【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】(149)ボストン再訪2019年9月27日
先週末から週明け(9月20~23日)にかけて米国ボストンを急ぎ訪問した。金曜日に日本を発ち、同日夜に到着した後、週末を現地で過ごし、月曜日のフライトで現地発、火曜日に帰国という慌ただしいものであった。昨日水曜日は朝イチから授業をこなし、午後は会議と打合せで丸1日が終了した。
今回の訪問は全くのプライベートである。筆者が初めてボストンを訪問したのは1988年の秋、古巣の仕事の一環でニューヨークに研修に出ていた時である。たまたま機会に恵まれた。その後、1992~94年にかけてハーバード大学で経営学修士号を取得するために学ぶことが出来た。家族(家内と渡米時1歳になったばかりの娘)と一緒に2年間の留学を経験できたことは、今でも古巣の上司や同僚をはじめ、支援して頂いた多くの人たちに深く感謝している。
在学中、とくに後半から心がけていたことは、いかに「感度」を鈍らせないかということだ。ここで言う「感度」とは、関係するビジネスだけでなく社会の動き全般に対する包括的なとらえ方に対する「感度」である。
当時、気晴らしに読んだ「ゴルゴ13」という劇画の中に、主人公が年に1度、全ての仕事を断り人里離れた秘密の隠れ家に1か月ほど籠り、自らの身体能力を鍛え、一定レベル以上に保ち続ける場面を描いた話があった。詳細は忘れたが、意外にこういうエピソードは覚えている。あくまでも劇画の中の一場面ではあるが、こうした姿勢を自分の生活に当てはめるとしたらどうなるだろうとマンガ世代の筆者は考えたことをよく覚えている。
1994年に帰国し、その後、日々の仕事が急速に忙しくなる中で、3歳の娘にある日「パパ、どうして毎日お酒飲んで帰ってくるばかりで勉強しないの?」と問われた。考えてみれば娘が物心ついた時、筆者は留学中であり、娘は毎日、勉強をしていた姿を見ていた訳だ。まさに「三つ子の魂百まで」である。
仕事は興味深くチャレンジングな日々が続いていたが、筆者自身はボストン滞在中の学びを通じ、次に何をすべきかが理解できていたにもかかわらず、時間が過ぎていくことが知らぬ間にストレスとして蓄積されていたようだ。当時の多くのMBA取得者は似たような状況に直面していたのかもしれない。そして多くが転職という選択を選ぶ。企業派遣の海外留学と、MBA取得後の転職は一種のブームのようになり、様々な議論が巻き起こった頃である。筆者自身は転職よりもすべきことをどう実現するかに悶々としていた。
帰国して約半年後の1994年の秋、筆者は法律、とくにビジネス法を一度、徹底的に学ぶため筑波大学の社会人大学院を受験し、翌年春から仕事を継続しつつ茗荷谷で夜間の大学院生となった。何人かの筑波の恩師からは何故、経営学を専攻しなかったかと問われたが、大学が自分の不足している知識や技術を学ぶところであるならば次は法律に関する知識を高めることこそが明確な目的であった。同時に、ボストンで2年間見聞きした世界の農業関連産業の最前線に関する知識を賞味期限切れになる前にどうアップデートし続けるか、これも大きな挑戦となった。
結果として、ビジネススクールを終えてから2011年までのほぼ毎年、1週間程度定期的にボストンを訪問し年々錆び付くアタマと感性を鍛えなおすことになる。東日本大震災以降の数年間は思うところがあり、米国ではなくアジアを訪問してきたが、ここ数年は再び2年に1回程度のペースでボストンに戻っている。この方法が最善かどうかはわからないが、日本人がほぼいない状況で鍛えられる機会にあえて飛び込み続けることは悪くない。
今回はMBA取得後25周年の同窓会を理由に再訪した訳だ。四半世紀ぶりに会うかつての同級生とその様々な人生、そして筆者のキャリアとモノの考え方・視点に大きな影響を与えてくれた恩師に再会し濃密な議論の時間を持てたことは最高の刺激となった。これでまた少しの間、前向きな意識と行動が保てるかもしれない。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
重要な記事
最新の記事
-
たまねぎべと病 近畿、中国、四国で多発のおそれ 令和6年度病害虫発生予報第1号 農水省2024年4月18日
-
春メロン4億円の販売を目指す JAくま2024年4月18日
-
安全性検査をクリアの農業機械 農用トラクターなど1機種25型式を公表 農研機構2024年4月18日
-
JAグループのガソリンスタンドに急速充電器「DMM EV CHARGE」導入2024年4月18日
-
【スマート農業の風】(3)データ駆動型農業へ転換しよう2024年4月18日
-
入会牧野【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第287回2024年4月18日
-
チューリップ切り花が復活の兆し【花づくりの現場から 宇田明】第33回2024年4月18日
-
4月1日新事務所移転 緑の安全推進協会2024年4月18日
-
東京農大と共同研究 良食味米「コシヒカリ」で低糖質米を実現 栽培手法を確立 ジェイフロンティア2024年4月18日
-
Oisix「おいしくアップサイクル ふぞろいキウイチップス」など3種発売2024年4月18日
-
「飯縄山」からの伏流水で育つ米と玄米の直売市開催 長野県飯綱町2024年4月18日
-
「食品製造現場におけるロボット等導入及び運用時の衛生管理ガイドライン」を策定 農水省2024年4月18日
-
「みどりの食料システム法に基づく基盤確立事業」実施計画認定を取得 アイアグリ2024年4月18日
-
微粉砕加工で機能性を付与 北海道産小麦粉「CRONOS」発売 小田象製粉2024年4月18日
-
発色が早いわい性ハボタン「ローブ ホワイト」種子発売 サカタのタネ2024年4月18日
-
日本の原風景「棚田」の魅力を1枚に「棚田カード」第4弾を発行 農水省2024年4月18日
-
鳥インフル ブルガリアからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2024年4月18日
-
次世代へ繋がる循環型酪農・林業へ 三井住友フィナンシャルグループと協業 ホウライ2024年4月18日
-
国内最大級のドローン専門展示会「第9回JapanDrone2024」6月5日から開催2024年4月18日
-
吉田羊が情感たっぷりに 新CM「すごいよ パウダールウ」篇 エスビー食品2024年4月18日