【森島 賢・正義派の農政論】政府に危機感を抱かせよう2019年1月28日
国会が今日から静かに始まった。異常とも思えるほどの、高い内閣支持率を維持している中で、静かに始まった。与党や政府に緊張感はない。
報道各社の世論調査によって、安倍内閣に対する支持率をみると、その多くは40%を超えている。また政党支持率をみると、下の表で示したように、与党である自民の35%に対して、野党の立憲は9%、共産は3%で、これに国民、社民、自由を加えても14%しかない。つまり、野党の支持率は、与党の自民の支持率の3分の1程度しかない。内閣は安泰のように見える。
これらの数字が、そのまま世論を忠実に表しているとは思えない。しかし、偏りがあるからといって、無視できるものではない。その奥を見据えねばならない。その奥に何があるか。
国会が始まったが、国会議員などの政治家は、たえず世論の深奥の動向に注目し、それに敏感でなければならない。

国会が始まったが、野党の役割は、真理を追及し、真実を暴露して、政府を攻撃することだけではない。また正義を主張して、政府を窮地に追い込むことだけが、その役割でもない。
真理の追究は、大学に任せればいい。真実や正義の追究は、裁判所に任せればいい。国会には、その役割は期待されていない。その能力はないし、権限もない。
◇
国会での、ことに野党の役割は、真実や正義を追及することで、政府を攻撃し、政府を窮地に立たせることだけではない。そうして鬱憤を晴らし、留飲を下げることではない。そうすることで野党支持の人たちを喜ばせることでもない。そうではなくて、多くの国民の支持のもとで、政府を崩壊させて、自分たちの政府を作り、自分たちの正義を実現することである。
そうなれば、政府は危機感を抱くようになるだろう。
◇
ここでいう正義とは、市場原理主義のもとで格差に喘ぐ弱者のための正義か、それとも、市場原理主義を信奉して弱者への搾取を強める強者のための正義か。それを鮮明に示さねばならない。
そして、その正義を実現するためには、つぎの選挙で自分たちが国会で多数を占め、内閣を作るしかない。国会論争での野党の目的は、この点にある。
この目的を実現するには、多くの人たちに、選挙で野党を支持してもらい、彼らの拍手喝采を政治の力に変えねばならない。当面する最大の政治課題は、半年後に迫っている参院選での勝利であり、そのための野党統一候補の擁立である。
ここで強調したい。国会での野党の政府追及の目的は、つぎの選挙で多数の強固な支持を得て、政権を奪取することである。
◇
しかし、残念なことに、野党にこうした考えが薄い。国会で政府を追及することで、マスコミに露出し、最大派である無党派層の注目を集め、野党に有利な風を吹かせようとしている。風だけを頼りにしている。そうして、無党派層を野党の強固な支持層にしようとしない。そうして、半年後の参院選で発揮する政治力に変えることを真剣に考えない。ここに問題がある。
ある野党の党首は、参院選まであと半年もの長い期間があるから、野党の統一候補を決めてしまい、選挙体制を作るのは、まだ早い、と公言している。
また最近では、どの党が野党第1党になるか、などと内輪の争いに耽っている。ここには緊張感が全くない。
◇
このような弛緩した野党を、多くの人たちは見透かしている。政権奪取はむりだ、と考えている。だから野党への支持が広がらない。それが、報道各社の世論調査での野党への支持率の低迷に反映している。野党への期待が大きい分だけ落胆が大きいのである。
野党は、この人たちの期待に応えねばならない。そうして、政府に政権維持への危機感を抱かさねばならない。
(2019.01.28)
(前回 官邸農政から県農政審農政へ)
(前々回 米中の体制間抗争を煽るな)
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