宮澤賢治の1日4合の玄米食は完全食【熊野孝文・米マーケット情報】2022年4月19日
4月13日から15日にかけて東京ビッグサイトで開催された「お米末来展」。コメを原料にしたチーズや機能性に優れた玄米加工商品、完成度が高い米粉商品、さらには市販用の冷凍しゃり玉などコメの需要増大に寄与しそうな商品が会場で多数紹介された中、コメ関連の12の特別セミナーが開催された。セミナーに登壇したメディカルライス協会の渡邊昌理事長は、同協会が開発した腎機能を保つ「低たんぱく質加工玄米」を紹介する中で、玄米の機能性について宮澤賢治の詩「雨ニモマケズ」に書かれている玄米食について「完全食」であると述べた。

宮澤賢治は詩の中で「1日に玄米4合と味噌と少しの野菜を食べ」と記している。1日4合は現在の人にとっては多すぎると感じている人もいると思われるが、一人当たりのコメの消費量の統計が調査公表されはじめた戦後でも今の倍の量を食べていたのだから賢治の時代では多すぎるとは言えない。玄米4合は600gで、これで2100カロリーのエネルギーを摂れ、現在の成人男性が必要とするエネルギーを賄える。
渡邊理事長は、講演で「玄米ごはんと味噌汁と少々の野菜」の炭水化物やたんぱく質、脂質のほか鉄、亜鉛、リン、マグネシウム、ビタミン類などを計測したグラフを示し「宮澤賢治の食事は完全食だ」と述べた。メディカルライス協会は、コメの生産から消費までを総合的に扱うため2019年に玄米の美味しさを探るため玄米食味コンテストを開催、あらゆる機能性成分を測定、2020年には、有機玄米の科学的定義を求めて稲の栽培における土壌菌・根圏菌・共生菌等の関係解明を進めるため農水省の知の集積事業に応募してコンソーシアムを立ち上げた。その過程でコメを食べる国はコロナが少ないことを発見、論文として公表した。2021年には有機玄米の栽培法を求めて全国10社の篤農家の協力を得て、水の微生物や腐食率の検査を行い収穫したコメとの相関を調べている。また、低タンパク加工玄米を製造してJASへ申請、腎不全患者の臨床研究も企画しており、その試作品を会場で来場者に試食提供した。
低タンパク加工玄米の特徴は、白米パックご飯とエネルギーは同じでもタンパク質は10分の1でカリウムもなく、リンも低いが食物繊維やガンマーオリザノールを豊富に含む。これによって高カリウム血症、高リン血症を予防でき、腸内細菌や短鎖脂肪酸を正常に戻し、腸腎連関を正すことで腎機能を保全できるとしている。
製造方法は、玄米食に適した愛媛県の新品種を原料米にして、玄米の表面処理をしたのち乳酸菌を使ってタンパクを除去して、炊飯、パッキングするという工程。特筆すべきはその美味しさで、これまでの低タンパクごはんは味がなく美味しいとは思えない代物であったが、低タンパク加工玄米はうま味もあり、食感も柔らかく食べやすい。腎臓病患者の感想として「他のメーカーで食べていた低タンパクの白米に比べると本当に美味しい」、「低たんぱく米はどうしてもコメの味わいが感じられにくいがこれは玄米特有の風味も感じられた」、「低タンパクで、しかも玄米の栄養素を得られる夢のような食材」、「我慢して食べるという感じがなく、美味しくタンパク質を抑えられるので嬉しい」などという声を紹介している。メディカルライス協会のブースでは低タンパク加工玄米を使った料理メニューを紹介、それぞれのメニューにエネルギーやタンパク質、脂質、食塩相当量の数値を記したパンフレットを配布した。
価格については、ワンパック当たり原料米代80円、タンパク除去費150円、販売経費80円合計で販売価格は330円。一般的な玄米パックご飯に比べて割高だが、腎臓病患者の透析には年間500万円かかっており、食事により患者の負担を軽減できれば高い商品とは言えない。さらにこの低タンパク加工玄米の取組は、有機米を使用して生産者の手取りを上げ、合せて環境保全に役立てるという狙いもあり、渡邊理事長はフェアトレードの考え方で1㎏1000円、1俵6万円で生産者から買い取ることを明らかにした。
その原料用米を選ぶための「第1回機能性食品玄米・品質食味値国際コンテスト」を開催することになり、その説明会が今年の5月27日と7月29日の2回、愛知県豊川市の豊川商工会議所で開催されることになった。
「人も国も食のうえに立つ」という言葉を引用、こうした取り組みにより①健康づくり②農業の発展維持③国土環境の保全と一石三鳥の効果が得られると述べ講演を締め括った。
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