「自然のダム」で土石流防ぐ【目明き千人】2021年7月31日
広葉樹林は根が深く水を貯える力があり森林が大雨を受け止める。山から流れ出た水を水田が受け止め水をコントロールする。森林と水田が自然のダムの機能を持っている。
熱海市の土石流の災害の映像を見ると、これは熱海市だけではなく全国同じような地形の各地の対策を改めて見直すことを教えてくれている。急な山の斜面を造成して工場や住宅を建てているのが日本の何処へ行っても共通な景色となった。
台風や集中豪雨による被害を防ぐためには、山には広葉樹林を多く植林をして森林を整備する。その下には多くの地域で水田があるのでこれを維持する。傾斜が急の場所は棚田として地形を利用する。
整備をされた緑の豊かな森林、田植から稲刈りまでの手入れの行き届いた棚田、市街地が一つの風景になれば絵葉書となり観光資源となる。
林業や農業を近代的な産業とするために単位面積当たり、一人当たりの生産性を上げるには森林も水田も大規模化して最先端の技術による数値を目標とした管理となる。林業、農業の生産性の計算基礎に「自然のダム」の機能を入れて土石流の被害の救済、復旧の費用等の災害を防ぐ経済効果を入れて計算をすれば全く異なった評価となる。
また水田は食用のコメの他にもトウモロコシや小麦の栽培も出来る。飼料用のコメを作り輸入をしている家畜の飼料にすれば食料の自給率を大きく上げることとなる。分かりやすい例として鶏卵がある。卵は日本の鶏が産んだものなので生産力ベースの自給率は96%であるが、鶏の飼料のトウモロコシや小麦は大部分が輸入なのでこれを差し引いたカロリーベースの自給率は12%と低くなる。
飼料用のコメを作れば自給率も上がるが、農業や畜産の経営を他の産業と同じような生産性の尺度で見れば国内だけでなく、先進国と比べても遅れた産業として大幅な改革を求められる。
亜熱帯から寒冷地までと南北に長く、四季があり、国土面積の66%が森林、13%が農地という日本の地形、気候等自然環境を守り全体のバランスを大切にして次の世代に引き継ぐのが昔からの日本人の知恵である。
(原田康)
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