コロナ災禍 誰一人取り残さないために JCA客員研究員 伊藤 澄一【リレー談話室・JAの現場から】2020年5月26日
こころが折れ、息苦しいほどのコロナ災禍の3ヵ月が続いている。国や自治体の感染阻止と経済活動の調整、医療現場の懸命の緊急対応を経て、感染力が弱まる夏季を迎える。国民や企業も、緊急事態宣言が出た4月から5月の自粛生活や事業活動の縮小から、解除の動きとなっている。
◆コロナ第1波の教訓
この間に、政治は混迷のアクセルとブレーキを踏み続けた。SARSもMERSも経験しなかった国の行政は、たて割り・予算・前例の3つの壁に苦渋した。その3壁がPCR検査の機能不全に象徴的に現れた。感染実態が不明のまま、全国民的な規模で閉じこもるしかなく、学校も仕事も在宅に変った。マスクやゴーグルなど防御具も不十分のまま医療従事者の奮闘が続いた。医療機関も医療の崩壊と経営の危機に瀕している。地域に根を張るJAの厚生連病院や高齢者介護施設も都市部での苦闘を教訓に備えに入っている。
現在、日本全体が深刻な経済危機に突入している。企業活動や農業などあらゆる産業が苦境に立ち、学生や非正規労働者さらには社会的に弱い立場の人々の居場所や雇用が奪われている。かつて経験したことのない生活苦と閉塞感である。世界の動きも同じであり、1929年の世界大恐慌を超える事態が懸念されている。
一方で、世界の指導者や科学者たちは力を合わせて事態の改善、打開に努めている。各国は相互に情報を共有して自国の参考とした。混迷の日本も世界の注目を集めた。先進国でも最低位のPCR検査数なのに、コロナ感染による死者数は世界の低位にある不思議である。またインフルエンザ向けの「アビガン」がコロナ感染者の重症化を抑える、さらにフランスから伝わり戦後の日本で普及している結核予防のBCGワクチンがコロナの免疫にもなっているのではとの学者の論議がある。もう一つ、コスト・時間・体制を必要とするPCR検査の改善、低コストで簡便な抗原検査、感染したことがわかる簡易な抗体検査も期待されている。革新的な検査キットや唾液による安全な検査方法の開発など新技術も生まれた。科学への期待は、自粛やマスク・手洗いなどを励行する国民を勇気づけている。
◆第2波への備え
ブレーキとアクセルは真逆なのではなく、感染者と非感染者の区別ができれば、マウンドに上がるリリーフ投手とベンチに降りる先発投手のように役割を分けることができる。ポイントは感染検査である。国民の多数検査も第2波対応のなかで可能になって、選挙に行くように唾液抗原検査などが受けられるかもしれない。
第1波から感じたことが二つある。一つは東京首都圏・大阪周辺などの人口密度の高い都市部は、人間生活の最適地ではなくなっていると思う。もともと、巨大地震などが迫るなか、ウイルス等の災禍も100年に一度ではなく平時のテーマとなった。その意味で、都市と地方相互の命の補完関係を真剣に考えるべき局面に入った。膨張して過密に歯止めがかからない人口1400万人の東京から人が移動して、本物の地方創生が始まっていくと思う。人々が密に接する暮らしや仕事の様式にリスクがあれば、見直しも生じるだろう。新ワクチンができて再スタートできても、次のウイルスが飛行機と人間によってやってくるからである。
もう一つはこれからの半年、1年の課題である。北半球から南半球に移る感染拡大が冬になると日本に戻ってくる。第1波の教訓から行政の3壁が低くなっている。国と地方の連携でたて割りの弊害を克服し、補正予算等の財政出動で産業を保護し、この間に得た知見を前例にして国民の生活困窮と医療体制の整備への支援を要望したい。五輪開催へのこだわり、不祥事絡みの検察庁法改正、学校の9月スタートなどの論議は不要不急である。先ずは第2波への万全の備え、その一点に尽きる。
世界は、SDGsの「誰一人取り残さない」の意味を「すべての人々の命が等しくかかわるコロナ災禍」によって共有することとなった。
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