【城山のぶお・リメイクJA】第21回 JAの独善性・閉鎖性・依存性2019年1月18日
JAが持つ特性を、一般的に、1)独善性、2)閉鎖性・排他性、3)依存性と断ずるのは言い過ぎだろうか。この特性は日本の組織に共通するもののようにも思えるが、JAにはとくにその傾向が顕著である。
この言葉からはいい印象を受けないが、農協改革への対応姿勢をみると、これがJAの持つ組織としての顕著な特徴のように思える。
まず独善性についてであるが、今次農協改革の緒戦において、JAは1)自ら掲げる農業・農協政策、2)戦い方の両面において完全敗北を喫した。農業面についてはTPP・欧州とのEPA交渉などにおける一方的な農産物の市場開放の容認。農協については、中央会制度の廃止、JAの地域組合路線の完全否定などである。
だがこの戦いを指揮したJA全中は、会長・専務が辞任したにもかかわらず、その折角の機会を活かすことなく、敗北の理由等戦いの総括をしてきていない。この結果、われわれが掲げた従来路線には何も誤りはなく、戦い方も正しかったということになっている。
悪いのは、アベノミクスであり、われわれは何も悪いことをしていないというわけだ。組織でも人間でもその行為に完璧なものはなく、失敗における反省の中からこそ強靭な体質・対策が育まれるが、全中はそうした姿勢をとってはいない。
こうした状況は、JAが持つ独善性という以外、表現のしようがない。このことからくる弊害の最たるものは、農協改革の現実的な争点が明らかにされず、有効な対策が打てないということだ。
現に、2014(平成26)年11月にまとめた自己改革案以降にJA全中がオリジナルなものとして掲げている対策は、驚くべきことに組合員アンケート調査の実施と組合員との話し合いのみである。
11月の自己改革案はその後の政府・与党との折衝、国会審議等を経て否定されているにもかかわらず、全中はいまだその路線の上で運動を進めている。
次にJAが持つ閉鎖性・排他性という点は、JA運動の進め方に表れている。今回の農協改革は、論点を明らかにして総合JAが農業振興に果たしている役割を広く国民に知ってもらうことだったのだが、とくに農協改革の戦いの緒戦において、そうした運動が進められることはなく、専ら自民党のインナー政治に頼ってきた。
こうしたJAが持つ閉鎖的・排他的な体質からくる弊害についても、反省されていない。例えば、肝心な准組合員対策についても従来路線の踏襲で、ほぼ自民党に丸投げで、ひたすら既得権益を守る対応しか行われていない。
それに全中内には、従来から自らが組織の利益体現団体であるということを自覚しているからか、上げ足をとられるからあまり騒ぐなという閉鎖的・排他的意識が強くある。
そして、このような独善性・閉鎖性・排他性の次に来るのは、度し難い依存性である。われわれの主張は正しい、物事は内輪で穏便に解決していこうとした結果、うまくいかなかった場合に最後に出てくるのは政府に助けてもらいたいという依存性であり、政治への依存である。
そして、それでもうまくいかなかった場合の究極の姿は、諦観(あきらめ)である。この農協改革を通じて、組合長から耳にした「中央会監査の廃止など政府がそこまでやるわけがない」「そんなに深刻に考えることはない、政府がJAを必要としないというのなら解散すればいい」という言葉が印象に残る。
こうした1)独善性、2)閉鎖性・排他性、3)依存性の意識はどこからくるのか。
それは、JAが第二次大戦後の農地法(自作農主義)と農協法(総合事業・准組合員制度)でその存在を保証されてきたからといって良いだろう。
JAはこの2つの法律に依存していれば存在が保証されてきたのであり、そのことによって際立った、1)独善性、2)閉鎖性・排他性、3)依存性というJAの組織特性ができあがってきたのだと思われる。
また、もともと農業・農家には、みずからの存在は絶対的なものであるという強烈な自負心があり、農業という印籠の前には、何人もひれ伏すしかないという風潮があり、これもそれを助長するものになっている。
だが、農地法と農協法はともに今ではほころびが目立ち、自作農主義は過去のものとなり、農協法も必ずしもJAを守る存在ではなくなった。また、農業は担い手不足・耕作放棄地の拡大などで後がなくなってきている。
したがって、いまJAは自らが持つ、1)独善性、2)閉鎖性・排他性、3)依存性という組織特性から早く脱却し、消費者との連携など広く国民に開かれた自主・自立のJA運動を展開すべき時に来ている。
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