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ダブル「仏滅」総選挙 食と農の〈共創〉問う【記者 透視眼】2021年10月12日

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各党代表質問を経て14日に解散、総選挙へ。衆院選は歴代の宰相が避けてきた〈仏滅〉選挙を選択した。首相自ら「新時代共創内閣」と名付けた。ならば、共に創る地域産業の核である農業振興の在り方も選挙の焦点になるはずだ。(敬称略)

■首相所信「遠くには皆で」協同組合源流
首相・岸田文雄の所信表明は、1年前の前任者・菅義偉とは真逆となった。菅が携帯電話の引き下げなどマクロの羅列なら、岸田はマクロ経済の視点で分配重視の「新たな資本主義」を掲げた。
11日からの代表質問では野党党首から「中身がない」「具体性に乏しい」と批判が相次ぐ。確かに野党の指摘にも一理あるが、ここで注目したいのは、岸田が所信で最後に2度も繰り返した含蓄のある言葉だ。
「早く行きたければ一人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め」。アフリカのことわざにあるが、これは相互扶助、助け合いが真髄の協同組合と相通じ共創とも重ならないか。
もし、岸田が本気で、弱肉強食の新自由主義からの転換と、相互扶助を意味する「遠くには皆で」の政策を進めようと思っているのなら注目に値する。

■自民鬼門の東北米産地
2012年12月からの9年近いアベ・スガ長期政権を可能としたのは、国政選挙で与党勝利を続けてきたことだ。
ところが、自民党勝利の影でいつも〈鬼門〉となってきたのは、東北の米地帯だ。野党共闘が成立した場合の東北の1人区は、大接戦を続けてきた。自由化の推進、農協改革に象徴される理不尽さを伴う規制改革推進などで、自民党農政の評価は厳しいままだ。

今回は、米需給緩和で稲作農家の所得減につながる概算金引き下げが重なる。与野党で、米価浮揚対策の言及が目立ってきた。総選挙では、自民vs野党共闘の農村部一人区の勝敗が今後の農政展開に大きな影響を及ぼす。

■約20年ぶり「仏滅」投開票
政治家は縁起を担ぐ。衆院解散権を持つ宰相ならなおさらだ。そこで、解散・総選挙は「六曜」の「仏滅」は避け、できれば縁起の良い「大安」を選ぼうとする。

だが、切羽詰まりやむを得ない場合は別だ。今回の新首相・岸田文雄の選択は、明らかに縁起よりも国内外の日程と与党・自公政権で過半数を死守するという政治的判断を優先した。

◎主要政治日程
・10月 8日岸田首相の所信表明演説
 11~13日野党党首らの代表質問
 14日大安 衆院解散
 19日仏滅 衆院選公示
 21日   衆院議員の任期満了
 24日   参院静岡・山口補選投開票
 30~31日G20首脳会議(ローマ)
 31日仏滅 衆院選投開票 ハロウィン
・11月初め気候変動COP26首脳会談(英グラスゴー)

先の政治日程で分かるように、衆院選の公示、投開票ともに「仏滅」という、縁起が極めて悪いダブル仏滅選挙となる。ただ、14日の解散日が逆に縁起の良い「大安」という見方もある。解散で議員資格を失う270余りの自民党議員の内、「大安」のおみくじを握りしめ無事、国会に戻って来られる代議士がどれほどいるかは、選挙区での各自の奮闘次第だ。   

■2000年森首相ダブル「仏滅」選挙
公示、投開票とも「仏滅」なのは2000年6月の森喜朗内閣以来だ。6月2日の解散日が「大安」なのも同じ。この時は、天皇訪欧と衆院議員任期切れ間近で日程の選択肢が少なかった。今回は、首相指名から10日後と最短の奇襲総選挙とも言える。

政権の「賞味期限」は短く、時間が経つにつれて内閣支持率が下がってくる。一般に組閣後1カ月で支持率は15ポイントほど下がる。自民党実力者である安倍、麻生、甘利の頭文字を取り「3A」の影響が強い岸田政権は、スタート時から支持率が思ったほど高くない。当初予想の11月上中旬の衆院選から「前倒し」の最大の理由だ。

約20年前のダブル「仏滅」選挙の結果はどうだったのか振り返ろう。自民党は233と、改選前から38議席を減らした。ただ、与党全体では安定多数の271議席を確保した。当時の与党は自公に加え、小沢一郎率いる自由党から分裂した保守党が加わった。
不用意な発言が多く、存在感が薄いことから、森喜朗は読み方を〈しんきろう〉とさえ呼ばれた。実態のない蜃気楼と重ね皮肉を込めた。

実際に森内閣の支持率は時間を追うごとに下がり続け最後は10%台に。翌01年3月、自民党総裁選には出馬せず。自民党は大きな政治的危機に直面したが、小泉純一郎が自民総裁、首相となると党勢は一気に回復した。

■20年前は宮崎で口蹄疫
ダブル「仏滅」選挙の2000年は、農業界でも大きな出来事が相次ぐ。
まず国内を震撼させた口蹄(こうてい)疫の発生だ。畜産王国・宮崎で92年ぶりに発生した。
また、食料・農業・農村基本法制定を受け、食料自給率45%(カロリーベース)など具体的目標値を決めた基本計画を決定した。だが20年を経て、自給率は目標にほど遠いどころか、過去最低水準から脱せずにいる。

■もう一つ、1986年衆参同時「仏滅」選挙
憲政史上、もう一つの「仏滅」総選挙は1986年7月6日、中曽根内閣で実施された。
しかも禁じ手ともされる衆参ダブル選挙だ。「死んだふり解散」と称され野党の油断を突いた。
結果、自民党は圧勝し、衆院304を得た。生産者米価据え置き、ガット12品目問題など農業市場開放問題も揺れた年だ。弱小派閥の首相・中曽根康弘はこれで権力基盤を安定させ長期政権につながる。

■地方の〈共創〉具体策がカギ
冒頭で触れた〈共創〉の二文字の持つ意味は重い。
7日の全中理事会後の会見で、中家徹会長は総選挙に関連し「日本の食と農は本当にこれでいいのか。選挙戦を通じ議論を深めるべきだ」と強調した。やはり、キーワードは〈共創〉ではないか。岸田内閣で少子化・地方創生大臣を務める野田聖子は、自民総裁選立候補の所信で地方創生の要に郵便局とJAを挙げ、そのネットワークに期待を示した。元気な地域を共に創る具体策を各党、各議員が提案できるのか。記者の〈透視眼〉からは、そこに当落を決するカギが見える。

(K)

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