【小松泰信・地方の眼力】嘘つきは地方創生を語るな2020年1月22日
「安倍晋三首相は第2次政権以降、国会演説で、さまざまな人物に言及してストーリー性を演出する手法を好んで用いている。メッセージを国民に印象付けたい狙いがあるが、『情報の羅列にとどまり内容が伴っていない』との見方もある」とするのは、西日本新聞(1月21日付)。
◆「農業の危機は国土の危機」なんですが
日本農業新聞(1月21日付)の論説は、その演説からは農業・農村の将来に関する「危機感も明確な対応方針も読み取れない」とし、「今国会ではスローガンでなく実質的な農業再興論議」を求める。そして、「『農が国の基』が首相の持論なら、直面する危機に対する構想を施政方針で示すべきだった。農業の危機は国土の危機であり、食料安全保障の危機である。持続可能な農業・農村の再興戦略を打ち出し、『救国宣言』を出すくらいの覚悟と決意を首相は持ち、今後の答弁に立つべきだ。それこそが地方創生であり、防災・減災につながる道である」と、訴える。
◆地域おこし協力隊の定住状況
地方創生への貢献が大いに期待されている「地域おこし協力隊」の状況調査(総務省1月17日発表)によれば、制度開始の2009年度から18年度に活動した元隊員は累計4848人、うち3045人(62.8%)は任期終了後も赴任先か近隣の市町村に住み続け、地域活性化事業として一定の成果を上げていることを、西日本新聞(1月18日付)が伝えている。
定住者のうち、赴任先の市町村に住む2464人で、1060人(43.0%)が行政機関や観光業などに就職、888人(36.0%)が起業、317人(12.9%)が農林水産業に就いているそうだ。
九州7県の、定住者数(活動地と同一市町村内に定住した者と、活動地の近隣市町村内に定住した者の合計)を、2018年度末までに任期を終えた元隊員数で割って求めた定住率を示している。もっとも定住率が高いのが熊本(74.0%)、これに福岡(72.2%)、大分(66.4%)、宮崎(62.7%)、長崎(54.5%)、鹿児島(54.2%)、佐賀(50.0%)が続いている。最も低い佐賀においても半数は定住している。
◆ミスマッチと解消策
もちろん明るい話ばかりではない。
西日本新聞(2019年11月13日付)は、2018年に任期途中で辞めた隊員が全国で609人いることから、隊員確保やミスマッチ防止のため、「空き家所有者と居住希望者を仲介する不動産業務」(福岡県香春町)、「ジビエ活用」(長崎県五島市)といった、任期後の生活をイメージしやすいようにテーマを絞った「ミッション型」募集が増えていることを紹介している。
さらに同紙は、2019年11月13、14、15日の3日間、「『よそ者』力 地域おこし協力隊10年」と題して、協力隊の現状と可能性を探る短期連載をおこなった。
なかでも「後絶たないミスマッチ」という見出しで「孤立感」を取り上げた11月14日付の記事は興味深いものであった。
「生態系の保全が地域振興につながるモデルを作りたい」と応募し、「ぜひやってほしい」と歓迎された宮崎県内の40歳代女性隊員。着任早々担当者から「農作業の研修をやってもらうから」と言われ、「それは私の仕事ではないと思いますが」と返す。農作業や道の駅の手伝いを断り続けると、「前任者は来てくれたのに」と嫌みを言われた。「地域、役場が望むのは"何でも屋"。隊員はただの人員補填だった」ことに気づく。
隊員に認められている年最大200万円の活動費を役場に求めると、「急に言われても予算はない」。上司に何か相談すると、翌日には庁内に筒抜けになる。ストレスから体調不良になり病院通いの日々。孤立感が深まる中、住民たちに腹を割って話すと、「よそ者に土地や家を貸したくない。手伝いに来てもらわないと困るから、表だって言わないだけだ」と明かされた。
任期は2年半近く残るが、知識、経験を発揮できる新天地への移住を考えているそうだ。
◆地域に溶け込む"よそ者"
この14日付の記事では、悩める隊員を支援する動きも紹介している。
鹿児島県では、隊員やOB、行政の有志が参加する支援組織が発足し、隊員や自治体職員からの相談に応じている。
熊本県荒尾・玉名地域の2市4町の隊員有志12人は、互いの特産品などを勉強し、合同イベントなどで地域全体の魅力をPRするなどで交流を図っている。
15日付では、2014年度から募集を本格化した大分県竹田市の取り組みを紹介している。「協力隊カルテ」を作成し、隊員の目的と役割に食い違いが出ないよう、年4回面談を重ね、任期後の生活をイメージしてもらう。市OBが定住支援員として隊員の相談に乗り、地域住民を紹介する。任期満了隊員の定住率は7割以上。「地域に溶け込んだ"よそ者"の姿が市内各地で見られる」とのこと。
京都新聞(2019年11月4日付)の社説も、「地域おこしを協力隊員に『外部委託』するのではなく、ともに考える姿勢が受け入れ側には必要だ。隊員にも地域に溶け込む努力がいっそう求められる」としている。
◆地方創生に泥水を差す首相
「東京から鉄道で7時間。島根県江津市は『東京から一番遠いまち』とも呼ばれています。......しかし、若者の起業を積極的に促した結果、ついに、......人口の社会増が実現しました」に続き、実名で紹介されたH氏。「パクチー栽培を行うため、東京から移住してきました。農地を借りる交渉を行ったのは、市役所です。地方創生交付金を活用し、起業資金の支援を受けました。農業のやり方は地元の農家、販路開拓は地元の企業が手助けしてくれたそうです。『地域みんなで、手伝ってくれました』 地域ぐるみで若者のチャレンジを後押しする環境が、Hさんの移住の決め手となりました」と、首相が施政方針演説で地方創生の好事例として実名で取り上げたH氏は、昨年末に県外へ転居していた(中国新聞デジタル(1月20日21時28分配信)。
市は、国から事前にデータ照会を受けたが、男性のことが演説に盛り込まれているとは知らなかったそうだ。
「桜」の招待者名簿は個人情報を盾にシュレッダーへ。演説では実名で誤った個人情報を垂れ流す。これだけでも立派な犯罪。さらにH氏にプレッシャーがかけられているはず。アベシンゾウのウソをマコトに偽装するために。非道い、本当に非道い。
「地方の眼力」なめんなよ
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