【JCA週報】「小さな協同」の主体と協同の特徴2019年9月17日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 中家徹JA全中会長)が、各都道府県での協同組合間連携の事例や連携・SDGsの勉強会などの内容、そして協同組合研究誌「にじ」に掲載された内容紹介や抜粋などの情報を、協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、「『小さな協同』の主体と協同の特徴」です。
協同組合研究誌「にじ」2019年夏号に寄稿いただいた、広島大学大学院生物圏科学研究科 教授の田中 秀樹氏の論文冒頭部分を紹介します。
協同組合研究誌「にじ」2019年夏号「特集:協同組合としてのアイデンティティ」
「小さな協同」の主体と協同の特徴- 協同組合と地域コミュニティの関連
田中 秀樹 広島大学大学院生物圏科学研究科 教授
1.はじめに
「小さな協同」論の提起は、1999年に広島で開催された「地域のくらしから協同を考える」シンポジウムにさかのぼる。当時のちばコープの「おたがいさま」の実践をふまえ、生協や農協という「大きな協同組合の中に小さな協同組合」をつくることによる「大きな協同組合の活性化」戦略が「小さな協同」論の提起内容であった。背景的には、生協や農協が広域化大規模化し、効率的事業システム化(生協の場合、組合員の顧客化を伴う販売システム化)が進む中での協同組合の危機、すなわち地域からの乖離と「会社」化傾向の強まりがあり、他方で、「新しい協同組合」の発生が見られるが、その両者がかみ合わず、すれ違っているのではないかという現状認識があった。「新しい協同組合」とは、ポスト工業化段階における、販売・購買協同と異なる新たな協同・協同組合のことであり、概して、販売・購買協同に比べ「小さい」ことに特徴があった。
「大きな協同組合」、すなわち生協や農協における協同組合の危機とは、組合員同士の協同の実体がそこから失われつつあることと関わっている。生協における班の衰退から個配への移行のように、個別化した組合員に個々に関わる生協事業システムからは、地域や組合員のくらしの実態が見えなくなってきていたし、組合員の協同の実体をつくるのも困難になってきている。「小さな協同」の包摂、もしくは関連構造を持たせることは、協同の実体を「大きな協同組合」に内部化させようという実践的提起であるが、また、販売・購買協同と、新たな福祉・生産協同との関連構造論という理論的提起でもある。そこには、協同の主体と協同の特徴、あるいは協同と共同体(地域コミュニティ)との関連に関わる深めるべき論点が含まれている。生協や農協においても、その生成期においては、協同の実体をつくり出し、何らかの共同体(地域コミュニティ)を内包していたのではないかと思われるが、そこでの協同の主体と特徴・性格を振り返りながら、新たな「小さな協同」との比較検討が求められる。協同組合の歴史性は、その協同を担った主体の歴史性であり、いかなる主体がどのような協同をつくり、地域社会再編と関わったかが協同組合の特徴と歴史性を規定する。
小論では、(1)販売・購買協同と異なる「小さな協同」の主体の歴史性と協同の特徴をまず確認し、次に、(2)それでは生協・農協においてはどのような協同の主体がどのような協同を生み出し、地域コミュニティ形成と関わったのかを再確認し、そして最後に、 (3)生協・農協と「小さな協同」との関連をふまえて、協同組合運動と新たな地域コミュニティ形成の展望について考察したい。
(以下 略)
協同組合研究誌「にじ」 2019夏号より
https://www.japan.coop/wp/publications/publication/niji
※ 論文そのものは、是非、「にじ」本冊でお読みください。
(ご購読のご案内)
日本協同組合連携機構(JCA) 基礎研究部まで電話・FAX・Eメールでお問い合わせください。
(TEL:03-6280-7252 FAX:03-3268-8761 E-Mail:kenkyu@japan.coop )
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
【欧米の農政転換と農民運動】環境重視と自由化の矛盾 イギリス農民の怒りの正体と運動の行方(2)駒澤大学名誉教授 溝手芳計氏2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内で多発のおそれ 熊本県2024年4月26日
-
【注意報】核果類にナシヒメシンクイ 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2024年4月26日
-
【注意報】ムギ類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 愛知県2024年4月26日
-
「沖縄県産パインアップルフェア」銀座の直営飲食店舗で開催 JA全農2024年4月26日
-
「みのりカフェ博多店」24日から「開業3周年記念フェア」開催 JA全農2024年4月26日
-
「菊池水田ごぼう」が収穫最盛期を迎える JA菊池2024年4月26日
-
「JAタウンのうた」MV公開 公式応援大使・根本凪が歌とダンスで産地を応援2024年4月26日
-
中堅職員が新事業を提案 全中教育部「ミライ共創プロジェクト」成果発表2024年4月26日
-
子実用トウモロコシ 生産引き上げ困難 坂本農相2024年4月26日
-
(381)20代6割、30代5割、40/50代4割【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年4月26日
-
【JA人事】JA北つくば(茨城県)新組合長に川津修氏(4月20日)2024年4月26日
-
野菜ソムリエが選んだ最高金賞「焼き芋」使用 イタリアンジェラートを期間限定で販売2024年4月26日
-
DJI新型農業用ドローンとアップグレード版「SmartFarmアプリ」世界で発売2024年4月26日
-
「もしもFES名古屋2024」名古屋・栄で開催 こくみん共済coop2024年4月26日
-
農水省『全国版畜産クラウド』とデータ連携 ファームノート2024年4月26日
-
土日が多い曜日まわり、歓送迎会需要増で売上堅調 外食産業市場動向調査3月度2024年4月26日
-
鳥インフル 英国からの生きた家きん、家きん肉等 一時輸入停止措置を解除 農水省2024年4月26日
-
淡路島産新たまねぎ使用「たまねぎバーガー」関西・四国で限定販売 モスバーガー2024年4月26日