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コラム:グローバルとローカル:世界は今

【三石誠司 宮城大学教授】

2018.07.27 
【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】(092)鳥瞰・俯瞰・big picture一覧へ

 ものの本によると、俯瞰と鳥瞰はどちらも似た意味だが、俯瞰は上から下を見下ろすことであり、鳥瞰は飛んでいる鳥のように高いところから全体を見渡すことのようだ。グーグル翻訳に両者を入力すると、overhead view、bird’s-eye view、とそのままの訳が出てくるが、要は全体を見ること、つまりbig picture を把握することだ。

 現代社会の仕事は細分化され過ぎているため、我々はどうしても目の前の事象に集中しがちになる。その結果として全体像がわからないままに、かなり複雑かつ詳細な議論を積み重ねることが多い。それだけならまだ良いが、ともすると仮定と誤解、印象の上に幾重にも不確定な情報を積み重ねて物事を判断することにもなりかねない。
 そのような時には、少し対象から離れて全体を薄目でぼんやりと眺めることが重要だ。それにより、細部に集中していた意識が全体に切り替わり、物事の本質を一気に把握できることが多い。

 
 
  ※  ※  ※

 

 例えば、農薬。恐らく、農家にとっては除草剤や殺虫剤など当たり前の物であるし、流通・保管業者にとっては防カビ剤などもよく目にするであろう。さらに、遺伝子組換え作物として知られているバイテク作物、これらを全てまとめた場合、市場規模はどの位になるのだろうか。
 このようなことを何気なく考えていたところ、不思議なもので丁度良いデータを見つけた。探したい時には見つからないのにボーっと考えるとすぐに必要なものが見つかるのは面白い。少し加工するだけで非常に興味深いデータになる。それが以下の表だ。

世界の作物保護マーケット(2017年:単位100万ドル) 
 遺伝子組換えが作物保護かどうかは別として、この表からはいろいろな事がわかる。
 第1に、合計市場規模は約700億ドル(1ドル=100円として7兆円)。農薬類(除草剤、殺虫剤、防カビ剤等)とバイテク作物を市場規模で比較した場合、前者が4分の3、後者が4分の1になる。農薬の市場はバイテク作物の3倍ということになる。
 第2に、地域別に見た場合、これらの合計は先進国が55%、途上国が45%と、金額ベースでは先進国の方が多い。内訳は、農薬類だけで見た場合、市場規模は合計537億ドル、先進国と途上国でほぼ半分である。農薬の種類別に見てもほぼ等しい。ところがバイテク作物となると北米だけで途上国の2.6倍、世界のバイテク作物の市場規模172億ドルの7割を占めている。
 第3に、農薬全体で見た場合、現在、世界最大の市場は南米である。北米はバイテク作物では最大の市場だが、農薬では必ずしも最大ではない。除草剤は最大だが、殺虫剤は南米、防カビ剤はヨーロッパが最大の市場である。
 第4に、地域別の比較はさらに興味深く、北米とヨーロッパは農薬市場の規模ではほぼ同じだが、殺虫剤と防カビ剤の市場規模が対照的である。もちろん、雑草、害虫、カビなどの発生量は土壌や気象条件の違いによるところが大きいため断定は危険だが、ここで紹介したデータが正しいとすれば市場規模は明らかに異なる。
 これまでバイテク作物に対し、相当慎重な姿勢を貫いてきたヨーロッパ農業だが、農薬の市場規模という視点から見ると、何故、環境問題にあそこまで力を入れるのかということの本音が見える気がする。
 最後に、このデータで中国はどこに入るのだろうか。極東上記以外あるいは世界上記以外なのだろうが、いずれにせよ、市場規模としては世界に占める日本のシェア4.4%を大きく上回ることは間違いない。

 

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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】

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