3年産から本格化する量販店売り棚の産地間競争 【熊野孝文・米マーケット情報】2021年11月2日
農水省が10月29日に令和3年産米の9月末現在の検査結果について公表したので、主だった銘柄と品位について触れてみたい。産地銘柄の中には10月中旬を境に急反発した銘柄もあり、それまで買い手市場であった3年産米の様相が変化、先行きの市況動向が混沌としてきた。特定銘柄に限って価格が上がるという背景には消費者の根強い銘柄信仰があるためだが、それがどこまで続くのかと言う点も3年産米の焦点になりつつある。
まずは表を見て頂きたいが、これは3年産米の9月末現在の検査実績と2年産米の昨年同時期を比較した表である。
うるち米、もち米は昨年同時期より検査数量が多い。3年産米は主食用米の作付面積が減ったはずなのに検査数量は多いというのは不思議な感じだが、これには二つ理由がある。一つは、もち米は主食用米は減ったが加工用米は大幅に増加しており、この分も含んでおり、供給量が減るというわけではない。うるち米は加工用米も減ったが、3年産は収穫時期が早まったこともあって検査する進度が早まったということもある。
この検査数量で最も注視すべきは、家庭用精米の御三家と言うべきコシヒカリとあきたこまち、ななつぼしがどうなっているのかと言う点。特に売れ筋ナンバーワンの新潟コシヒカリの市中相場は「年間供給する量が不足するのではないか」という見方もあって急反発している。コシヒカリの検査数量は全国的にはほぼ前年並みになっているが、新潟県は1万2000tほど少なく、作付面積の減少に加え、作況指数が96と平年を下回ったことでこうした数量になっているものと見られる。
3年産新潟コシヒカリについては数量以外にも懸念材料がある。それは品位で、等級落ちした原因について青未熟粒、乳白粒、部分カメムシ害、胴割粒混入が上げられている。国に報告義務がある格付け理由は、胴割粒は被害粒の中に入っており、被害粒の上限は農産物検査規格では1等が15%、2等が20%、3等30%まで許容されるが、農検法上そうした規格であっても胴割れが15%も含まれているような玄米であれば買い手は返品する。実際、品位基準を厳格に定めている新之助でさえ返品されている事例もある。厄介なことは、胴割れは目視検査では判別できないものもあり、精米工程で割れが発生しクレームの対象になることがあることで、これを防ぐ方法として精米の浸漬実証テストまで行われている。新潟コシヒカリの格落ち理由では9.3%が胴割粒混入として上げられている。その最大の原因は登熟期の高温障害で、過去にも同様のことが起きており、県では対策会議も開催されて来たが3年産も防げ切れていない。胴割よりも多いのがカメムシ害で9.9%を占めている。カメムシも厄介な存在で、近年飼料用米の作付けが増えて防除されない水田もあり、そこがカメムシの発生源になり、晩成品種の被害が増えている。ブランド米としての価値を落としなくないのは産地だけでなく流通業者も同じで品位に対して厳しい判断を下す。
産地銘柄別の検査での注目点では、北海道の2大銘柄ゆめぴりかとななつぼしの検査数量が前年を大幅に上回っている点。北海道は2年産米で価格を崩さなかったことで、在庫数量が最も多い産地になってしまった。現在盛んに量販店で"増量セール"を行っているが、3年産米も作況108と言う全国一の豊作になったことから更なる販促活動に打って出ることになる。
量販店の売り棚を巡って各産地の攻防が苛烈になることは明らかで、3年産から本当の産地間競争が起きることになりそうだ。
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