長良川流域文化の資源を活用 世代継承できる地域づくりに学ぶ【JA全中教育部・ミライ共創プロジェクト】(1)2025年10月29日
JA全中・教育部は10月15、16日、岐阜県で「ミライ共創プロジェクト」の第2セッションを開いた。岐阜市の長良川流域で、伝統的な文化や産業の再生を通じて地域の活性化に取り組む、NPO法人ORGAN(オルガン、蒲勇介理事長)の取り組みを視察した。
取り組みを紹介する、NPO法人ORGANの蒲勇介理事長
15日は、蒲理事長が「眠っている地域資源を磨き上げ活用する長良川流域の地域づくり」をテーマに経験を紹介した。
地域のなかにある課題を見出す
蒲理事長は1979年、岐阜県郡上市で生まれ、岐阜市で育った。「大学時代にグラフィックの仕事を得たことをきっかけに起業して以来、活動を続けている」。就職氷河期世代の同世代が岐阜に集まり、まちづくりNPOを立ち上げ、現在はNPO法人ORGANを創設して15年を迎え、長良川流域で文化や観光、人材育成を軸に地域再生を進めている。
創業当時、若者は「岐阜には何もない」と言い、名古屋や東京へ流出。「岐阜の誇りである地域文化の魅力を伝えられていないことが最大の課題」と、地域のなかに課題を見出した。活動を重ね、「長良川流域文化を未来に継承する」という明確な目標にたどり着いたと振り返る。
古い町並みが残る長良川流域
転機は「水うちわ」との出会い
転機は、岐阜で出会った半透明の「水うちわ」との出会い。地元でもあまり知られておらず、職人もわずか。美濃和紙に撥水ニスを施した伝統工芸で、長良川の船遊びから生まれた。魅力ある商品だが「原料や技法が失われ、復活プロジェクトを実施した」。希少な美濃和紙や竹骨を再現し、物語を発信した結果、「職人が生計を立てられる価格で販売できる」ようになり、文化の再生につながった。
この体験から、「地域の伝統に新しいデザインやストーリーを加え、付加価値を生み出すことの重要性」を得た。美濃和紙が川を下り、長良川の港町で提灯やうちわに姿を変えたように、長良川は文化を運ぶ「流域のベルトコンベヤー」となっている。「そのつながりを可視化し、次代へ継承することが使命」と考えた。
10万円を超える価格でも売れる和傘
価値を伝え正当な価格で売る
長良川流域の魅力再発見に向け、2011年から10年間にわたり「長良川おんぱく」を開催。工芸、農業、漁業、飲食など「多様な担い手が小さな体験を提供」した。1500件を超えるプログラムを通じて見えたのは、「高価格でも満足度が高く、リピーターが生まれる」ということ。ここから、地方の生き残りは「本物の価値を伝え、正当な価格で売ること」にあると確信した。
和傘塾で後継者を育成
そのため、販売拠点「長良川デパート」を作り、和傘や工芸品を販売。海外からの観光客などには「10万円以上の和傘も売れるようになった」。一方で、和傘の骨や「ろくろ」(骨と開閉部を束ねる部品)の職人が全国で数人しかいないという危機も明らかになった。そこで、職人の工房と店舗を併設した「長良川手しごと町家CASA」を設立。後継者育成に向けた和傘塾の開講を、クラウドファンディングによる資金調達で準備している。
利益を地域の人づくりに還元
花柳界の担い手不足にも向き合い、「一口旦那」制度を創設し、鵜匠と舟遊びを結び付けた宴文化への入り口を開いた。後継者育成のため「岐阜技芸学院」も設立し、高校生の舞妓見習いも受け入れている。こうした「非営利の育成活動と、小売り・体験・旅行などの営利事業を両輪に、持続可能な文化継承」を目指している。
近年は海外の起業家や学生を受け入れ、地域文化とビジネスを学ぶプログラムを展開している。滞在型の高付加価値体験を通じて得た収益を、「職人や後継者育成に再投資し、地域内で経済を循環させる仕組み」を構築している。
美濃和紙の提灯がインテリアに
「守るだけでは継承できない。価格に物語と手間を正しく反映し、ファンをつくり、得た利益を人づくりへ還元する。ミクロの実践がマクロを動かす。長良川の流れのように、上流から下流までをつなぎながら、地域の文化を未来へつないでいく」と、蒲理事長の思いが地域を変えつつある。
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