【城山のぶお・リメイクJA】第22回 事業の意味2019年1月25日
JA運営を説明する場合に使われるのが、組織・事業・経営という三つの概念である。筆者の理解によれば、協同組合たるJAは組合員の組織活動をもとに運営され、組合員が恒常的に必要とされるものがJAの事業となり、組合員の組織活動と事業活動を統合するのが経営ということになる。
このうち、経営という言葉はなぜかJAでは毛嫌いされる。経営はJAの合理的運営を追求するもので、協同活動と相反するものだという意識があるのだろうか。
こうした概念が蔓延するのは、協同組合研究者にも多くの責任があるように思えるが、JA関係者は早くこのことから卒業し、協同組合らしい経営とは何かを真剣に考えなければならない。
いずれにしても、組合員にとって恒常的に必要とされるものは事業化されるのであり、JAの事業も組合員にとって必要だから営農・経済、信用・共済などの事業として行われる。
ところで、農業協同組合と事業の関係について考えて見ると、偏狭な職能組合の立場をとる者の多くは、目的が農業所得の向上なのだから組合は営農・経済事業に特化し、信用・共済事業は分離せよと主張する。
今回の農協改革でも、政府・官邸のねらいの主眼はJAからの信用・共済事業の分離である。しかし、組合員の立場からいうと、組合員は営農と生活の両面をもっており、とくに農村部においてはJAの両面からのサポートが欠かせない。
このため、JAグループでは、すでに1970年の全国農協大会議案で「生活基本構想」を採択し、組合員にとって営農と生活は車の両輪として位置付けている。
JAがいわゆる「二軸論」を排して農業協同組合として運動を続ける場合にも、JAが営農と生活の両面から組合員をサポートしていくことには変わりがない。正組合員であれ准組合員であれ、農業振興に貢献する者には、JAは信用・共済などの事業を通じてこれを実現して行く必要がある。
またこの点が、多くの場合事業単営である信用組合や生協(共済事業は兼営)と違う点でもある。
一方、JAが事業を行う場合、JAは常に組合員の立場から事業を検証しておくことが重要である。JAの事業のうち、営農・経済事業については、組合員にとって農業所得の向上にとって必要なものだということが明白である。
だが、信用・共済などの事業は、組合員にとってどのような事業なのかは、必ずしも明らかにされていない。JAバンク構想の生みの親である、農水省の奥原正明事務次官(当時)の認識は、JA信用事業は農業振興のついでにやらせてやっている事業ということであったが、多かれ少なかれ、農水省は信用・共済事業をJAの本来事業とは考えていない。
この指導姿勢はJAの部門別損益計算書の書式でも明確で、JAの事業部門は、(信用)・(共済)・(農業関連事業)・(生活その他事業)・(営農指導事業)等となっており、タテ割り官僚行政の姿勢が貫徹している。
こうした農水省の姿勢はある意味当然としても、組合員の営農・生活のサポートを旨とするJAにおいて、往々にして組合員と事業との関係が明らかにされないのは問題である。
この点、JAの事業について、営農指導・経済事業が組合員の営農活動の一環として行われることは当然としても、とくに信用と共済事業について、組合員の生活活動の一環として行われるという認識を持つことが極めて重要である。
だが、JAの機構図を見ると、組合員の立場から事業統括本部として営農経済事業本部・生活事業本部という位置づけは見当たらないのが現実である。
組合員主体の事業運営という認識を持たなければ、規模拡大とともに信用・共済事業分離の素地が次第に拡大していくことになる。協同組合理念をいくら唱えても、現実に組合員主体の経営が行われなければ、協同組合は死滅していく。
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