事実と科学を無視するコロナ対策【森島 賢・正義派の農政論】2022年1月31日
いま日本に、コロナ感染者が何人いるか、誰も分かっていない。それほど精度が良くなくてもいい。数十万人なのか、数百万人なのか。それさえも分かっていない。そうした五里霧中のもとで、右往左往しながら思い付きの対策を行っている。
なぜそうなったのか。
政府にとって、好都合だからである。それゆえ、必要な検査を充分に行わない。だから、感染者が何人いるか分からない。
隠された感染者は、市中に大勢いて、感染源になって感染を拡大している。ことに、こんどのオミクロン株は無症状の感染者が多いから、なおさら隠された感染者を見つけにくい。検査は必須である。そして、実際の感染者数を知ることは重要である。
実際の感染者数を知らなければ、事実に基づく科学的な対策は立てられない。目先の、行き当たりばったりの対策しか立てられない。犠牲になるのは、国民、ことに弱者である。

上の図は、日本の検査数と新規感染者数の推移である。
ここから分かることは、もともと検査数が少ないのだが、感染が拡大しても検査数を増やしていないことである。
第5波のピーク時と比べると、いま、新規感染者は3倍ちかく増えているのに、検査数は約1.5倍しか増やしていない。
また、この図から分かることだが、最近では、検査すると、そのうちの約30%の人が陽性者になっている。これは異常な多さである。
このことは、検査数の決定的な少なさを表している。感染者数は、感染対策を立てるときのの最も基本的なデータである。これが分かっていない。
最近では、検査をしないで陽性と判定する「みなし陽性」という言葉を作りだした。科学立国が聞いて呆れるだろう。世界中から嘲笑されるだろう。
◇
いま死活的に必要なことは、検査数を増やすことである。そして、感染者数を正確に把握することである。
疫学や感染症学のような応用科学にとって、最も重要なことは、事実の正確な把握だろう。だが、それが行われていない。
そうしたなかで、どんな精緻な論理を展開しても、それは砂上の楼閣にすぎない。
いまのコロナ対策も、したがって砂上の楼閣になってしまう。真の科学を無視した対策になってしまう。
政治家は、科学を無視して国民にコロナ禍の苦難を押し付けている。
◇
なぜ、こんなことになってしまったのか。それは日本の政治機構の問題である。
ここには、官僚制の弊害がある。検査の権限を厚労省が握っていて離そうとしない。検査体制を平時のままにしておいて、非常時体制に変えようとしない。そうして検査数の不足を人質にして予算を増やし、増やした分を厚労省が独り占めしたい。そのためには、国民のコロナ禍による苦悩を見ようとしない。
このような非民主的な官僚制を糺すのは、政府の役割りである。だが、政府はそれをしていない。そのほうが、政府にとって好都合だからである。
検査体制を、平常時のままにしておいて拡充しなければ、公認する感染者の数を実際の感染者の数より少なく見せることができる。そうすれば、政府の対策が成功しているように見せることができる。そして、感染者を隔離し、治療する体制を拡充しなくてすむ。
◇
この体制は、コロナが発生した当初から続いているし、2年も経ったいまも変わらない。
これは政府にとっては好都合だろうが、国民にとっては不都合である。
だから、問題はこの体制を再編することである。
しかし、官僚は強力である。また、政治家は、そこに切り込もうとする気骨もないし、腕力もない。そうして、中央集権的官僚制の無責任に、もたれかかってている。そうして、地方自治体に責任を押し付けようとしている。地方自治体には気骨も腕力もある人がいるが、権限もないし、財源もない。
◇
コロナ禍を契機にして、日本の政治機構は糺さねばならない。
その方向は、旧来の官僚制の解体と、民主的再編である。それは、中央集権制では不可能だろう。東京は、国民から、あまりにも遠い。民主的統制が効きにくい。
だから、地方自治体に大幅な権限と財源と官僚を移譲し、官僚を民主的に制御できる強力な政治機構が、地方に割拠すればいい。
こうした国家は、協同組合国家に、近い親和性を持つものになるだろう。
(2022.01.31)
(前回 若者棄民)
(前々回 棄民政策へ走るコロナ対策)
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