(255)大学4年生、最後の100日【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2021年10月29日
大学4年生は卒業まで残すところ数カ月となり、私の勤務先では先週末に例年どおり卒論の中間発表が行われました。
ここ数年、就活のピークが大学4年の春のため、恐らく多くの大学では4年前期の授業に多大な影響が生じている。大学の授業の多くは通常1~2月に終了し、学年末の試験となるため、従来2~3月は春休み期間であった。その時期を利用して海外旅行などへ出かける学生も数多くいた。
正式な説明会の解禁が12月1日の時代には、12~1月の授業が影響を受けたが、採用面接が本格化するのは2~3月であり、概ね4年の春には落ち着き先が決まっていた。当時はゴールデン・ウイーク明けからは本格的に4年目の講義に取り組めていた。
数年前からか、12月の解禁が早すぎるということで、3月にズレた結果、3年生の授業はそれなりに行えるようになったが、採用のピークがその分だけ後退し、4年前期の授業が影響を受けるようになった。
就活は、人それぞれ、そして会社によりペースも異なるため、長い学生は4年前期のほぼ全てが就活で振り回されることになる。多くの学生はそれなりに単位を修得しているため、就活とプライベートの時間をうまくバランスさせているようだが、中には予定どおりにいかない学生もいる。
その場合、大学4年の前期はおろか、夏休みの一息を含め秋からも就活が継続することになる。これは企業も大変だが、当の学生にとっても大変な忍耐力を必要とする継続的訓練となる。これもよく言われることだが、多くの学生は就活という経験を通じて一回りも二回りも成長するが、渦中にいる本人は本当に大変である。
そうこうしているうちに、私の勤務先でも後期が始まり、今週は15回授業の5回目、つまり1/3がこれで終了となる。本当に早い。先日、ある講義でチャップリンの「モダン・タイムス」の有名な工場シーンを活用した。昔流に言うならば、ベルト・コンベアの上を流れる製品を次から次へと休みなく作業で対応していく様子だが、何となくこれを最近の学生ではなく自らの姿に重ね合わせてしまい考えた次第である。
先週末には4年生の卒論中間発表が終了した。1人5分の発表と2分の質疑である。短い時間とはいえ、数十人の前で自分が何について卒論を書くのか、そしてその研究方法や、現在までの到達点、今後の予定などを一気に話してもらう。
発表はもちろんパワー・ポイントを使用するが、そのパワー・ポイントを作成することにより初めて自分が何を卒論でやらなければいけないかを自覚する学生も多い。さらに、他の学生の発表を聞くことにより、相対的な進度やレベルについて、学生達は教員が言うよりはるかに敏感に察知する。
社会に出れば5分程度の意見表明やプレゼンなど、1日に何度も行うことが普通の職場もあるだろうが、教室で講義を受けるスタイルの授業やグループ・ワークとはいえ同級生達との友達付き合いの中での共同作業をしてきた学生達にとっては、いわば初めての経験になる。
就活でさまざまな人と会い、いろいろな会話を経験したてきたせいか、学生達は思った以上に発表をうまくこなすが、それはあくまで5分間に過ぎない。私の勤務校では基本的に1月末を期限としているため残り期間は約100日である。これから先は、いろいろな興味・関心、そして理解度のさらなる向上に伴い、深めたい事ややりたい事が数多く出てくるが、あとは時間との競争になる。100日間でいかに形にするかが問われる。
私にとってはビジネスの世界から教育の世界へ移り、今年は14回目の卒業生を送り出す最後の100日でもある訳だ。最終製品のイメージがようやく朧気に見えてきたが、全てはこれからである。
* *
11月は例年過ぎるのが早く感じます。あっという間に12月が来ます。コロナも落ち着いている現在、進めるだけ進めておかないと後が大変そうです。無理をせず、ゆっくりと「急いで」行きたいものです。
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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】
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