【森島 賢・正義派の農政論】官邸農政から県農政審農政へ2019年1月21日
小正月も過ぎて、来週から国会が始まるようだ。こんどの会期中には、統一地方選挙が行われるし、会期が終われば、いよいよ参院選だ。衆参同日選挙になるかも知れないという。そろそろ安倍一強政治も、終わりにしたいものだ。
安倍一強政治の農政版が官邸農政だ。首相官邸が全てを決める農政だ。地方の現場の声や、与野党の政治家の意見を無視して、財界人の一部の、市場原理主義者の意見だけを採用する農政だ。
こうした農政から、一刻も早く決別しなければならぬ。そのための一策は、各県の農政審議会の活性化ではないか。
以前は各県に農政審があって、そこで侃々諤々の議論が行われていた。政府が決めた農政を、現場の実情に合った政策にして実施するためである。そして、修正を政府に求めるためである。
この審議会には、農協の役職員はもちろん、県や村の議員が多く加わっていた。県の労働界や経済界の人たちも闊達な発言をしていた。そして県農政課の役職員や農水省の出先機関の役職員も参席していて、活発な議論を行っていた。ときには、会議が終わったあと、徹夜で白熱した議論が続くこともあったようだ。このようにして、活気に満ちた農政が展開されていた。
こうした当時と比べて、今はどうか。
今は、首相官邸が農政の全てを決めている。官邸では、首相の提案を批判する政治家は遠ざけられる。また、批判的な官僚は左遷される。そして、忖度の上手な政治家や官僚だけが横行する。だから活発な議論はない。
これは民主的な農政ではない。専制的な農政である。一刻も早く止めねばならない。止めることは出来る。
◇
それには、なぜ専制的な農政が横行するのか、を考えねばならない。与党が国会で圧倒的な多数を握っているからだという。それには一理がある。しかし皮相な一理でしかない。深層をみよう。
圧倒的に多数の議員を持っている与党に対して、国民は、政治の一切を白紙委任しているわけではない。国民は、たえず与党議員を監視していなければならない。そうして、政治行動の如何によっては、次の選挙で落選するかもしれない、という緊張感を議員たちに持ってもらっていなければならない。
しかし、それがない。だから、内閣支持率は40%を超えて安定している。専制的な政治が横行する原因は、ここにある。
◇
農政もそうだ。国民は、農政の一切を官邸に委任しているわけではない。国民は日常的に、たえず官邸農政を監視していなければならない。だが、いまはその機会がない。
ここで提案したいのは、各県にある農政審議会の活性化である。そこでの、農村の現場に根差した農政の再構築を目指した活発な議論である。そうすれば、各政党に所属する議員が互いに切磋琢磨しあうことを期待できる。
それは、やがて国政選挙を経て、各政党の農政の、そして政府の農政の骨格を作り上げることになるだろう。
そして、それは官邸にいる市場原理主義者たちが作った、財界のための、そして目上の同盟国であるアメリカのための官邸農政とは、全く違ったものになるだろう。市場原理主義農政とは対極にある、国民のための協同組合主義農政になるだろう。
◇
その上で、いま必要なことは、専制的な一強政治を打破したいと考えている多くの国民、ことに農業者や労働者の要求を組織化して、政治の力にすることだろう。
それは、政党の使命である。
参院選か、もしかすると衆参同日選挙を半年後にひかえて、野党は、統一候補の擁立問題で、互いにいがみ合っているときではない。半年も後のことだ、ボス交渉を始めるのはまだ早い、などと幹部は呑気なことを言ってはいられない。
正月のお屠蘇気分の勢いで、しかし、お屠蘇気分から抜け出して、一刻も早く、現場の農業者と労働者が熱烈に支持する統一候補を決め、強固な選挙体制を作らねばならない。
それに成功すれば、市場原理主義農政から協同組合主義農政へ、力強く転換できるだろう。
(2019.01.21)
(前回 米中の体制間抗争を煽るな)
(前々回 弱者の戦勝記念日)
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