別的な意図は全くなかったと聞いている」と説明した(東京新聞25日夕刊)。
〝何だ、そういうことだったんですか。誤解しておりました〟と、この取って付けたような弁明を誰が信用するか。前職時代は「一番のがんは文化学芸員」との暴言で批判を浴びたり、加計学園問題に関しては、野党議員からの質問に、詭弁、強弁を弄してまともな答弁をしなかった札付き。このヘイトスピーチで、お前こそ真っ黒。
そして自民党役員連絡会における山東議員の「子どもを4人以上産んだ女性を厚労省で表彰することを検討してはどうか」との発言。「誰も国のために子どもを産んでいない」といった批判が出ている(東京新聞25日)。〝産めよ殖やせよ〟のスローガンに通ずる代物。
これら三人の政治家、一等でも二等でもない、まさにサントウ。
◆小泉進次郎は強力消臭剤。臭いニオイは元から絶たなきゃダメ!
将来の首相候補小泉進次郎氏は、このレベルの発言はしないようだ。このことを中国新聞(27日)による〝「安倍1強」に苦言 小泉氏が存在感〟という見出しの記事が伝えている。
「全く党で議論していない。このままだったら自民党は必要ない」と、首相が与党と調整なしに待機児童対策として3000億円の拠出を経済界に直接要請した件を憤ったこと。
「『安倍1強』に一番物を言えていないのは経済界ではないか」と指摘したこと。
衆院選で多くの聴衆が集まったのは「『小泉見たさ』で、自民党が応援されたわけではない」という氏の実感から、「国民は政権に飽きを感じている」とくぎを刺し、緊張感のある政権運営を求めたこと、などがその具体例。
このような氏の言動に、「人気に助けられてきたが、一歩間違えれば首相の足を引っ張りかねない」と気をもむ党執行部の言葉も紹介されている。はたしてそうだろうか。
あのシュッとした佇まいから、切れのいい内部批判が繰り出された時、聞く側の多くは、「よくぞ言ってくれました」と溜飲を下げる。そして、「この人がいてくれる限り自民党は大崩れしない」と安堵する。しかし、そこが問題。一種のガス抜きでしかない。なぜなら、前述したような政権与党での問題発言や問題行為はとどまることを知らないからだ。敢えて言えば、〝いろいろあっても進次郎の苦言で浄化される〟という悪ノリ感すらうかがえる。もちろん、その一方で首相候補としての株は上がる。
そう!シュッで思い出すのが消臭スプレー。彼は、安倍一派がまき散らす悪臭、腐臭を消す消臭剤的存在。消臭剤が強力であればあるほど、その評価は高まる(もちろんだんだん鼻にはつくが)。しかしニオイの元凶は悪化の一途。やはり、臭いニオイは元から絶たなきゃダメなんでシュッ。
◆自由化ドミノで、耕畜連鎖倒産の危機
さて、この度の所信表明演説においても、首相は〝世界の成長を取り込む〟の中で、「農家の皆さんの不安や懸念にもしっかり向き合い、安心して再生産できるよう、十分な対策を講じてまいります。水田のフル活用を図り、わが国の豊かな中山間地域、美しいふるさとを守り抜いてまいります」というリップサービスに続けて、「世界への挑戦は、手間ひまかけてこしらえた質の高い日本の農林水産物にとって、大きなチャンスです」として、輸出の伸びを強調した。
それを強く意識したのか、日本農業新聞(25日)の論説は、「自給率45%への引き上げは国是である。...安倍晋三首相は『国難突破』を強調するが、自給率38%に低迷する国内農業の弱体化こそが異常事態で『国難』そのものであろう。相次ぐ貿易自由化と食料安全保障の関係を改めて問いたい」とズバリ斬り込んでいる。そして、「TPP11、対欧EPAと立て続けのメガ通商協議は、特に畜酪に打撃を与える。水田フル活用で飼料用米を振興しても、畜酪の生産基盤が揺らげば需要先がなくなる。今後の農政展開は、大局的な自給率向上を全面に掲げ自由化対応すべきだ」と、耕畜連鎖倒産への危機に警鐘を鳴らしている。
この危機意識に、当コラムも同感。
ところが18日の同紙には、斎藤農相が講演で、農産物の輸出拡大に向けて地方自治体やJA、企業が海外での〝売り歩き〟に本腰を入れるよう呼び掛けたことが紹介されている。人口が減少する中で、国内産業をめぐる環境は厳しさを増し、特に農業は「生産現場だけ見ているとジリ貧になる」としたうえで、「目を世界に転じればいろんな可能性が広がっていく」と輸出拡大の重要性を強調したそうである。十八番となっているキッコーマンの醤油が米国で長年売れていることを例にあげ、「売れたのは社員が全米を回り、売り歩いたから」と解説。地方自治体やJA、企業などが連携して〝売り歩き〟に取り組むよう要望したそうである。
「国内にあぐらをかいてないで、世界を相手に、売って売って売りまくれ」ということ。通産省官僚の思考癖は抜けない。
醤油の原料である大豆の平成27年における自給率は食品用に限っても25%である。この低自給率を見れば、軽々に醤油ネタは使えないはず。政治家の軽さと想像力の欠如には目を覆いたくなる。何度でも言う。〝基礎代謝すら充足できない食料自給率〟から目を背ける農業政策、食料政策は政府の責任放棄である。いいんですかこんな無責任な人たちに任せて!
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