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コラム:リレー談話室・JAの現場から

【藤井晶啓・日本協同組合連携機構常務理事】

2020.02.26 
【リレー談話室・JAの現場から】今を大切に、明日を描く 心のままに一覧へ

 映画「アナと雪の女王2」の主題歌は「イントゥ・ジ・アンノウン-心のままに」。JAの事業と組織運営に悩む経営者の心はどこにあるのだろうか。

 「対話運動を永続的に」という掛け声がかかるとともに、同じ口から「拠点統廃合しか道はない」とも。超低金利の出口も見えず「無い袖は振れない」ことはよくよく理解できる。どうすればよいか、途方に暮れるというのが嘘偽らざる思いではないか。

 絶対的に正しい答えはない。でも、答えは意外と近くにあるしれない。


◆理念はメシの種といえども

 「理念でメシは食えない」「理念は机上の空論、現実とは別」と言い切る人がいる。

 そうとは思わない。メシが食えないのは理念が形骸化しているからだ。経済も社会も日々変わっているので、事業のやり方も変わっていかなければならない。どこを変え、どこを変えてはいけないか、その道しるべが理念。理念こそライバルとの差別化の源泉であり、自らの存在意義だ。だから、自らの存在意義をないがしろにすることは自らのメシの種を捨てること、と語ってきた。

 さりながら、JAの経営を担う者にとって、超低金利政策を続けながら依然として縮小を続ける日本経済には頭を抱えている。

 片や、これまでのJAを支えてきた第1世代からの世代交代は終盤に。第2・第3世代とのつながり再構築のため、JAは対話運動に取り組んでいる。訪問活動など組合員との距離を縮めることが急務だ。

 その一方で、日銀の異次元緩和により、金融機関の資金利ザヤは減少を続けている。どの金融機関でも支店の閉鎖、人員削減、さらに金融機関自体の合併・再編が盛んに。JAグループでも経済事業の収支改善、業務効率化、支店統廃合等を柱とする「持続可能なJA経営基盤の確立・強化」を検討中だ。


◆対話と効率化のジレンマ

 われわれはつい「これしか道はない」と思いがちだ。欲求5段階説で有名なマズローは「ハンマーを持つ人にはすべてが釘に見える」という。ハンマーで釘を打って成功した体験を持つ者は、物事全てが釘に見え、全てハンマーで叩けば問題解決すると思いがちである。もしかしたら、ドライバーで回すべきネジかもしれないのに。

 対話と効率化を二律相反と捉えがちだが、そこに過去の経営危機をJA合併、支所統廃合、人員削減で乗り切った経験故のバイアス(偏り)はないだろうか。


◆バランス論で片付けない

 かといって、「対話運動と効率化のバランスは、全国600有余のJAが個々に考えるべきこと」という意見は身勝手だ。これまで各JAの経営判断の自由度を束縛したのに、いきなり自分で考え行動しなければ自己責任、と真逆のことを言うようなものだからである。

 では、どうするのか。確かに「絶対に正しい、絶対に良い答え」はないだろう。だからといって「『良い』道など一切ない、全て相対的なバランスだ」ということはできない。なぜならば、私たちは日々、何らかの「良い」「良くない」という確信を抱いているからだ。

 時間を経れば変わるかもしれないが、少なくともその時点では「良いもの」「やってはいけないもの」の判断を我々は持っているはずだ。その「良い」「良くない」となぜ思ったのか、その確信を明確にできないだろうか。

 その確信こそは絶対に「相対的」と言い張ることができないものだ。その確信が「今ここを生きる」ことであり、明日のメシの種につながる理念である。理念と現実のジレンマに悩むのは経営者として当然であり、全国全てのJAが悩んでいる。その悩みに合理化一辺倒の回答を用意するのではなく、一緒に悩み、情報が交流する場をつくることは協同組合らしいやり方ではないか。それが「ありのままで、心のままに」であり、「イントゥ・ジ・アンノウン」未知なる世界に踏み出すともし火となる。

 二宮金次郎は「遠きをはかるものは富み、近まをはかる者は貧す」といった。遠きをはかることができない経営に持続可能性はない。

 

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