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強まる世界の減農薬のうねり-日本はどう対応するか【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】2020年10月29日

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【鈴木宣弘 東京大学教授】

10月22日に放映されたNHK「クローズアップ現代+」は世界の農薬規制や有機農業、日本の取組みに関する情報を提供してくれた。これを基に、日本の食と農のあり方について考えてみたい。

世界で強まる農薬規制

グローバル種子・農薬企業に対する除草剤の裁判で、(1)早い段階から、その薬剤の発がん性の可能性を企業が認識していたこと、(2)研究者にそれを打ち消すような研究を依頼していたこと、(3)規制機関内部と密接に連携して安全だとの結論を誘導しようとしていたこと、などが窺える企業の内部文書(メールのやり取りなど)が証拠として提出された。企業側は意図的な切り取りだと反論している。

この除草剤については、国際がん研究機関を除けば、欧州食品安全機構、米国環境保護庁といった多くの規制機関が、発がん性は認められない、としている。しかし、裁判からもわかるように、規制機関に対する消費者の信頼は揺らいでいて、特に、EUでは市民運動が高まり、それに対応して消費者の懸念があれば農薬などの規制を強化する傾向が強まっている(注1)。

タイなど、EU向け輸出に力を入れている国々は、EUの動向に呼応して規制強化を進めており、それが世界的に広がってきている。これがアクセルを踏もうとしている日本農産物の輸出拡大の大きな壁になりつつある。

世界的な食の安全への関心の高まり

農水省の調査結果の表をお茶について示したが、ピンクの欄は日本よりも農薬の残留基準が厳しいことを意味し、表が全体にピンク色に近づいていることがわかる。

しかも、日本では、輸出向けだけに基準クリアのための対応をする傾向があるが、世界的には、国内消費者も含めて、国全体の基準として決めているということであるから、単に輸出対応という理由だけでなく、全体的に食の安全への意識が高まっていることも推察される。

日本の基準が緩いと、海外からの日本への輸入は入りやすくなる。例えば、除草剤は国内では小麦にかける人はいないが、米国では、小麦、大豆、とうもろこしに直接かける。それが残留基準の緩い日本に大量に入ってきて、小麦粉、食パン、しょうゆなどから検出されている。畜産物の成長ホルモン投与も日本では認可されていないが、輸入はザル状態なので、米国からの輸入には含まれいる。国産牛肉(天然に持っているホルモン)の600倍も検出された事例もある。
農薬自体についても、EUで禁止された農薬を日本に販売攻勢をかけるといったことも起きている(印鑰智哉氏、猪瀬聖氏)。


強まる世界の減農薬のうねり-日本はどう対応するか―表令和元年度輸出環境整備推進委託事業 報告書(クリックで拡大)


遺伝子操作の表示の問題

遺伝子操作への表示問題もある。日本ではゲノム編集の表示義務がないので、遺伝子操作の有無が追跡できないため、国内の有機認証にも支障をきたすし、ゲノム編集の表示義務を課しているEUなどへの輸出ができなくなる可能性がある(印鑰智哉氏)。現在、遺伝子組み換えについては、大豆油、しょうゆなどは、国内向けは遺伝子組み換え表示がないが、EU向けには「遺伝子組み換え」と表示して輸出している。

世界における有機農業の急速な拡大

世界的な有機農産物市場の拡大も急速だ。有機栽培はコロナ禍での免疫力強化の観点からも一層注目され、欧州委員会は、この5月に「欧州グリーンディール」として2030年までの10年間に「農薬の50%削減」、「化学肥料の20%削減」と「有機栽培面積の25%への拡大」などを明記した。

EUへの有機農産物の輸出の第1位は中国となっている。しかも、輸出向けだけ有機栽培を増やす国家戦略なのかと思いきや、最新のデータ(印鑰智哉氏提供)によると、中国はすでに世界3位の有機農産物の生産国になっている。これが世界で起きている現実である。

国内市場の見直し

我が国でも「有機で輸出振興を」という取組みも一つの方向性だ。しかし、世界の潮流から日本の消費者、生産者、政府が学ぶべきは、まず、世界水準に極端に水を開けられたままの国内市場だ。

除草が楽にできる有機農法などの技術を開発・確立し、一生懸命に普及に努めている人々がいる(民間稲作研究所など)。国の支援が流れを加速できる。

学校給食を有機にという取組みも多くの人々の尽力で全国に芽が広がりつつある(注2)。公共支援の拡充が起爆剤になる。

世界潮流をつくったのは消費者

そして、EU政府を動かし、世界潮流をつくったのは消費者だ。最終決定権は消費者にあることを日本の消費者も今一度自覚したい。世界潮流から消費者も学び、政府に何を働きかけ、生産者とどう連携して支え合うか、行動を強めてほしい。それに応えた公共支援が相俟って、安全・安心な日本の食市場が成熟すれば、その延長線上に輸出の機会も広がる。

輸出だけ有機・減農薬の発想でなく、世界の食市場の実態を知ることから足元を見直すことが不可欠な道筋である。そもそも、国内需要の6割以上を輸入に取られてしまって、輸出だけ叫んでみても意味がない。海外の潮流を国内にも取り込んで、国内需要と輸出とを含めた総合的な需要創出戦略が必要である。今回のNHK番組は、日本の生産者、消費者、企業、協同組合、政府が、日本の食と農のあり方について、議論を深める契機となったと思う。

(注1) これは消費者の懸念に対応する形でEUへの輸入を抑制する効果もある。貿易自由化の進展で農産物の関税が下がった分、ルールを強化して「非関税障壁」を高める戦略にもなっている。
米国は、豚肉、鶏肉、鶏卵、柿、さくらんぼ、ぶとう、桃、かぼちゃ、トマト、ピーマン、キャベツ、葱、にんじんなど、数多くの日本の農産物を、虫がいるとか、病気になっているとか言って、検疫で止めている実態がある。みな、実にしたたかである。
また、各国は輸出を国家戦略として強化している。米国は日本でも肉や果物の販売促進をやっているが、経費の半分は政府が出している。韓国は輸出向けの「フィモリ」という国家統一ブランドで販売している。諸外国は、実質的な輸出補助金もたくさん使って、戦略的に海外での需要創出を支援していることも認識しなくてはならない。

(注2) 有機給食に関連する参照データ
安井孝『地産地消と学校給食――有機農業と食育のまちづくり』コモンズ、2010年3月。
川田龍平「オーガニック給食こそ日本の食を守る一手」毎日新聞、2020年3月10日。
安田節子『食べものが劣化する日本?命をつむぐ種子と安全な食を次世代へー』食べもの通信社、2019年9月。
吉田太郎『コロナ後の食と農~腸活・菜園・有機給食』築地書館、2020年10月。
「子どもたちの給食を有機食材にする全国集会(山田正彦、堤未果、鮫田晋、稲葉光國、澤登早苗の各氏が講演)」八芳園、2020年9月25日。
https://www.jacom.or.jp/nousei/news/2020/09/200929-46734.php

資料: https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_r1_zigyou/attach/pdf/e_r1_zigyou-29.pdf

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

鈴木宣弘・東京大学教授のコラム【食料・農業問題 本質と裏側】 記事一覧はこちら

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