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コラム:グローバルとローカル:世界は今

【三石誠司 宮城大学教授】

2017.12.22 
(062)「かぼちゃ」と「にんにく」の自給率一覧へ

 我が家では今でも冬至にかぼちゃを食べる。家内の実家も同様で、結婚後も自然とその習慣が食卓に残り現在に至っている。この食習慣、現代日本の家庭ではどの位残っているのだろうか。また、その根拠は若い世代にもしっかりと継承されているのだろうか。
 言うまでもないが、冬至は北半球では最も昼の時間が短い日(夏至の逆)である。昔の人は、1年を24に分けていたが(二十四節気)、それは1月の小寒から大寒、立春と続き、その最後を冬至としている。今年の冬至は12月22日である。

 ところで、かぼちゃは夏野菜だ。ビタミン類が豊富なだけでなく、鉄分やカルシウムなども多い。何よりも長期保存が可能である。そのため、先人の知恵として、夏の野菜であるかぼちゃを冬至まで保存しておき、旬の食べ物が少ない冬場というだけでなく、暦の上で最も気力が弱る(陰)と考えられていた冬至に夏の野菜(陽)を食べることにより、陽気を補い健康を願ったのである。高校受験で良く使う四字熟語で言えば、「一陽来復」、この意味は冬が終わり、春が来ること、つまり悪いこと(日が短くなること)も冬至まで、これからは日が長くなり、良いこと(陽気)が起こるという意味で、元々は『易経』、復(地雷復)の項の言葉である。(注1
 したがって、冬至にかぼちゃを食べることは、歴史的な面からも、そして現代の栄養学的見地から見ても、風邪の予防や栄養補給という意味を含め、その効果は十分に意味のある習慣であると考えてよい。

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 さて、そのかぼちゃであるが、平成28(2016)年産の国内収穫量は18万5300t(出荷量14万5600t)である。都道府県別では、第1位の北海道(8万2900t、全体の45%、以下同じ)が圧倒的で、以下は、鹿児島(9130t、5%)、茨城(8090t、4%)と続き、全国で栽培されている。
 なお、筆者のいる宮城県は収穫が1650tだが、出荷は597tに過ぎない。実は、他の多くの県でも同様の傾向が見られる。この解釈はいろいろ可能だが、自家消費が多いのであれば、その背景には、多くの農家は歴史的に、もしもの時の保存食料としてのかぼちゃの価値を知っているとの仮説が立てられる。これはいつか検証してみたい。

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 一方、同年のかぼちゃの輸入量は11万6592t(こちらは財務省貿易統計1-12月ベース)である。統計の時期がやや異なるが、国内産と合わせれば概数として年間30万トンが国内で消費され、単純な計算上で、収穫量基準の自給率は61%、出荷量基準では56%となる。繰り返すが、これはカロリーベースではなく、単純な国産÷総数(国産+輸入)の数値である。
 輸入元はニュージーランド(6万2502t)、メキシコ(4万7881t)が中心である。興味深いことに、数量ではこの順だが、金額ではメキシコが約55億円、ニュージーランドが約46億円と順位が逆転している。単純計算ではメキシコ産が114円/kg、ニュージーランド産が73円/kgが輸入単価となる。
 さて、国際貿易の進展は好ましいことは間違いない。それについてはここでどうこう言う気はないが、食料自給率の議論をするのであれば、少し、具体的な品目についても現実を把握しておいた方が良い。いつもカロリーベースで39%だとか40%だとかだけでは価格交渉と同じになるし、多くの人には現実の食卓の方が気になる。現実感が乏しい議論になれば深めようがなく、共感も得られないこととなる。
 ついでに言えば、かぼちゃと同様な視点で国産と輸入のバランスが他の野菜と大きく異なる品目には、にんにくがある。
 平成28(2016)年産の収穫量は2万1100t、出荷量は1万4700tである。これに対し、同年1-12月の輸入量は2万0597t。かぼちゃと同じ計算をすれば、自給率は収穫量ベースで51%、出荷量ベースで42%である。輸入元は中国(1万9227t)が圧倒的であり、他(スペイン1137t、米国201tなど)を大きく引き離している。つまり、にんにくは絶対量としての自給率そのものが既に4~5割ということだ。
 こうした日々の食卓の現実を踏まえた上でこそ、食料自給率に関する全体の議論は行われるべきであると思う。
 
注1:『易経』(上)高田真治・後藤元巳訳、岩波文庫、2007年、226-231頁。

 

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