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【小松泰信・地方の眼力】米騒動、今年あったら百年目2018年1月17日

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【小松泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授)】

 1月15日、JAにじ(福岡県うきは市に本店)の新春役職員研修会で、JAのオリジナルカレンダーを飾る描き手12名が表彰された。管内の小学校に通う5年生から応募があった、400を超える作品より選考された力作である。絵のうまさは言うまでもないが、12名のうち女子が10名であった。この年代、この領域でも、女子の能力の高いことが確認された。

◆米騒動百年が発するメッセージとその受け手

小松泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授) 「今年は市民運動の原点というべき米騒動百年の年。米価の高騰に苦しんだ民衆の行動は富山の女性たちから全国に拡大し、寺内正毅内閣を総辞職に追い込んで、大正デモクラシーの端緒を開いた」として、安倍首相はじめ東京新聞の元日社説など、明治150年を評価する論調に対して、 "明治の精神より大正の精神がいいな" とするのは斎藤美奈子氏(文芸評論家;東京新聞3日)。
 米騒動の発端は、1918年7月23日、米価高騰に苦しむ富山県魚津の漁師の妻たちが、地元の米穀店に集結し、米の移出をやめ安く売るよう嘆願したこと。これが全国に波及し、未曾有の大民衆暴動となり軍隊が鎮圧に出動するまでにいたり、時の内閣が総辞職に追い込まれた。
 日本農業新聞(12日)は、「米騒動100年目の真実 "震源地" 穏便に解決」というタイトルで、発端となった魚津での史実を後世に伝えようと、ドキュメンタリー映画「百年の蔵」の撮影が進んでいることを伝えている。史実とは、当地では穏便な話し合いで解決できており、発端は魚津であっても、ぶちこわしや暴動の類はなかったことである。もちろん、魚津の女性たちの怒りを機に内閣が倒れ、大正デモクラシーへの大きなうねりとなったことも史実の一つである。
 撮影に当たる神氏(映像作家)は、「閉塞感が漂う今、なかなか物を言えず、声を上げても無理だと感じる市民は多い。100年前のお母さんたちの勇気ある行動が日本の転換期を生んだ。魚津の米騒動から見えるのは、今の日本人に向けたメッセージだ」と強調している。
 平成にも一度米騒動があった。1994年の冷害における大不作で、米価が2倍近くになり、米屋の店先に行列ができたことである。もちろん、世直しなどにはならず程なく収束。多くの人は忘れているはず。平成における米騒動はそれが最初で最後となるのだろうか。映画から発信されるメッセージを、最も重く受け止めねばならないのはJAグループであり、米生産者である。

 

◆平成米騒動の予感

 「稲作農家が将来にわたって安定経営できるのか、2018年は重要な節目となる」で始まるのは、日本農業新聞(11日)の論説。その訳は、米政策改革がヤマ場を迎えるからである。そして「生産調整の配分から国が手を引いて民間主導になる中で、需給と価格の安定を確保できるかが最大の課題だ」としたうえで、「指摘したいのは、規模拡大が必ず農業経営のプラスになるという明確な見通しが見えないことだ。前段で10a7500円の米の直接支払交付金が廃止され、30ha規模では225万円の減収になる。さらに分からないのが出来秋の米価で、需給次第だ」とする。暴落した14年産をあげ、20ha以上規模では減収幅が334万円にも達し、規模拡大のマイナス面が出たことを紹介している。そして「18年産の米価は個々の経営にとどまらず、今後の水田農業の将来展望に大きな影響を及ぼしかねない」と、重要な節目であることを訴える。
 中国新聞(8日)社説も、「農家の自主性を尊重するとした、現政権の訴えは聞こえがいい。ただ判断を委ねられる現場が戸惑いや不安を抱くのは無理もない。...ある意味で国の責任放棄と言えなくもない。年700億円超の交付金廃止こそが、真の狙いだったのではないかと思える」と、批判する。直接支払交付金廃止により、小規模零細や兼業農家への影響は小さくないことと共に、「大規模な集落法人では数百万円の減収が見込まれる。就農や定住の受け皿でもある営農集団が揺らげば地域の将来に影を落とす。法人設立で先進県の広島はなおさらで、経営が厳しくなるだけでなく、離農や耕作放棄に拍車が掛かる恐れもある」と、危機意識を募らせる。さらに「工業製品の輸出増ありきで、農業が二の次になっていないか。『強い農業』、成長産業化、輸出倍増...。現政権が思い描くようなばら色の農業は考えにくい」と手厳しい。
 そして、食料安全保障の視点の重要性を強調したうえで、「コメは基幹作物で、米作の衰退は農業経営の根幹を揺るがし、ひいては地域社会の存続にも関わる。消費者もわが身の事と捉えるべきだ」と、消費者へのメッセージも忘れていない。
 やはり一騒動の予感あり。

 

◆新たな火種か

 日本経済新聞(17日)は、"コメ全国組織、公取委と協議へ" という見出しで、全中が主体となって昨年12月に設立した「全国農業再生推進機構」が、「価格カルテルにならないよう、公正取引委員会との協議を模索していることが分かった」と、伝えている。そして「独自に入手した議事録によると、複数の参加者から需給調整が実質的な減反継続にならないか懸念が出た。事務局側の弁護士は『公取と相談しながら疑義がないよう進めていきたい』と説明した」とのことである。
 公正取引委員会が絡んできた近年の事案を思い浮かべれば、JAグループや生産者にとって楽観的シナリオは想定できない。全中や推進機構には、理論武装と忘れつつある闘う姿勢が不可欠である。

 

◆発揮すべき農村女性の感性と存在力

 「農業を発展させるためには、もっと女性が能力を発揮するべきだ。そのためにも農業・農村現場でリーダー的な役割を担う女性を増やし、女性が働きやすい環境を整える必要がある」で始まるのは、日本農業新聞(9日)の論説。"経営発展への突破口に"という見出しのとおり、女性の感性に期待した経営参画策が中心である。これを促進するものとして、農水省が18年度に、女性が変える未来の農業推進事業を新設し、「女性農業者の力を活かした農林水産業の成長産業化」を目指していることを紹介している。さらに、JA女性役員が7.5%と少ないことから、「...さらに数を増やし、農業・農村での存在力を高めよう」とエールを送っている。
 経営参画というテーマに限定すれば、否定するところは特にない。しかし、これまで示してきた、稲作をめぐる状況を考える時、少なくともわが国農業の基幹作物の存在意義を貶めかねない状況、そして消費者にも多くの戸惑いと混乱をもたらすような状況が眼前に迫っている。
 加えて、言われなき農協改革に対抗する自己改革の遂行など、農業やJAをめぐる重要課題の解決のために、女性の"感性"と"存在力"をどう発揮するべきなのか。これこそが、農村女性に突きつけられた喫緊の課題である。
 1月24、25日に開催される第63回JA全国女性大会には、これらのことに焦点をあてた緊張感に満ちた運営が求められる。能力を評価し、活躍を期待するという、リップサービス半分のメッセージが各方面から発せられるはず。甘言に酔うことなく、男性社会の負の側面を味わってきた者でしか出せない感性と存在力を遺憾なく発揮すべきである。
 「私の絵がカレンダーを飾ったあの年に、あなたたちは何をしていたのですか」と、あの子どもたちに言われないために。
 「地方の眼力」なめんなよ

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