【浅野純次・読書の楽しみ】第69回2021年12月18日
◎アンデシュ・ハンセン 『最強脳』(新潮新書、990円)
大ベストセラーとなった『スマホ脳』の著者による続編として大いに期待しつつ読みました。日本のメディアや読者から、「子どもの脳に良いことは何か」「要するにどうしたらいいのか」といった質問が寄せられ、それに答えるべく執筆したと著者は言います。
そしてその答えは?一言でいえば、「運動をしよう、そうすれば脳は良くなる」ということだそうです。ちょっと単純すぎるように感じられるかもしれませんが、本書の9割は脳の仕組み、運動が脳に及ぼす刺激の中身、運動がもたらす集中力、落ち着きと発想力など脳全般にわたる話で占められています。
そして残りでスマホとドーパミンが登場しますが、これは前作のおさらいのようなものです。ドーパミンに打ち勝つためにも運動が必要なのだそうです。
といってもゆったりした運動ではなくて、週に3回、30分間ずつ、心臓がどきどきして息が上がるくらいが望ましいとか。早足で歩く、急坂を登る、ジョギングするなど、運動の種類は問わない由。
そうした運動をすると数時間は集中力が高まり、実際、ゲームの成績も上がるそうで、著者は短時間のスマホゲームなら別に反対してはいません。ただし高齢者に激しい運動は注意しましょう。
◎伊勢崎賢治・布施祐仁 『主権なき平和国家』(集英社文庫、682円)
日米地位協定の本はこの欄でも何度か取り上げてきました。憲法論議も大事ですが、その前に私たちは地位協定としっかり向き合うことが欠かせないと思うからです。副題は「地位協定の国際比較からみる日本の姿」で、帯には「この国は今なおアメリカに占領されている。」と大きく印刷されています。
著者たちは国防のエキスパートであり、これまでも日本政府特別代表としてアフガニスタンで仕事をしてきたりしていて、イデオロギー的に反米的、などという人たちではまったくないという点が本書の特徴です。
内容的な特徴は、ドイツ、イタリア、韓国、フィリピン、イラクなどがアメリカと結んでいる地位協定の中身や運用状況が詳細に述べられていることです。
本書を読むと、対米関係において日本は世界一、特別な国であることを痛感させられます。右寄りのナショナリストたちがなぜ無関心でいられるのか、不思議でもあります。終章の「日米地位協定改定案」も貴重でたいへん参考になりました。
◎田中志子 『ふるさとの笑顔が、咲き始める場所』(幻冬舎、1650円)
書名からはちょっとわかりにくいですが、病院を中核とする地域包括ケアシステムの構築に取り組んでいる著者による半生記です。
これからのまちづくりの拠点はスーパーでも行政機関でもなく、医療、介護、福祉を一体化させたサービス体制だという強い問題意識をもって、多くの難題を乗り越えていく有様が描かれます。
高齢者から子どもたちまで、多様な「需要」に応えていく体制を作り上げるのは並大抵のことでなかったようです。舞台の群馬県沼田市は人口5万、変哲のない地方都市ですが、ふるさとを思う住民の気持ちが一体となったとき、夢はかなうのだということが実感として伝わってきました。
もちろん夢を実現するためには、病院側も自らを厳しく律しなければなりません。身体拘束という患者の人格を無視したルールを打破していったのはその一例ですが、わが街にもこんなケアシステムがほしいと思わずにはいられませんでした。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(150)-改正食料・農業・農村基本法(36)-2025年7月12日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(67)【防除学習帖】第306回2025年7月12日
-
農薬の正しい使い方(40)【今さら聞けない営農情報】第306回2025年7月12日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 茨城県2025年7月11日
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 新潟県2025年7月11日
-
【注意報】果樹に大型カメムシ類 果実被害多発のおそれ 北海道2025年7月11日
-
【注意報】果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 福島県2025年7月11日
-
【注意報】おうとう褐色せん孔病 県下全域で多発のおそれ 山形県2025年7月11日
-
【第46回農協人文化賞】出会いの大切さ確信 共済事業部門・全国共済農協連静岡県本部会長 鈴木政成氏2025年7月11日
-
【第46回農協人文化賞】農協運動 LAが原点 共済事業部門・千葉県・山武郡市農協常務 鈴木憲氏2025年7月11日
-
政府備蓄米 全農の出荷済数量 80%2025年7月11日
-
【'25新組合長に聞く】JA加賀(石川) 道田肇氏(6/21就任) ふるさとの食と農を守る2025年7月11日
-
【'25新組合長に聞く】JA新みやぎ(宮城) 小野寺克己氏(6/27就任) 米価急落防ぐのは国の責任2025年7月11日
-
(443)矛盾撞着:ローカル食材のグローバル・ブランディング【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月11日
-
【2025国際協同組合年】協同組合の父 賀川豊彦とSDGs 連続シンポ第4回第二部2025年7月11日
-
米で5年間の事前契約を導入したJA常総ひかり 令和7年産米の10%強、集荷も前年比10%増に JA全農が視察会2025年7月11日
-
旬の味求め メロン直売所大盛況 JA鶴岡2025年7月11日
-
腐植酸苦土肥料「アヅミン」、JAタウンで家庭菜園向け小袋サイズを販売開始 デンカ2025年7月11日
-
農業・漁業の人手不足解消へ 夏休み「一次産業 おてつたび特集」開始2025年7月11日
-
政府備蓄米 全国のホームセンター「ムサシ」「ビバホーム」で12日から販売開始2025年7月11日