【浅野純次・読書の楽しみ】第71回2022年2月25日
◎下川哲『食べる経済学』(大和書房、1870円)
農業経済学は農業関係者にとっては大事な学問分野ですが、農業から川中、川下へ、かつ地球大へと視野を広げてみようというのが本書の狙いです。確かに農業の大半が食としてその役割を全うするのですから、川上から川下まで統合する視点は欠かせません。
で、その構成ですが、社会をつなぐ食料市場の分析から市場の限界を探り、「食べる」ことから生じる社会問題としての市場の効率性や失敗の問題、食料不足やゲノム編集から持続可能な食生活まで、盛りだくさんのテーマが論じられます。
というと何やら小難しそうな本という印象をもたれそうですが、内容はあくまで具体的なので、難解ということはありません。
とくに面白く感じたのは食品の廃棄から生じるロスをどう考え対応するかの視点で、ここでは人間の性向が重要な論点になり、大いに刺激的でした。
それと牛などのゲップがメタンを大量に含むことから生じる温室効果にどう対応すべきかも、重要なテーマとして詳細に論じられます。EATランセット委員会の報告では、SDGsのためには世界の牛肉消費を6割減らすことが求められるそうで、大いに考えさせられました。農業を「広く」考える格好のきっかけになる本です。
◎清沢洌著、丹羽宇一郎編『現代語訳暗黒日記』(東洋経済新報社、2200円)
清沢洌といえば戦前戦中に活躍した外交評論家ですが、非常なリベラリストだったために軍部との折り合いは極めて悪く、戦中はほとんど活躍の場がなくなってしまいました。
その代わりと言ってはなんですが、日記を残して、今なお私たちに、このようにして国家と国民が戦争に引き込まれていくのだということを見事に伝えてくれています。
本書は古い文体や漢字、仮名遣いを現代語に変えて読みやすくした上で、多くの人名や事項について脚注を加え、原文を大幅に取捨圧縮して解説を加えています。これを入り口として、全文収録の評論社版へ進めれば何よりかと思います。
さて肝心の内容ですが、何よりも戦争へひた走り国土を焦土化する軍部、そのお先棒を担いだ新聞、狭隘なナショナリズムに酔った国民、それぞれへの痛烈な批判が展開されます。国民も単なる被害者でなかったのです。しかし一方で、個が確立していればこれほど冷静な目を持ちえたことも知って、深く感動させられます。
◎斎藤茂太著、柏耕一編『折れない心をつくるいい言葉』(さくら舎、1650円)
斎藤茂太さんの生前、ゴーストライターとして20余冊の本を制作した編者が、世界の名言に茂太さんだったらどういうコメントを加えるだろうと考え、たくさんのメモの中から名言それぞれにピタリはまる発言を掘り起こし、はめ込んで制作したのが本書です。
「解決策がわからないのではない。問題がわかっていないのだ」(チェスタトン)にはこんなコメントが。「子どもに問題があると訴える母親がいる。だが逆(親こそ問題)ではないか。得てして問題解決のカギは自分自身の中にある」。なあるほど。
「飛行機は向かい風によって飛び立つのだ」(ヘンリー・フォード)には、「逆風が吹けば反発心が燃え上がる。『なにくそ』が肝心だ」。ほんとに。
私が好きな名言はガンディーのこれ。「この7つが私たちを破壊する。労働なき富。理念なき政治。道徳なきビジネス」(あと4つは残念ですが省略)。名言に、自分でコメントしてみるのも大事です。
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