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【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】(178)「マスク」と食料自給率2020年4月24日

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【三石誠司 宮城大学教授】

 現在の「マスク」をめぐる問題は、長年議論されてきた食料自給率問題と良く似ている。「何のことだ」と言われるかもしれないが、現在の「マスク」をめぐる状況こそ、食をめぐる我々の状況を象徴していると思えてならない。

 まず、2020年1月23日の武漢閉鎖とそれに続く新型コロナウイルス感染症への対応のひとつとしてのマスクである。この段階で、恐らく筆者を含めて多くの日本人はマスクの自給率など知らなかったのではないだろうか。
 (一社)日本衛生材料工業連合会のホームページによれば、2018年のマスク輸入数量は44億2700万枚であり、国内生産量は11億1100万枚である。これらを合算した数字を仮に年間使用量と見れば、国内生産20%、つまりマスク自給率は食料自給率の半分ということになる。食料自給率がものすごく高く感じてしまう。
 自給率20%の商品の生産と流通がトラブルに見舞われた時にどうなるかが今回のマスク騒動である。つい最近まで1箱500円前後でドラッグストアに山ほど存在したものが瞬く間に店頭から消えている。2月中旬以降、入荷はいつになるかわからず、入荷しても1人あるいは1家族1箱などと制限が付くようになった。これは配給制に近い。マスクを求めて早朝からドラッグストアに並ぶ人達も目立つようになった。
 国内の各種メーカーが必死で製造し、中には異業種参入のようなところまで出てきているが、今でも一般人はなかなか入手できない。2~3月には「転売ヤー」と呼ばれる人間が世の中を賑わせた。購入制限がつく前のマスクを何箱も購入し、それを高値で販売したようだ。こうした状況を憂慮した当局が転売の禁止を定めたが、それで事態は改善した訳ではない。1か月が過ぎ、2か月近くたっても町中のドラッグストアにマスクはほとんど存在しない。筆者も数個のマスクをローテーションで洗いながら使用している。
 2月下旬に全国一斉休校の要請が出された当時、国内ではマスク不足に対応するため、必死で増産がなされているとメディアでは散々報道されていた。だが、4月も下旬になろうという現在でもマスクは相変わらず不足している。
 もちろん、最も必要な医療現場に流れているのであれば仕方がないが、どうもそうではないことを今朝のニュースで伝えていた。報道によれば、普段はマスクなど見向きもしない業種の人間たちが転売ではなく堂々と工場から仕入れ、それを1箱3980円とか5000円といった形で販売している。この報道が真実かどうかは不明だが、インタビューに答えていた人間がヤラセではない限り、事実なのであろう。
 なるほど、これは確かに禁止されている転売ではない。合法である。だが、本来価格の8~10倍の価格をさも当然のようにして売ることは決して良いとは言えない。マスクがどうしても必要な人はそれでも買うため、形は双方合意の上の取引である。経済学的には価格は需要と供給により決まるからだ。販売した方もその場ではそれなりの利益が得られるだろう。だが、長期的に見ればその店はどう評価されるのであろうか。もちろん店舗の家賃や人件費を支払わなくてはならないし、それが出来なければ営業は継続できない。したがって、休業要請をするのであれば、一定の補償がなければ店舗としてはたまらない。
 マスクを本来価格の10倍の値段で販売する店舗が出てくることはどこに原因があるかをよく考えてみれば、食料にも通じる問題であることがよくわかる。頭ではわかっているつもりでも、実際にモノが無くならないと人間はわからないのだろうか。
 それでもマスクは様々な素材で代替品が作れるが、食べ物が無くなったときは代替が効かない。新型コロナウイルス感染症の影響は、サプライチェーンの最も上流を外国に依存し、その外国が供給不可能になったときに下流の消費地では何が起こるかを見事に実体験させてくれている。
 「マスク危機」を単なる「マスク危機」としてではなく、「食料危機」に通じるものとして理解し、パニックにならず、淡々と備えをしておくことが必要であろう。

  
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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】

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