若者棄民【森島 賢・正義派の農政論】2022年1月24日
尾身 茂氏(政府諮問委の分科会長)たち21人の、いわゆる専門家が、先週、若者に対するPCRなどコロナの検査は行わないことを原則にする提言案をまとめた(朝日など)。その内容をみると、若者が感染を心配して、検査をしてもらおうとしても、だめだという。自宅で療養せよ、という。
提言は、その後、若干の修正をした(全文はWeb東奥)。だが、考えを変えた、というわけではない。
これは、政府が決めた、無症状者と軽症者は入院させない、とする基本方針に続く棄民政策である。そうそれば、コロナ禍を実際よりも小さく見せられる。政府に対する攻撃を弱められる。だから、政府にとって好都合である。彼らは、それを忖度したのではないか。
だがその結果、犠牲になるのは若者である。これは若者を対象にした究極の棄民政策である。
こうした考えに対して、若者は黙っているのか。若者は惰眠を貪っているのか。
これでは、コロナどころでなく、日本の社会は暗黒に覆われるだろう。その末に日本は破局を迎えるだろう。
暗黒の中に燈火を灯すのは誰か。破局の到来を阻み、未来を切り拓くのは誰か。
それは、若者である。そして、まっとうな若い政治家である。
上の図は、各国の最近の新規感染者数の動向である。日本をみると、感染爆発の勢いに止まる気配はない。韓国を引き離し、やがて、ドイツに追いつき、欧米並みの勢いになろうとしている。日本に特有な、いわゆるファクターXは、いったい何だったのか。
感染状況を知り、科学的な対策を政府に進言するうえで、最も基本になるこの図だが、彼らは、この図を人為的に改竄しようとしている。
◇
もしも、若者の検査を制限すれば、どうなるか。
実際には感染しているが、感染者数に数えられなくなる。その結果、公表される感染者数は、実際の感染者数よりも、その分だけ少なくなる。上の図の日本の状態を示す線は、下へ下がる。
そして、彼らの今後の提言は、事実に基づかない非科学的な提言になる。
◇
そうなれば、犠牲になるのは若者である。若者は、自分が感染しているかどうか、分からなくなってしまう。治療が必要かどうか、も分からなくなる。
自費で検査すればいい、という人がいるだろう。だが、若者にも貧富の差がある。検査費用を捻出できない若者は、検査を断念するしかない。
こうした医療における貧富の差をなくす、という正義の考えは、どうなるのか。
◇
犠牲になるのは若者本人だけではない。彼らは、自分の感染に気付かぬまま、家族や職場の仲間に感染させてしまう。その人たちも犠牲になる。
以前からの、無症状者と軽症者は入院させない、という基本方針によって、いまや家庭内感染者が新規感染者の最大の割合になっている。
つまり、感染者が市中に放置されることで、市中の感染源になり、感染爆発をさらに勢いづかせている。
◇
いまのオミクロン株は、感染力が強い。また、感染者には無症状者が多い。だから、周囲の人は知らぬ間に感染してしまう。だから、急速に、かつ執拗に感染を拡大している。これは、進化の必然である。
それに加えて、後遺症については、何も分かっていない。
それゆえ、早期検査による早期発見と早期隔離と早期治療が鉄則である。無検査や自宅療養などは論外である。
◇
では、どうすればいいか。
政府は、この棄民政策の提言を、明確に否定しなければならない。
そうして、政治の責任で、医療体制を抜本的に拡充するしなかい。ことに、ワクチンと治療薬の供給が遅れているいま、全力を傾けて供給量を増やさねばならない。
そして、それを待っているだけではだめだ。検査と隔離と治療の体制を、危機に即したものに再編するしかない。
それでも不充分だろう。そうなったばあいは、政治が自身の努力不足と無能を反省し、国民に対して、全員で苦難を分かち合うことをお願いするしかない。
(2022.01.24)
(前回 棄民政策へ走るコロナ対策)
(前々回 コロナの感染爆発で見せた政府の狼狽)
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