長良川流域文化の資源を活用 世代継承できる地域づくりに学ぶ【JA全中教育部・ミライ共創プロジェクト】(2)2025年10月29日
JA全中・教育部は10月15、16日、岐阜県で「ミライ共創プロジェクト」の第2セッションを開いた。岐阜市の長良川流域で、伝統的な文化や産業の再生を通じて地域の活性化に取り組む、NPO法人ORGAN(オルガン、蒲勇介理事長)の取り組みを視察した。
和傘の骨師の前田健吾さん
和傘の骨師(職人)「傘骨屋」の前田健吾氏
オルガンの活動の一環で、長良川流域で岐阜和傘の伝統を受け継ぐ骨師の前田健吾氏は、5年前に自動車メーカー「マツダ」のエンジニアから転身した。かつて年間約1500万本を生産した和傘は現在、全国でも数千本規模にまで減少し、「絶滅危惧種」とも言われる。前田氏は「落ちるところまで落ちたからこそ、あとは上がるだけ」と語り、復興を進めている。
テレビで見た一本の和傘に心を打たれた。後継者を募る工房を訪ね、家族の反対を押し切って単身移住。需要や生産体制を数字で分析し、「伝統にこそビジネスの可能性がある」と確信した。弟子入りして3年後に独立し、現在は地域の就労支援施設とも連携して骨揃え作業などを委託し、地域ぐるみで生産体制を築いている。
和傘は、傘の部位ごとに骨師、ろくろ師、紙貼り職人、仕上げ職人など複数の専門職人が分業で支える。骨師は岐阜産の竹を割り、元の順に揃え直す。閉じたときに一本の竹のように見える「閉じ姿の美」を生み出す。岐阜和傘は「全国でも特に細く繊細な姿」が特徴で、閉じた姿の美しさにこだわる。
雨傘には油を引いた和紙を使い、雨音や香りが心を和ませる。日傘は光を透かすと紙の繊維が浮かび上がり、木漏れ日のような模様を映す。前田氏は「和傘は五感で感じる道具」と語り、使い込むほど味わいが増す"育てる傘"として魅力を伝える。
ビニール傘の普及で産業は衰退したが、歌舞伎やお祭り、結婚式などで今も根強い需要がある。近年は洋服にも合うデザインが登場し、再び注目されている。「和傘は多くの職人の技と心が一本に宿るもの。私たちはその思いを未来へつなぐ橋渡しでありたい」と前田氏。職人たちの共創によって、かつての岐阜和傘の灯が再び輝き始めている。
農業と地域活性化でチーム編成
参加者同士で議論
16日は、うかいミュージアムあずまやを会場に、前日の蒲理事長の取り組みについて参加者同士で振り返りを行った。
参加者からは、「高付加価値をもたらすためのストーリーと価格設定が肝心なので、儲かる仕組みづくりとリピーターの確保」や「長期的な視野で取り組めるようなビジョン」の必要性、「何のためにやるかの言語化、困りごとの可視化が必要」「JAも様々な体験型のイベントをやっているが、担当者が変わると内容も変わり先細りになってしまう」「JAとして何故やるかの言語化がされていない」「食と体験を通じて新しい発見をするためには、多様な人材を集める必要がある」などの意見が出され、自身のJAでどのように取り組むかを今後の課題とした。
その後、参加者が解決したい地域・社会課題のテーマを持ち寄り、チーム編成を行った結果、農業1チーム、地域活性化2チームで検討することとなり、誰のどのような困りごとを解決するのかを考え、次回の第3セッションで発表することとした。
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