【澁澤栄・精密農業とは】ICTで農作業が変わる データ駆動型農業-データは誰のものか?2019年6月25日
図1のように、農地から産み出されるデータや情報は、情報付きほ場として整理される。その情報を農産物に付加して出荷すれば、情報付き農産物になる。これらのデータや情報は、ほ場や農産物の実世界とは別にデータベースとしてサイバー空間に保管される。
サイバー空間とは計算機(コンピュータ)の中に創られる虚構の世界で、実世界に対して用いる用語である。実世界では試すことのできない挑戦やリスク探索などがより自由に展開でき、農業の豊かな未来像を提供してくれる。
一方で、大容量コンピュータなどの共有作業領域に格納されたデータが、所有者である農家の承諾なしに運用されたり、個人情報が流用されたりして問題になっている(図2)。看過できないのは、先進農家ほどサイバーアタックの標的になる確率が高いことである。ICT導入の善悪両面を見る必要がある。
◆ICT導入で農作業が変わる
情報通信技術(ICT)が農業現場で応用されるようになると、農作業の役割や機能が一変する。農業機械に各種センサーや通信機器が装備されると、農作業と同時に農作業データが大量に生産され、生産現場でデジタル情報が利用できるようになった(図3)。
農作業データには、作業判断のための天候や市況あるいは作物や農地の状況のほか、作業のプロセスや効果、使った機械や施設等の稼働状況などが含まれる。
農業経営の持続性のうちで最も注目すべき課題が事故や法令違反などのリスク管理だ。克明な農作業データを活用すると、農作業の中で収益管理とリスク管理が同時にできる可能性が高い。
同じ農作業でありながら、収益管理に着目すると精密農業。リスク管理に着目するとGAP(Good Agricultural Practices/適切な農作業)になる。小売業が販売責任を果たし、生産者が製造責任を果たせば、生産と消費からの挟み撃ちで食品事故や農作業事故をゼロにできるかもしれない。
◆スマート農業の将来像
農林水産省では2013年11月、複数省庁(農林水産省、経済産業省、総務省、内閣府、内閣官房など)や複数業種(農機メーカー、自動車、産業ロボット、IT企業、金融保険など)、先進農業者や学識経験者からなる大型のスマート農業研究会を立ち上げた。
短期間の集中審議により、2014年3月にはスマート農業の将来像をとりまとめた(図4)。
「後継や新規参入の次世代担い手農家のために」という重要な言葉が明記されてないが、農林水産省の説明では「ロボット技術やICTを活用して、超省力・高品質生産を実現する新たな農業」として「スマート農業」を説明している。
GPS自動走行システム等の導入による農業機械の自動走行、重労働を軽労化するアシストスーツ、除草などの作業を軽労化するロボット等というテクノロジー開発を明記したため、重要な営農マネジメントの革新が背景に消えそうである。
スマート農業もテクノロジーではない。マネジメントである。マネジメントの変更や改善は、組織や仕組みの変更、資金の流れの変更、在庫管理の改善、評価方法の改善、監督やプレーヤーの変更、そして農地や農作業スタイルの変更を伴うものだ。2000年代から続く「精密農業」の行政施策の後継として、新しく「スマート農業」がスタートしたのである。
1990年代に始まった精密農業の世界展開は「第4の農業革命」を推進し続けているのだ。
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