【熊野孝文・米マーケット情報】玄米食の起爆剤になるか「医療同源・玄米で健康」シンポジウム 2021年12月14日
12月18日に東京ミッドタウンホール(港区赤坂)で「医療同源・玄米で健康」シンポジウムが開催される。会場で200人が参加できるほか、オンラインでも500人が視聴できる。参加費は無料で会場参加者には玄米食のレシピを紹介した冊子もプレゼントされる。セミナーで基調講演を行うのは一般社団法人メディカルライス協会の渡邊昌理事長。渡邊理事長は12月9日にWeb上で開催された米マッチングフェア2021でも講演、この中で腎臓病患者でもおいしく食べられる低たんぱく機能性玄米が開発され、年明けにも販売されると述べた。

9日のWeb上のセミナーで渡邊理事長は64ページにもなる資料をアップして自身の経歴を紹介した後、本題に移り、日本の医療費は天井知らずに増加しており、40兆円を超え、介護費を加えると60兆円にもなり、日本のGDPの1割を占めている。医療費は社会保障されているが、81歳になる自身でも保険料は年間16万円、介護保険を4万円負担している。こんなにも負担が重くなっているのを疑問に思っており、国民一人一人が良く考える必要があるとした。
「予防に優る治療無し」で、未病にすることによって医療費は3分の1に減らせる。食を改善するだけで医療費が10兆円減らせるという本を書いたが、これは中国でも訳されている。
自身が糖尿病になり、それを克服するために試行錯誤し、辿り着いたのが「玄米」。医師は玄米のエビデンスを持っていないが、タイでは黒米が糖尿病に良いという事で、コメを食べることによって病を治す。日本では許されていないのでメディカルライス協会を設立した。
目指すところは「良いコメの生産と健康効果をしっかりとつなぐ」ことで、2019年に玄米食味グランプリを開催、50社が有機玄米をエントリーした。
2020年には国の知の集積事業に採用され二つのプラットホーム作りの研究を行っている。一つは土壌菌の研究で10社の篤農家に参加してもらっている。もう一つはコロナのファクターXと米食のメカニズムの研究。将来的には糖尿病やがん予防にコメを取り入れられないか研究する。
最初に玄米食の良さに気付いたのはドイツ人医師のベルク氏で、車夫が東京から日光まで110㎞を14時間で着いたことに驚き、車夫の食事を見たところ玄米おにぎりと梅干だけという粗食であった。車夫の食事を肉食にして試したところ3日続けて走れなくなった。
玄米食の人は肥満がなく、食べない人に比べ10分の1ぐらいしか薬を飲まない。
有機玄米に着目したのは、土に関心を持ったからで、有機農業とは何なのか? もっと良い環境と食料の安全生産を記した本もあり、系統的に調査することにした。良い田んぼは好気性の細菌が多い。
玄米の20徳と言われるほど、玄米食はいろいろなメリットがあるが、ではなぜ普及しないのか? 第一には食べず嫌いがあり、食べやすくする工夫が必要だ。
腎不全の人は800万人にもなり、低たんぱく食が必要になるが、治療に当たる側も食事療法の指導は受けていない。腎機能の衰えは30歳台から高まり、タンパクの摂取量に気を付けた方が良いが、医療費と比較した場合、費用対効果が高い食事が広がらないのは、医師が知らないことや栄養士も知識がなく、販売業界も不熱心で必要な人に情報が届いていないためだ。
メディカルライス協会はより良い製品づくりのために低たんぱく米の七つの条件をクリアーできるコメを原料米として使用、2段階乳酸菌処理をしてタンパク値を10分の1にしたパックごはんが製造できるようになった。食物繊維の多さやガンマーオリザノールなど玄米の良さはそのまま残った低たんぱく機能性パックご飯で、JAS認証を得るべく準備しているほか臨床試験も計画している。
以上が渡邊理事長が9日に講演した概要だが、はじめに記したように64ページものデータを示したもので、腎臓病患者の食事に関する低タンパク値など専門的な話が多いので、視聴されなかった人は18日に開催されるシンポジュウムに参加されることをお勧めする。
シンポジウムでは、「機能性玄米について」新潟薬科大学の大坪研一教授、「玄米の将来について」江川技術士事務所の江川和徳所長、「高機能玄米とは」と題して一般社団法人高機能玄米協会の尾西洋次代理理事、「おむすびが世界を変える」と題して(株)イワイ(おむすび権米衛)の岩井健次社長が講演することになっている。
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