【熊野孝文・米マーケット情報】なぜ進まないコメ卸の再編? 廃業支援金は必要か2018年9月25日
「C社は、米卸売業者2社(D社、E社)と炊飯事業者1社(F社)の3社が経営統合し設立。米の仕入れ、とう精、販売のみならず、炊飯事業まで一貫して行うことで付加価値を高める事業戦略の構築が狙い。
合併前の既存工場を廃棄し、最新設備の整った炊飯工場及び精米工場を新設したことにより、高品質の製品製造が可能となり、大手量販店や業務用ユーザーとの取引が拡大。実需者との価格交渉力が向上したことで、生産者に適切な対価を支払うことも可能となり、農業所得の向上に貢献」
これは農水省が作成した農業競争力強化支援法の活用ガイドブックに掲載されていた事例である。こうした事例があったということを全く知らなかったので、具体的な中身が知りたくなり、作成した食料産業局へ問い合わせてみたところ「農業競争力強化支援法に乗っ取って、事業の再編を行えば『こうしたことも実現できる』という想定で紹介した」との返事。要するに架空の話。架空の話でも法律まで作ったのだから、実際にこうした動きが出ているのだろうと思ってコメ卸担当の穀物課へ出向いて担当者2名に聞いてみたところ、パンフレットにあるような事例はないとのこと。
あるのは北陸の卸の事例だけで、事業再編計画の概要は、これまで培ってきた精米技術をさらに高度化して、コメの卸売業だけでなく、新たに小売業を一体的に実施、流通の合理化、販売拡大のための事業再編を行うというもの。そのために精米設備の一部廃棄や新たな設備導入、配送センター、倉庫の新設、直売所も建設する。今回、農水省より認定を受けたことにより、日本政策金融公庫の低利融資や償却に伴い税制上のメリットも受けられることになる-とされている。農業競争力強化支援法が施行されて1年経っているにも関わらず、1件しか認定を受けていなのはなぜなのか?
◇ ◇
具体的な支援策は、金融支援として、(1)日本政策金融公庫の低利融資、(2)農林漁業成長産業化支援機構の出資、(3)中小企業基盤整備機構の債務保証、(4)日本政策金融公庫の信用状の発行。税務特例として(1)登録免許税の軽減、(2)減価償却の特例、(3)欠損金の繰り戻し還付。その他として事業譲渡における債権者に対する催告の手続きの簡素化といった具合で盛りだくさんである。その具体的な内容は農水省のホームページで詳しく紹介されているのでそちらを見て頂きたいが、支援メニューを提示されたコメ卸団体に聞くと「魅力がない」とバッサリ。
そのコメ卸業界がどうなっているのかというとタイミングよく米穀機構が今月会員卸の29年度の経営概況をまとめて公表した。それによると前年と比較可能な116社(兼業大手6社は除く)の米穀の売上は6282億円で、前年に比べ354億円(5.8%)増加した。これは精米販売価格が上昇したためで、数量ベースでは1.3%減少している(239万5900t:卸間売買の数量も含む)。売上総利益は7028億円で前年に比べ35億円(4.7%)減少している。これは仕入れ価格が上昇したものの販売への価格転嫁が十分にできなかったためで、粗利益率も前年の9.5%から0.86ポイント低下している。さらに営業利益が減益した卸が全体の56%を占める65社あり、最終損益が赤字になった卸が30社ある。言い方にもよるが、米穀機構の保証部は『ピーク時には会員社が350社であった。それが116社まで減ったのですから』と再編は進んでいるとも言えなくもないと。
ただし、農水省が農業競争力強化支援法を策定するにあたって作成した資料にはコメ卸業界について(1)現在、全国で260以上のコメ卸業者(年間玄米取扱4000t以上の販売業者)が存在、(2)第一位の業者であっても年間取扱数量50万t以下(全国シェア8%)、上位10社の全国シェアでも合計は35%と、上位の会社に全体に占める販売シェアは小さい、(3)一方、年間取扱が1万t未満の卸業者の数の割合は約50%に上る。これは、コメの生産は各都道府県において広く行われており、これを前提として県内流通を主とする卸業者が存在してきたこと、食管法時の許可卸業者等が現在でもそのまま残存していること等によるものと考えられる、(4)コメ卸売業の経営については「不動産など副業を営んでおり、コメ卸売業が不振でも経営を継続できる」といった実態にある-と記している。
食管法を廃止するにあたり、農水省内部にコメをコントロールしやすくために『大卸構想』なるプランがあった。それがまだ生きているのなら昔あった「廃業支援金」を出したらどうかと聞いたところ「財務省の理解を得られない」という返事であった。
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