【城山のぶお・リメイクJA】第17回 JAの経営組織モデル~ドメイン強化こそが課題2018年12月14日
JAとは、正確には総合JA(信用事業の兼営)のことをいう。それでは、総合JAをどのように説明すればいいか。総合JAは日本農業の振興にとって誠に得難いビジネスモデルといって良いものだが、このモデルを合理的に説明したものが見当たらない。
そこで、ビジネスモデルとしての総合JAについて考えてみたい。このモデルを考えるにあたって、アメリカの経営学者J・D・トンプソン(1920~1973年)が提唱したトンプソンモデルを引き合いにして、ビジネスモデルとしての総合JAを説明する。
このモデルによれば、組織は常に環境の不確実性に直面するが、それに対して確実性を要求する。これを具体的に説明すれば、組織の活動はインプット活動→テクノロジー→アウトプット活動という一連の活動として認識され、インプットとしての諸資源をアウトプット活動へと転換する組織の中核的なテクノロジー活動であるテクニカル・コア(組織の中核能力:筆者)から不確実性を可能な限り取り除くことによって組織の合理性が確保される。
そして、テクニカル・コアの不確実性を除去するために、環境との間に組織の境界を設定するがこれをドメイン(事業・活動領域)という。
JAは正確には、総合農業協同組合であるが、これをこのモデルに当てはめれば、テクニカル・コアは協同組合(活動)であり、ドメインは農業(振興)と総合(事業)であると説明できる。
つまり、JAは組織の中核能力を協同活動とし、その活動を守るために農業振興と総合事業という事業領域を有する組織と理解できる。
この組織モデルをもとに、今回の農協改革を考えると次のようなことが指摘できる。一つは、農協改革について、われわれが求められている課題認識である。
今回の農協改革は、イコールフッテイングの名のもとに協同組合否定の考え方が貫かれているが、これに対抗するには、このモデルの説明から、総合農協のテクニカル・コアたる協同活動を守るために、ドメインたる農業振興と総合事業についてその対抗・強化策を考えればならないと結論づけられる。
農協改革に関する学者研究者の意見は、農業協同組合は協同組合であるとか、この際、統一協同組合法を考えるべきであるとかの協同組合への回帰思考が強くみられるようだが、こうした思考は協同組合の正当性を主張するだけであたり前のことであり、当面する課題の解決にはつながらない。
今回の農協改革でわれわれに問われているのは、JA組織のドメインの強化たる抜本的な農業振興の方策であり、また同じくドメインの強化たる総合事業を強化していくためのビジネスモデルの構築と認識すべきである。同時に、今回の農協改革に対抗していくには、従来路線の協同活動の強化たる教育文化活動の強化だけでは限界があることを意味している。
また、このモデルは環境の劇的変化にはもろいという特徴を持っている。経営学における組織論には、環境に対してクローズドな理論とオープンな理論があり、前者の理論にはF・テイラー(1856~1915年)の科学的管理法、M・ウエーバー(1864~1920年)の官僚論などがあり、組織は環境変化に関わりなく一定の原理で存在していく。
また後者は、コンティンジエンシー理論(環境適応理論・Contingency theory)と呼ばれ、組織は環境に適応していくためその姿を変えて行く。前述のトンプソンモデルは、このうちの環境適応理論の先駆的かつ古典的研究成果とされている。
トンプソンモデルで説明したJA組織のドメインは農業振興と総合事業であるが、これはいずれも農協法で保証されており、その意味でJAは極めて強固な組織といえる。
だが半面で、それは法律やその運用が変わればJAはたちまち窮地に陥るということでもある。その意味で、JAには法律に依存するだけではない自立的で自主的なドメイン強化の方策の確立が求められている。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
商系に撤退の動き、集荷競争に変調 米産地JA担当者に聞く(中)【米価高騰 今こそ果たす農協の役割】2025年10月30日 -
再生産可能なコメ政策を 米産地JA担当者の声(下)【米価高騰 今こそ果たす農協の役割】2025年10月30日 -
生産者が将来見通せる政策を 鈴木農相を表敬訪問 山野JA全中会長ら2025年10月30日 -
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】新政権の農政~「朝令暮改」2025年10月30日 -
よく食べた栗の実【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第362回2025年10月30日 -
鳥インフルエンザウイルスの地理的拡散と進化 2024年シーズンの遺伝子を解析 農研機構2025年10月30日 -
第36回岐阜県農業フェスティバルに出店 ステージやイベントで県産農畜産物をPR JA全農岐阜2025年10月30日 -
全国の産地応援 伊藤園と共同開発「ニッポンエール 大分県産完熟かぼすSODA」発売 JA全農2025年10月30日 -
伊藤園と共同開発「ニッポンエール 長野県産りんご三兄弟」 発売 JA全農2025年10月30日 -
【肉とビールと箸休め ドイツ食農紀行】ドイツで食べ物は高いか?安いか?2025年10月30日 -
最新の無人・自動運転トラクターを実演 クボタアグリロボ実演会 in加美を開催 JAグループ宮城2025年10月30日 -
東北6県の魅力発信「全農東北プロジェクト」とコラボ企画実施 JAタウン2025年10月30日 -
「JAタウン公式アプリ」リリースで開発・導入を支援 メグリ2025年10月30日 -
GREEN×EXPO 2027公式ライセンス商品を相次ぎ発売 横浜と大阪で期間限定店開設 2027年国際園芸博覧会協会2025年10月30日 -
適用拡大情報 殺菌剤「ダイパワー水和剤」 日本曹達2025年10月30日 -
ローズポークを食べてプレゼントを当てよう 11月にキャンペーンを実施 茨城県銘柄豚振興会2025年10月30日 -
鳥インフル 英国からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年10月30日 -
国産の針葉樹100%使用 高耐久の木製杭「エコクレオ防腐杭」がウッドデザイン賞 コメリ2025年10月30日 -
近いがうまい埼玉産「埼玉県地産地消月間」11月に県産農産物を集中PR2025年10月30日 -
「長崎みかん」初売りイベント 大田市場で開催 JA全農ながさき2025年10月30日


































