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コラム:正義派の農政論

【森島 賢】

2018.12.17 
【森島 賢・正義派の農政論】弱者の戦勝記念日一覧へ

 今年も年末が近づいた。その中で、弱者たちの快挙があった。弱者たちが、安倍晋三首相に改憲を断念させたのである。
 与党の自民党にとって、前国会の最大の課題は、改憲案を国会に提示して議論を始めることだった。自衛隊を憲法に明記する案である。しかし、国会に提示することさえできず、会期切れになって断念した。
 これは、弱者たちの粘り強い反対運動の成果である。これで、安倍晋三首相の念願だった改憲は不可能になった。もう、その機会は来ないだろう。弱者たちの大勝利といっていい。
 このさい、弱者たちが集まり、平和憲法を守り切ったことを、おたがいに讃え合うために、戦勝記念日を決めたらどうだろうか。断念が決まったのは今月の初旬だったから、それに合わせ、毎月の初旬に戦勝を記念して街頭に集まり、喜びの祝杯を上げたらどうか。

 首相が改憲を断念せざるを得なくなった原因は、自民党の下村博文改憲本部長の「野党は職場放棄だ」という傲慢な発言だという人がいる。しかし、そうではない。下村氏は、強いライオンである護憲派のシッポを不用意に踏んでしまった、というだけだ。護憲派のほうが、改憲派よりもはるかに強いのだ。そのことを隠蔽するために、下村氏を犠牲にしたのである。
 これで、安倍晋三首相の政治生命は断たれたといっていい。
 首相が政治家を目指したときの初心は、いまの平和憲法を捨てるための改憲だったようだ。それを断念したのだから、もう政治家としての命運は尽きた。あとは名誉ある引退しかない。そこまで追い詰められたのである。だから、弱者にとって大勝利である。
 しかしそれでも首相は、改憲して2020年に施行したいという気持ちは変わらない、と未練がましい発言をしていた。それを聞いた弱者たちは、太っ腹に聞き流していた。

 

 

 さて、改憲を断念した理由を、やや詳しく考えてみよう。
 与党にとって、前国会の第2番目の重要な課題は、入管法、つまり、低賃金の外国人労働者を受け入れるための入管法の改悪だったようだ。それを強行採決で成立させた。しかし、それよりも重要と考えていた第1番目の課題の改憲の発議は断念した。
 改憲の発議も、その気になれば出来たはずだ。いま、国会は与党が3分の2の議席を持っているのだから。しかし断念した。何故か。
 それは、国会外で弱者たちが強力な反対運動をしているからである。

 

 

 ここから見えることは、日本の代議制民主主義は、まだ腐りきってはいない、ということである。
 代議制民主主義は、代議士である議員に政治の全てを白紙委任することではない。議員は日常的にたえず国民の政治意志を確かめ、それを政治に忠実に反映しなければならない。そうしなければ、つぎの選挙で落選する。そうしてこそ、代議制は生きた民主主義になる。
 そしてこんど、国会議員たちは、首相に改憲を断念させたことで、国民の政治意志を忠実に国会に反映させた。
 それと同時に、こんど示したことは、民主主義を守るために、国民が政治意志をたえず表明することの重要さである。そうして、弱者たちは、平和憲法を擁護する運動で、大きな一里塚を築いた。

 

 

 しかし、まだまだ安心はできない。日米軍事同盟を強化する企みが続いている。平和憲法の危機が、すっかり過ぎ去ったわけではない。眦を決して、さらに運動を強化しなければならない。
 しかし、改憲を阻止したいま、一里塚の上に平和憲法の旗を高く掲げて、たがいに祝い合うこともいいのではないだろうか。そうして英気を養い、気分を一新して、明日からまた、来年夏の参議院選挙へ向けて、新しい強力な護憲運動を展開する。

 

 

 もしも、改憲して平和憲法を捨てれば、戦争を覚悟することになる。戦争で犠牲になるのは、いつでも、どこでも、弱者である。農業者や労働者である。
 ここで改めて言っておこう。農業は平和産業である。戦争は農業者に犠牲を強いるだけでなく、農業・農村の発展を妨げる。だから戦争を好まない。戦争を好むのは、軍産複合体といわれる強者である。
 古い話になるが、1904、5年の日露戦争のとき、戦争で大儲けをした強者の或る社長が、金持ちぶって健康な歯に金を被せ、金歯を見せびらかして、弱者の嘲笑を浴びた。そういう逸話がある。
 こんな醜い話は、もう聞きたくない。
(2018.12.17)

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