【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】(175)想像力と状況判断2020年4月3日
2020年4月1日、日本での新年度が始まった。昨年度後半からの新型コロナウイルスによる感染症の拡大は、世界中に様々な影響を及ぼしている。本日(4月1日)時点で日本国内の状況、つまり「感度」は残念なことに余り良くない。
これまでのところ、日本は全体として非常に上手くこの難局を切り抜けてきたようだ。中国・韓国・ヨーロッパ諸国・米国での感染拡大と、それに伴う様々な対応を見ながら、とりあえず何とか持ちこたえてきている。
この背景には複数の要因があるだろうし、感染症の専門家でない筆者が言えることは少ない。基本的な衛生観念の違い、例えば、屋外から帰宅したら靴をぬぐ、手を洗うなどが大きな要因のひとつではないかと想像することしか出来ない。
ところが状況はこうしたレベルを遥かに超える速さで進展している。今や、感染初期にさんざん言われていた「若年層は大丈夫」というような一時期はそれなりの根拠があった言説も覆されつつあり、国内外で10代20代の感染者が出始めている。
社会現象として現在の状態を最もよく表わしているのは、本日のAFP通信のニュースの見出しである。「西仏英、1日のコロナ死者が最多に 世界36億人が外出制限(https://www.afpbb.com/articles/-/3276455?cx_part=top_topstory&cx_position=1)」、この見出しの後半「世界36億人が外出制限」、これを見てどう思うかで人の対応は分かれるのではないかと考える。
単純に「凄い」と思うだけの人もいれば、「大変だ」「ヤバイ」と感じる人もいるだろう。あるいは「日本はまだ大丈夫」と安心する人もいれば、その逆を考える人もいるかもしれない。
ここで述べたいのは、36億人が正しいかどうかは別として、こうした状況を見て、何を考えるかである。当たり前のことだが、一時期流行った「35億!」と同様、世界の半分の人間が今やこうした制限下に置かれているということだ。
ちなみに、この見出しを見たとき筆者が最初に思い浮かんだ内容は、仮に日本のスケールに直せば、6000万人...、宮城県なら115万人、仙台市なら50万人強か...、ということである。これを踏まえれば各々の立場で異なる意思決定ができるはずだ。
普通のインフルエンザでクラスの半数の生徒が欠席となれば通常の授業はほぼ成立しないであろう。同じことが今、地球規模で起きていると考えてみることだ。規模は家庭でも良いし、職場でも良い。あるいは地域でも良い。そこで想像力を最大限に働かせて、仮に自分が想像しているコミュニティ、あるいは人のつながりの半数が自宅待機になったときに今後の活動をどう行うか、その上で次の手を打つ必要がある。
厳しい言い方だが、36億人は地球規模で見た場合、アフリカや南米などの今後の状況を考慮するとまだまだ増加する可能性が高い。
状況判断とは大勢が決してから行うものではなく、その前に実施してこそ現実的な意味がある。このコラムが掲載される予定(4月3日)までには東京でも何らかの判断が下される可能性が急速に強くなっているのが、今朝の報道を見た状況である。
さて、4月1日は、多くの新社会人にとって初出社の記念すべき日である。新社会人以外の多くの人にとっても元旦とともに気分と意識を仕切りなおす日であろう。グローバルなレベルで起こっていることは必ずローカルな世界にも影響を及ぼすし、その逆もあり得る。
日本は特別、自分は特別という意識を持つのは構わない。だが、同時に全く逆の、日本も世界も変わらないという、相反する考え方を持ちながら行動することが求められる。それには、1人ひとりが徹底的に想像力を働かせて考える。そして、考えるだけではなく、試行錯誤でも良いので早目早目に冷静な状況判断行い、それに基づくこれも冷静かつ現実的な行動を実践することに尽きるであろう。
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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】
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