(267)回復しつつある中国の豚肉生産だが...【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2022年1月28日
アフリカ豚熱(ASF)の影響で大きく落ち込んでいた中国の豚肉生産量が着実に回復してきています。もちろん国土が広いため地域により状況は異なるでしょうが、マクロで見ると、確実に変化しています

米国農務省が2022年1月22日に公表した数字を見ると、中国の畜産、とくに豚肉をめぐる状況が急速に「改善」していることがわかる。ここで「改善」と強調したのはもちろん単純に喜べないからである。まずは数字を見てみよう。
2018年の数字を見ると豚肉は生産量5,404万トン、消費量5,530万トンでわずかな不足分を多少の輸入と在庫で補っていたことがわかる。そして2018年8月以降はアフリカ豚熱の拡大により、豚肉生産量は激減する。
生産量は2020年には2018年対比で▲1,770万トン(▲33%)まで落ち込んでいる。もちろん同時期には消費量も▲1,377万(▲25%)落ち込んだが、生産量の落ち込みほどではない。これを反映する形で、2018年には146万トンの輸入量が2020年には528万トンまで激増(362%)する。
簡単に言えば、ここ数年の中国の国内豚肉の基礎的な需要は約5,500万トンであり、全てはこの数字をどこから調達するか...にかかっていたということになる。
2021年になるとアフリカ豚熱の影響はそれなりに収まり、生産量も4,600万トンまで回復した。需要量が4,810万トンのため、多少の在庫を抱えるとしても国際市場から約500万トンの豚肉を輸入すれば、バランスが成立する...という形を示し始めている。
さて、2022年の需給見通しだが、昨年10月時点では生産量4,375万トン、消費量4,841万トンと依然として単年度ベースでは500万トン弱の不足が見られていた。そして、最新の見通し(2022年1月22日)では、生産量が4,950万トンと昨年10月より575万トン増加している。この理由は、アフリカ豚熱により比較的生産性の低い母豚が大量に淘汰され、養豚が生産性の高い品種に急速にシフトしているとの見方がなされている。(同時期の飼養頭数を見ると、2018年の4.4億頭が、2020年には3.1億頭まで減少したが、2022年には4.1億頭まで回復見込みである。)
豚肉消費量はさらに伸びが大きい。2020年には4,152万トンまで落ち込んだが、2022年の見通しは前回の4,841万トンから519万トン増の5,360万トンであり、これは過去5年間では2018年に次ぐ大きな数字である。何だかんだ言ってもやはり豚肉を我慢することが難しいことの表れでもある。
以上からわかる良い点は、生産量・消費量ともに着実に回復し、2022年にはアフリカ豚熱発生以前状態にほぼ回復するであろうことである。また、生産量が回復したため、国際市場における中国の豚肉輸入も昨年10月時点の475万トンから今回は420万トンへと減少している。日本を初め各国が豚肉争奪に動く可能性は低下したということになる。国際市場で取引される豚肉は2022年には約1,150万トンであり、そのうち中国が420万トンと第1位であり、日本(145万トン)、メキシコ(118万トン)、韓国(62万トン)が続く。豚肉輸入国にとっては中国の豚肉輸入数量の減少はとりあえず有難いことになる。
これに対し懸念は何か。それは再び年間豚肉消費量5,500万トンクラスの中国が復活してきたことであろう。中国は一頃の様な高度経済成長ではないものの、国家全体として見ればまだしばらくは成長の果実を十分に享受する状態が継続する可能性が高い。
日本に当てはめれば高度成長が1960年代とすれば、その後の1970-80年代に相当する。国家のライフサイクルのような視点で見た場合、今後、10年以上にわたり中国の食肉需要は一時的に下がることはあっても現状プラスアルファの基調を継続していく可能性が高いのではないだろうか。
さて、65歳以上の高齢者が人口の14%を超えると「高齢社会」となるが、2020年の中国は13.5%であったようだ。今のところ「超高齢社会」(65歳以上が人口の21%)に入るのは2035年頃と予想されている。日本は1995年に「高齢社会」、2010年に「超高齢社会」、そして2019年時点では65歳人口が28.4%に達しているが、周りを見渡すと食肉消費は依然として旺盛である。中国が一世代後にこの10倍の規模で同じ道を動いていると考えれば今後の食肉需要も何となくわかるというものではないだろうか
* *
「高齢化社会」「高齢社会」「超高齢社会」、7%、14%、21%、英語では、aging society, aged society, そしてsuper-aged societyと言います。さて、その次は...。
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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】
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