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コラム:グローバルとローカル:世界は今

【三石誠司 宮城大学教授】

2018.06.15 
【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】(086)「巨大化」が止まらない?一覧へ

 映画の宣伝ではないが、米国の家畜は毎年大きくなっているようだ。統計を見る限り、家畜1頭(羽)あたりの平均体重は、牛・豚・鶏・七面鳥のいずれもが西暦2000年と比べて着実に増加している。

 この背景にはいくつもの要因が考えられるが、最も大きいものは世界の食肉需要が多くの国で依然として旺盛なことであろう。そして、こうした需要に応えるために、動物遺伝学と飼料学などの知識を活用した飼料効率改善が大きく影響している。簡単に言えば、より早く、より大きく育てるための知識と技術、そして方法が普及したということだ。
 米国農務省によると、と畜後の冷蔵枝肉ベースで見た場合、西暦2000年と比べ牛は平均73ポンド(1ポンド≒454gとすると、約33kg)、豚は18ポンド(同約8kg、以下「同約」を省略する)増加している。これ自体は凄いことだ。何しろ1頭の牛から取れる枝肉の量が20年前と比べて33kgも増えているのだから。
 ブロイラーと七面鳥は生体重ベースで見た場合、同じ期間に各々1.2ポンド(0.5kg)、5.3ポンド(12kg)増加している。

 さて、こうした情報に接するといくつかの好奇心が生じる。例えば、第1に、大昔はどうであったか?第2に、日本ではどうか?以下ではこの2つを簡単に検討してみよう。

 

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 第1の疑問。大昔はどうか。米国農務省の時系列データを見ると、例えば、牛の場合、1960年1月の平均生体重は1064ポンド(483kg)であり、これが2018年1月には1380ポンド(627kg)と316ポンド(143kg)増えている。58年間で平均体重が30%増はかなりの伸びであるが、この期間の年平均成長率を計算すると1年間の伸びは0.45%に過ぎない。つまり、毎年の伸びはわずかでも長期間では大きく差が出る。この点はまさに金利や投資と同じである。
 と畜後の冷蔵枝肉ベースは、610ポンド(277kg)から2018年1月には830ポンド(377kg)となり、58年間で220ポンド(99.88kg)、つまり約100kg増えている。元々、牛の身体は大きいが、58年間で100kg増えただけでなく、枝肉の増加率は36%と生体重の増加率30%を大きく上回り、歩留まりが大きく改善されたことがわかる。
 ちなみに同期間で豚の生体重は、236ポンド(107kg)から286ポンド(130kg)と50ポンド(23kg)、つまり21%増加し、冷蔵枝肉ベースでは181ポンド(82kg)から214ポンド(97kg)へと33ポンド(15kg)、18%増加している。こちらは生体重の増加率と枝肉の増加率が概ね等しい。
 実は、筆者が最も驚いたのはブロイラーと七面鳥である。同じ1960年1月の平均生体重は、各々3.4ポンド(1.5kg)と15.0ポンド(6.8kg)である。2018年1月の数字は6.3ポンド(2.9kg)と31.7ポンド(14.4kg)である。
 これは驚くべき数字だ。七面鳥もブロイラーも1958年当時と比べて体重が倍増している。もはや当時とは全くの別の生き物と考えた方が良いのかもしれない。変な例えだが、7kgのネコと15kgのネコを想像して頂ければその違いがわかるであろう。

 

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 第2の疑問。日本はどうか。統計の取り方が多少異なるが、農林水産省の昭和35(1960)年のと畜頭数及び枝肉生産量を見ると、成牛で66.8万頭、13万7000トンである。1頭平均を計算すると205kgとなる。高度成長直前の日本の畜産がどのようなものであったかが何となく想像できる。平成30年4月の数字は9万頭、4万1000トンであり、こちらは1頭平均455kgである。米国の数字には及ばないが素晴らしい。これこそ畜産農家と関係者、技術者・研究者の研鑽の賜物である。

 

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 さて、実のところ、家畜の巨大化がどこまでいくのかはわからない。そもそも人間の大脳の発達への影響、そして集団で狩りを行うなどの組織的行動、さらに栄養価が高く保存が効くなどの点から人類と肉食は極めて長い関係があることはよく知られている。七面鳥や牛ほどではないが、我々の平均身長や平均体重も過去1世紀で大きく変化している。将来、我々は必要な肉をどのような形で確保していくのか、興味は尽きない。

 

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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】

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