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コラム:TPPから見える風景

【近藤康男「TPPに反対する人々の運動」世話人】

2019.01.07 
【近藤康男・TPPから見える風景】日EU・EPAの政府調達章と地域・公共一覧へ

 政府調達の分野は、基本的に政府や関係機関による物品やサ-ビスの購入について、その手続きの透明性を高め、競争入札の導入を促進し、市場開放を進めることを規定している。

 

◆GPA、TPP以上の市場開放

 日EU・EPAの政府調達章の条文は、TPP以上に「WTOの政府調達協定」(以下GPAと記す)を取り込んでいる。しかし具体的な対象政府機関・関係機関や、調達の対象となる事業・サ-ビスの内容については、逆にGPAやTPP以上に拡大し、市場開放を日本に求める内容となっている。(但し、対象となる調達基準額が個別事業体の調達規模に該当するかどうかは任を超えるので言及しない)
 以下、上記に関連する内容を列挙すると共に、協定の条項を挙げておく。

 (1)GPA,TPPでは、中核市、地方自治体傘下の独立行政法人・株式会社などの機関は対象機関とされていない。
 しかし、日EU・EPAでは政府調達の規律の対象となる。特に中核市への拡大、地方自治体の独立行政法人である公立大学・公立病院などが新たに対象とされる点は問題だ。
 ※日EU・EPA付属書10政府調達1項、1項(b)及び(b)の注釈、2項
 ※但し、政府調達章第5条・参加のための条件において「民間資金等の活用による公共施設等の整備促進に」の適用を受ける調達については(この5条の1項を)適用しない、としているが、改正水道法・改正PFI法との具体的関連は今後の課題としたい。

 (2)GPAでは都道府県・政令指定都市、及び独立行政法人・株式会社などその他の機関に対してはGPA付属書Ⅰの付表5のサ-ビスの調達については適用されない(TPPでは限定的に適用)。
 しかし日EU・EPAでは一部の例外を除き物品・サ-ビスの調達がGPAで除外された全ての機関に適用される。更にGPA以上に調達対象のサ-ビスの範囲が追加されている。
 ※日EU・EPA付属書10政府調達・第B節日本国・1項及び5項

 (3)TPP,GPAでは発電・送電・配電事業、運送における運転上の安全に関連する調達は除外されているが、日EU・EPAでは市場開放の対象とされている
 ※日EU・EPA付属書10政府調達1項・(c)、付属書10政府調達4項
 GPA全体へのリンク⇒https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/wto/chotatu.html
 日EU・EPA条文へのリンク⇒https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ie/page4_004215.html
 EUのファクトシ-トを読むと、地方自治体や関係機関による物品・サ-ビスの調達(購入)の重要性・市場性・市場規模を定量的にとらえ、ターゲットを定めて強い拘りを持って交渉に臨んだことが伺える。そしてその成果を誇示している。EUの主張する市場開放が進んだことについて意見交換の場で質したが、明確な答えは無く、EUと比べ日本側の問題意識の軽さを感じさせられた。
 EUファクトシ-ト(英文)へのリンク⇒http://trade.ec.europa.eu/doclib/html/155719.htm

 

◆政府調達と地域・公共について

 地方・地域の発展を目指す観点からは、雇用の創出と、経済の域内循環が益々必要となっている。その意味では、単なる公開競争入札でなく、積極的に地域に雇用を創出し、地域の事業体の参画を促し、経済の地域循環を作り出す内容が、利権としてではなく、地域に責任を持つという立場で、基準・条件として正当に織り込まれて然るべきと思う。
 公共調達は国民・住民の負担や税金を使って行われている。日EU・EPAの公共調達分野の内容は、TPP以上に、我々の税金や住民の負担を地域外に流出させる道を広げ、舗装するようなものではないだろうか。
 一方、日EU・EPAでも"環境や公共の利益への配慮"がうたわれ、GPAでも"中小企業の取り扱い"や"持続可能な調達の取り扱い"が載っているが、その内容は限定的で不明確だ。

 

◆協定では地域・公共はどう取り扱われているか

 日EU・EPA8条・技術仕様で、「(環境について定める場合は)契約対象の物品・サービスの特性を定めるために適当で」、かつ「客観的に検証可能で内外無差別に基づくもの」と限定的だ。また、10条・環境上の条件では「定めることが出来る。但し、10章・政府調達章に定める規則と両立......する場合に限る」と、そっけない。
 公共の利益との関連も、12条・国内の審査のための手続・2項では、GPAの18条・国内の審査の手続き7項(a)との関連で「暫定的措置により......公共の利益等関係者の利益に及ぼす著しい悪影響を考慮することが出来ることについて、定めることが出来る」とうたわれているが、明確ではない。
 GPAの22条・最終規定でも"中小企業の取り扱い"や、"持続可能な調達の取り扱い"、に言及しているが、その目的は前7項の"協定適用範囲の拡大を達成するため"とされている。
 日EU・EPAの16章貿易及び持続可能な開発では、環境・労働・雇用・持続可能な開発など広範に触れているが、一般的な感を免れられない。
 その上で、政府との意見交換の場で「自治体の公契約条例などで地域・公共に関する実
効的な内容を盛り込めるか」質問をしたところ、「中核市は条約の規制を受けない(?)」と理解されるような回答がされた。
 "中核市の条例には国際条約は及ばない"と理解してよいのだろうか?あるいは10章付属書10政府調達・第2項中核都市による調達(f)「中核都市が現地の中小企業による調達手続きへの参加を奨励するための政策上の計画を策定することを妨げるものではない」のことだろうか?
 "内外の企業の扱いは無差別"との原則は客観的な基準の設定によりある程度超えられるとしても、上記の規定が単に"調達手続き"を支援することなのか、それとも"調達参加を奨励するための政策の策定"と読めるのか気になるところだ。
 しかし仮に後者としても、県や政令指定都市にこのことが適用されないのなら、公共・地域振興という点では問題とせざるを得ない。

 

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