棄民政策へ走るコロナ対策【森島 賢・正義派の農政論】2022年1月17日
コロナが猖獗を極めている。日本もその渦中に巻き込まれた。日本は、世界の各国の中で類例をみないほど急激に、感染が拡大している。
政府はこれを見て、コロナ対策の根本原則を変更した。感染しても、無症状と軽症の感染者は、自宅で療養させることにした。つまり、感染者を市中に放置するというのである。そうして、感染者の全員を隔離して治療し、感染拡大を阻止する、という根本原則を放棄した。
これは、まさしく恥知らずな棄民である。感染者の棄民だけでなく、感染者を市中に放置して、感染源にすることで、国民の全体をコロナに曝す、という点で、国民全体の棄民である。
政府には、「いちじくの葉」の一葉さえもない。
上の図は、コロナの世界各国の感染状況である。昨年11月1日から先週末までの日ごとの新規感染者数を、主要国について見たものである。それを人口100万人あたりにした。そこには曜日による変動があるので7日間平均でみた。
縦の目盛りは、対数目盛にしているので、1目盛り上がることは、新規感染者が10倍になることを意味している。
◇
この図から分かることは、日本は正月明け以後、感染者が急激に増えていることである。正月明け以後、点が飛び跳ねて上がっていることは、それだけ急激に増えたことを表している。こんな増え方は、他国に例がない。
そして感染拡大の早さは、いまは韓国を追い抜き、南アフリカも抜いて、爆発的な感染速度になった。
これは、日本のコロナ対策の、世界に恥ずべき失敗である。
◇
もしも、この状況を続ければ、感染速度は、ますます加速し、フランスやアメリカのようになるだろう。
フランスでは、感染した医師が患者を診ているという。未感染の医師だけでは、患者を診きれなくなったからだ。
また、アメリカでは、地下鉄を止めたという。多数の運転手が感染したからだ。
日本も、適切な対策を講じなければ、アメリカやフランスのようになるかもしれない。そして、やがて社会が全面崩壊する日がくるかもしれない。
日本はいま、その瀬戸際に立っている。
◇
日本には、それでも危機感がない。
いわゆる専門家は、軽症と無症状の感染者は無視せよ、と主張している。重症と中等症の感染者だけを見ていればいい、という。つまり、上の感染爆発の図は無視せよ、という。
これは、軽症と無症状の感染者の自宅療養という、政府の基本原則に、口うらを合わせたものである。
そしてこれは、軽症と無症状の感染者が、重症と中等症の感染者の感染源になっていることを無視する、という点で非科学的である。
そして、軽症と無症状の感染者を無視する、という点で非人間的であり、反国民的である。
彼らには、この点の自覚がない。したがって、反省もない。
◇
最後に、ワクチンについて言っておこう。筆者は、この分野の専門家ではないが、明らかなことがいくつかある。
いま、日本ではワクチンの供給が決定的に遅れている。ワクチンがない状況で対処している。
3回目の接種を行った人は111万人で人口の0.88%に過ぎない(1月13日現在、日経)。国産のワクチンが皆無だからである。だから、誇りを捨て、恥を捨てて、外国に懇願し、供給してもらうしかない。
◇
その上、いまのワクチンはオミクロン株に対して、その効力は充分ではない。オミクロン株は、これまでの株と全く違っていて、新々型コロナというべきものだ、という専門家もいる。だから、新しいワクチンを作るべきだ、という。
ファイザー社は、この考えのもとで、新しいワクチンを開発している。同社の最高責任者は、昨年の11月26日に「6週間以内に開発して、100日以内に出荷可能」と豪語している。100日といえば、来月の24日である。
これと比べて、日本はどうか。
日本には、新しいワクチンを開発する計画さえない。政府が科学を軽視しているからである。その上で、旧いワクチンの、外国からの調達に汲々としている。
政治の覚醒を期待したい。
(2022.01.17)
(前回 コロナの感染爆発で見せた政府の狼狽)
(前々回 コロナのファクターXは共同体規制だ)
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