【城山のぶお・リメイクJA】第16回 コンプライアンスの確立2018年12月7日
日産自動車のカルロス・ゴーン会長が金融商品取引法違反で逮捕された。役員報酬の過少申告が、80億円に上るという。コストカッターといわれる剛腕を発揮し、日産自動車のV字回復を果たしたゴーン氏も経営者としての企業倫理違反、コンプライアンス違反を犯したとして会長の座を追われた。
バブル経済が破綻した後の1990年代後半から、企業の法令違反が多発したことから、コンプライアンスの言葉が盛んに遣われるようになった。コンプライアンスとは、一般的に法令順守といわれる。食料品業界においても雪印の国産牛肉偽装など食品偽装事件が多発した。
コンプライアンス違反は、築城3年落城1日と例えられ、それまで積み上げた信用が一挙に崩壊することから、企業経営者に恐れられ、JAなどでもこの問題についての研修会が頻繁に行われてきた。
今次の農協改革においても、農水省は社会的信用の低下に直結するコンプライアンス違反(独禁法違反、食品表示法違反等)のない農協になって欲しいと訴えている。
このうち、食品表示法違反については、JAが主に農畜産物を扱う主体であるところから注意喚起を促したもので、むしろ当然のことといえる。
問題は、独禁法違反問題である。ご存知の通り、独禁法違反には適用除外があり、その第22条 で、「この法律の規定は、次の各号に掲げる要件を備え、かつ、法律の規定に基づいて設立された組合(組合の連合会を含む。)の行為には、これを適用しない。
ただし、不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合は、この限りでない」と規定し、以下の要件を満たす組合について、適用除外としている。
1.小規模の事業者又は消費者の相互扶助を目的とすること。
2.任意に設立され、かつ、組合員が任意に加入し、又は脱退することができること。
3.各組合員が平等の議決権を有すること。
4.組合員に対して利益分配を行う場合には、その限度が法令又は定款に定められていること。
(ちなみに、わが国においては、法律上、協同組合とはどのような組織かを定めたものはないが、この規定がわが国における協同組合の定義であると考えて良い)。
言うまでもなく、JAも協同組合であり、他の協同組合と同様、この適用除外の対象となる。だが、「不公正な取引方法を用いる場合、又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合は、この限りでない」としており、無条件で適用除外になるわけではない。
ところで、今次の農協改革は、これまでの組織制度の抜本的な改革をめざすものだけに、この問題について注意が必要だ。
今次農協法改正では、第10条の2で「組合は事業を行うに当たっては、組合員に対しその利用を強制してはならない」とわざわざ規定した。もともと、組合員または会員が組合の事業を利用するかどうかは自由意思に委ねられるものだが、これまで解釈によってきた「事業利用を強制できない旨」を明示的に規定することにしたと説明されている。
しかし、実際の協同組合たるJAの運営においては、JAの事業利用について、自主的利用か強制かは紙一重の場面が多くあり(例えば生産資材の予約購入など)、一層の透明性がある取り組みが必要とされている。
本題のコンプライアンスに戻ると、これは一方で為政者の保身に使われるという側面を持っていることに留意が必要だ。JAでも、役員には任期中に問題を起こしてもらいたくないという意識が強く働く。
このような意識の下で、あまりにコンプライアンスを強調しすぎると役職員は委縮し前例踏襲型の守りの姿勢に徹することになる。コンプライアンスには、こうした負の面の払しょくが大切だ。
幕末の英雄、坂本龍馬がとった行動は、土佐藩のコンプライアンスからみれば、即刻打ち首になるほどの重罪だ。
この問題に関連し、最近気になるのが自主・自立のJA運動だ。言うまでもなく、自主・自立は協同組合原則の第4原則で謳われており、JA運動にとって最も重要な徳目だ。
JAとくに全中は、食料主権の確立、組合員の事業利用規制問題など重要な課題解決を政府与党に丸投げし、自ら課題解決の努力を怠っていないか。協同組合原則は法令ではないが、協同組合運動の規範としての自主・自立の協同組合原則の順守は、いま最も重要視されなければならない課題だ。
コンプライアンスを協同組合原則の順守に例えれば、それが一番に問われている。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
(394)Climate stripes(気候ストライプ)【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年7月26日
-
地域医療の実態 診療報酬に反映を JA全厚連が決議2024年7月26日
-
取扱高 過去最高の930億円 日本文化厚生連決算2024年7月26日
-
【人事異動】JA全厚生連 新理事長に歸山好尚氏(7月25日)2024年7月26日
-
【警報】果樹全般に果樹カメムシ類 県下全域で最大限の警戒を 鳥取県2024年7月26日
-
【注意報】イネに斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 山形県2024年7月26日
-
今が旬の「夏酒」日本の酒情報館で提案 日本酒造組合中央会2024年7月26日
-
ヤンマーマルシェ、タキイ種苗と食育企画「とりたて野菜の料理教室」開催 カゴメ2024年7月26日
-
「ごろん丸ごと国産みかんヨーグルト」再登場 全国のローソンで発売 北海道乳業2024年7月26日
-
物価高騰が実質消費を抑制 外食産業市場動向調査6月度2024年7月26日
-
農機具王「サマーセール」開催 8月1日から リンク2024年7月26日
-
能登工場で育った「奇跡のぶなしめじ」商品化 25日から数量限定で受注開始 ミスズライフ2024年7月26日
-
東京・茅場町の屋上菜園で「ハーブの日」を楽しむイベント開催 エスビー食品2024年7月26日
-
鳥インフル 米国オハイオ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2024年7月26日
-
大玉すいか販売大幅減 小玉「ピノ・ガール」は前年比146.8% 農業総研2024年7月26日
-
千葉県市原市 特産の梨 担い手確保・育成へ 全国から研修生募集2024年7月26日
-
水産・農畜産振興 自治体との共創事例紹介でウェビナー開催 フーディソン2024年7月26日
-
新規除草剤「ラピディシル」アルゼンチンで農薬登録を取得 住友化学2024年7月26日
-
自由研究に「物流・ITおしごと体験」8月は14回開催 パルシステム連合会2024年7月26日
-
高槻市特産「服部越瓜」の漬け込み作業が最盛期2024年7月26日