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コロナのファクターXは共同体規制だ【森島 賢・正義派の農政論】2022年1月4日

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コロナ禍の脅威の真っただ中で、新年を迎えた。懸念された激しい感染爆発は、何とか抑えられているようだ。だが、とうてい安心できる状況ではない。世界の多くの国が、連日、最多記録を更新する爆発的な状況にあるなかで、なぜ日本だけが抑えられているのか。その原因が分かっていないからである。

この分からぬ原因を、専門家は未知のファクターXといっている。いったい、ファクターXは何か。感染が始まってから2年も経つが、専門家は未知のままでいる。

それは、コロナの生物的、つまり自然の原因か。それとも、適切な対応という社会的な原因か。

世界各国のコロナによる死亡者数

上の図は、世界各国の、先週末までのコロナによる死亡者数を、人口100万人あたりでみたものである。たしかに日本は少ない。

以前は、東アジア人の人種的な原因で、コロナ禍が軽微になっている、という有力な説があった。だが、最近の韓国などでの爆発的な感染拡大が、この説の反証になった。つまり、ファクターXは、人種という人間の、人間社会のなかで、いわば自然化した性質によるものではない。

では何が原因か。

はじめに、ファクターXが自然的なものでないことをいっておこう。日本で蔓延したコロナも、他国で蔓延したコロナも、同じコロナである。日本のコロナだけが、穏便なコロナというわけではない。つまり、コロナの自然的な性質に起因するものではない。

それゆえ、ファクターXは自然のなかではなく、社会のなかにあることになる。

では、社会のなかの、どこにあるか。

政府の対策が、適切だったからか。そうではない。それどころか、無為無策に近い。コロナを軽視し、ウィズコロナなどといって、経済活動の再開を優先してきた。

つまり、これまで政府は、コロナの感染を阻止するための、科学に基づく対策を行ってこなかった。2年も経つのに国産ワクチンを、未だに開発していない。だから、いま早急に接種すべきワクチンが不足している。

一方で、検査、隔離、治療の体制は、利権にまみれているようで、不十分にしか機能していない。

その上で、国民の社会活動、経済活動に対して、思い付きとしか思えない規制をしているが、それに伴う補償も、全く不十分である。

このように、爆発的な感染拡大が抑えられている原因は、政府が作ったものではない。

そうではなくて、国民の自発的な行動規制が適切だったからである。コロナを蔓延させるような行動に対する自発的な規制が、適切だったからである。それは、共同体をコロナ禍から守るための、共同体規制だった。

共同体規制というと、村八分や自粛警察を連想する人がいるかもしれない。だが、それは負の側面だけを強調するものである。

そうではなくて、共同体規制は、本来、共同体を構成する全ての人たちを守ることを、最高の目的にしている。そのために、妨害する行為を、全員が力を合わせて阻止するための自衛の規制である。

コロナのばあい、共同体規制は、コロナを蔓延させるような行動について、共同体の構成員が全員で議論し、全員が納得した上で民主的に、互いに規制しあうものである。ファクターXは、この規制を指すだろう。

そして、重要なことを付け加えれば、この規制がコロナ後の社会の規範になるだろう。

そして、いうまでもないことだが、こうした規制は、農協など協同組合が本来もっているものである。

新年にあたって、政府が求められることは。コロナ対策が、こうした共同体規制に依存し過ぎてはいないか、という反省である。そして、共同体規制を援護する対策を軽視していないか、という反省である。

そうした反省の上に立って、政府がコロナ対策の権限を地方自治体へ大幅に譲り、必要な財源を充分に地方自治体へ移譲することである。

そうすれば、地方自治体を最高司令部にした共同体のなかで、農協などの協同組合は、これまで蓄積した智恵をしぼり、中心的な役割を果たすだろう。

地方に起点をもつ共同体の体制の構築と強化が、新年のコロナ対策と、新年中に到来すると思われるコロナ後の社会の、最重要な課題である。

(2022.01.04)

(前回  「新しい資本主義」の大局と小局

(前々回 来年は参院選だ

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