コロナの感染爆発で見せた政府の狼狽【森島 賢・正義派の農政論】2022年1月11日
いよいよ日本でも、コロナの感染爆発が始まった。日本のばあい、他国で類例を見ないほどの激しい爆発である。先週の新規感染者数をみると、先々週の約10倍、という激しさである。
政府は、これに対して、軽症者と無症状者は、自宅療養を原則にする、といいだした。
これまでは、ホテルなどで隔離していたが、これからは隔離しないで、市中に放置する、というのである。
これは、市中感染をさらに拡大するもので、感染爆発に火を注ぐことになる。政府の狼狽ぶりは目を覆うばかりである。
何故、こんな無様なことになったのか。政府は、医療が逼迫するからだ、という。
しかしそれは、政府がいうべきことではない。逼迫するなら、隔離施設を大量に作り、医師や看護師などに協力を求めればいいのだ。隔離は、感染症対策の第一原則である。
それは、政府の責任である。だが、政府は狼狽するばかりで、その責任を放棄している。
上の図は、主要国の人口100万人あたりの日々の新規感染者数である。曜日による変動があるので、直前の7日間の平均を示している。縦は対数目盛りにしている。だから、1目盛り上がると10倍に増える、という目盛りである。
◇
上の図の中にある日本の場合を考えよう。
日本は、これまで少ない水準を保ってきた。だが、12月初めを底にして急激に増えてきた。先々週末の1月1日の、新規感染者数の7日移動平均は100万人あたり2.73人だったが、先週末の8日には26.59人に増えた。約10倍である。世界に類例を見ないほどの、すさまじい爆発である。
この勢いが今後も続けば、あと数日で欧米の悲惨な水準にまで増えるだろう。
このことを、どう考えるか。
◇
政府の関心事は、医療の逼迫にしかない。感染者の苦痛は、その次の関心事である。
多くの、政府寄りの、いわゆる専門家も同様である。
彼らは、それに加え、あやふやな根拠に基づいて、こんどのオミクロン株の弱毒性を強調する。つまり、感染しても重症にならない、と強調する。弱毒化は、感染症の歴史のなかでの経験則のようだ。
彼らは、この不確かな根拠に基づいて、軽症者や無症状者を、自宅内に放置しておいていいという。
◇
だが、そうすれば、こんどのオミクロン株は感染力が強いから、またたく間に家族全員に感染するだろう。そのことに目をつむって、彼らは自宅療養を容認している。
これは、政府にとって、まことに好都合な主張である。
そして、この主張を、政府寄りのマスコミが宣伝している。まさに、政治問題にしている。国民の生命を賭けた政治問題にしている。
◇
さらに、彼らはいう。
新規感染者の数に一喜一憂するのは無意味で、重症者の数に関心を向けるべきだ、という。つまり、オミクロン株の感染力の強さを見ようとしないし、市中感染による感染爆発を見ようとしない。そして、感染爆発を激化し、それによる感染者の苦悩の深刻化を見ようとしない。まさに、反国民的である。
では、どうすればいいか。
◇
いま、政治が行うべきことは、感染症対策の第一原則に従った、検査の徹底による感染者の早期発見と、隔離の励行である。そのための体制の拡充である。
そして、いますぐに行うべきことは、隔離施設の大量の供給と、ワクチンと治療薬の充分な供給である。
隔離施設は、それほど立派なホテルでなくても止むを得ない。ワクチンと治療薬は、国産を怠ってきた報いだから、他国から嘲笑されるだろうが、恥を忍び、頭を下げて提供してもらうしかない。政治が、それに全力を尽くすことである。
(2022.01.11)
(前回 コロナのファクターXは共同体規制だ)
(前々回 「新しい資本主義」の大局と小局)
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