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【鈴木宣弘・食料・農業問題 本質と裏側】幻想のオランダ農業礼賛2019年6月19日

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【鈴木宣弘・東京大学教授】

 「日本農業の手本はオランダ農業だ。オランダ農業に学べ」との「オランダ農業礼賛論」が近年、政治・行政・研究の間で、一世を風靡した感がある。その特徴は、資本集約的な高収益部門(とりわけ施設園芸)に特化して、輸出を伸ばし、土地利用型の穀物は輸入するという方式である。農業生産による付加価値額のうち、施設園芸だけで4割、園芸全体だと5割を超え、酪農が2割で続く。耕種作物は15%にすぎない。こうした方式が可能な背景には、オランダがEU共通市場(5億人)、中でも主要国の英・独・仏に近い欧州北西部の中央に位置し、ほぼ無関税でEU共通市場へ輸出でき、輸入もできる条件がある。

 

◆オランダ方式はEUの中でも特殊で「いびつ」

 このオランダ方式が日本のモデルになりうるか。一つの視点は、オランダ方式はEUの中でも特殊だという事実である。「EUの中で不足分を調達できるから、このような形態が可能だ」というが、それなら、他にも、もっと穀物自給率の低い国があってもおかしくないが、実は、EU各国は、EUがあっても不安なので、1国での食料自給に力を入れている。むしろ、オランダが「いびつ」なのである。
 つまり、園芸作物などに特化して儲ければよいというオランダ型農業の最大の欠点は、園芸作物だけでは、不測の事態に国民にカロリーを供給できない点である。ナショナル・セキュリティの基本は穀物なので、穀物自給率を保つことが重要なのである。
 日本でも、高収益作物に特化した農業を目指すべきとして、「サクランボは貿易自由化しても生き残ったではないか」という議論を持ち出す人もいるが、サクランボという嗜好的性格が強くて差別化しやすく、土地制約も少ない品目と、「コモディティ」と言われる基礎食料とは同列に論じられない。早くに関税撤廃したトウモロコシ、大豆の自給率が0%、7%なのを直視する必要がある。サンランボも大事だが、我々は「サクランボだけを食べて生きていけない」のであり、基礎食料の確保が不可欠なのである。

 

◆「補助金に依存しない園芸」は日本も同じ

 また、オランダの園芸は補助金に依存していないことが強調されることがあるが、日本との比較で相対的にみてみよう。

 

20190619 コラム 本質と裏側 図1 

 表のように、オランダの農業純所得に占める補助金の割合は 32%で、日本(30%)とほぼ同水準、園芸(6%)、果樹(7%)もほぼ同水準である。一方、酪農(57%)は日本の2倍の補助金率、その他の畜産では、草食家畜(160%)など、日本よりはるかに高い。耕種は日本のほうが高い。 総じて、EU内では、2013年の英(91%)、独(70%)、仏(95%)よりははるかに低いのは確かである。つまり、「日本と比較して低い」のではなく、「日本と同じくらい低い」というのが正しい。

 

◆オランダの農家の39%は貧困ライン以下

 そして、オランダ政府関係者の話として注目されるのは、「農業ビジネスは成長しているが、農家の豊かさには必ずしも結び付いていない。オランダの農家の39%は貧困ライン以下の生活」(石井勇人・共同通信編集委員の聴取による)という現実である。
「輸出依存型の農業は世界経済が好調なときは脚光を浴びるが、他国への依存が大きくなり過ぎると経営は不安定になる」との見方も示されている。

 

◆経済省に吸収した農業省を復活

 さらに、石井氏は次の重大な事実を指摘している。
 象徴的なのは、一時は経済省に吸収して廃止した農業所管官庁を「農業・自然・食品品質省」として復活し、トップを副首相が兼務した事実である。
 輸出産業化はオランダ農業の一面にすぎず、家族経営の農家や環境保全にも目配りしていると政府関係者も強調している。まさに、元祖・輸出型農業のオランダで政策の軌道修正が始まっていることは間違いない。「オランダ農業礼賛」は幻想に近いのではなかろうか。逆行する日本の将来が危惧される。

 

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