(214)配合飼料の企業ランキングに見る時の流れ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2021年1月15日
年の初めというのは1つの業界をレビューしておくタイミングとして悪くありません。世界規模で見た場合、カレンダー年度でまとめているものが多く、少し古い内容でも各種統計が結構揃うからです。ということで、今週は畜産の飼料、この業界を見てみましょう。意外と面白い発見があるものです。
経営戦略の中に「垂直統合(vertical integration)」という概念がある。原材料の生産から製品の販売に至る流れをひとつの企業内あるいは企業グループ内にまとめることである。畜産で言えば、牛・豚・鶏の飼育からと畜・加工、そして食肉製品の販売までの流れてあり、これを全て実施している企業はインテグレーターと呼ばれている。
さて、2006年まで前職でこの一連の流れの中で飼料原料を調達する仕事に従事していたため、筆者は今でも配合飼料関係の業界の動きが気になるときがある。日本の場合、国内生産と輸入のバランスをとる必要が常に存在するため、ここは重要なポイントでもある。
世界レベルで見た場合、組織としてはIFIF(International Feed Industry Federation:国際飼料産業連合...とでも言うおうか)というものがある。この構成メンバーは、3種類あり、各国あるいは地域の同様の組織である。日本では日本飼料工業会(JAFMA:Japan Feed Manufacturers Association)がメンバーである。農協組織を「系統」と言うが農協系は「くみあい飼料工場会」という別組織であり、日本飼料工業会は「商系」の配合飼料会社が集まった組織である。だが、興味深いことに正式名称は「協同組合日本飼料工業会」であり、「商系」各社はこの会の「組合員」である。国内では「系統」対「商系」の熾烈な争いがあるが、「系統」に対する相手方の連合が協同組合というのは何とも言えない。いろいろな事情があるのであろう。
話を戻すと、IFIFにはこうした各国や地域団体以外にも数は多くないが企業で直接メンバーとなるケースもある。カーギルやデュポンなどがそうだし、日本では住友化学の名前が見える。さらに直接飼料には関係がなくても関係する業界や企業がメンバーになることがある。ブラジルの植物油産業連合や、配合飼料を製造する機器メーカーで有名なドイツのビューラーなどもメンバーである。
要は、こうした業界団体や企業が集まり世界の配合飼料業界が構成されている。カタカナで呼べば、これがグローバル・フィード・インダストリーということになる。
さて、このIFIFによれば世界の飼料業界の年間取扱高は数量にして10億トン、金額にして4000億ドル($1=¥100として40兆円)を超えるようだ。ちなみに40兆円を10億円で割るとトン当たり4万円になる。無意味な計算だが目安にはなるかもしれない。)
2018年時点の数字だが、配合飼料製造で世界最大の国は中国(188百万トン)以下、米国(177百万トン)、EU(165百万トン)、そして日本以外のアジア諸国(185百万トン)と、これら4つで全体のほぼ3分の2を占める。
具体的な企業名は下記の表のとおりである。左側がインテグレーターとしてのランキングであり、右側が単純に生産量のランキングである。
こうして見ると、筆者が現役のトレーダーで居た頃に比べ、中国企業の躍進が著しい。また、日本の年間配合飼料生産量は2400万トン前後だが、それと比べると世界の上位企業がどの程度の量を生産しているかがわかる。世界の生産量を10億トンとすると日本のマーケットは2.4%である。70億人に対する1.2億人は1.7%とすれば十分に健闘しているのかもしれないが、「系統」も「商系」もお互いに消耗戦になるような戦いを続けるのではなく、外部の急成長市場の一部をうまく取り込む形で、それこそ「協同」することは出来ないものかと思う。
*
久しぶりに振り返った世界の配合飼料マーケットは中国勢の大躍進が目立ちます。かつて1980年代には日本企業がこうしてあらゆるランキングの上位を席捲していました。時の試練は非情です。中国の次はどうなるのでしょうか。
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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】
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