(286)明治初期における医者の選抜と養成【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2022年6月17日
2021年度の大学進学率は54.9%(過去最高)です。今回は、明治の最初期における東京大学医学部の進級、これを見てみましょう。
時系列は以下のとおりだ。
慶応4(1868)年、新政府は江戸幕府の医学所を接収し医学校とした。明治2(1869)年2月、前年同時期に接収した昌平学校(儒学)、開成学校(洋学)とともに3校を統合し大学校を設置、12月に大学校を大学に改称した。
医学校は本校(昌平学校)の東にあり大学東校と改称、さらに明治4(1871)年7月には大学を廃止し東校とした。同年10月に予科3年(後に2年)、本科5年の課程とする。
明治5(1872)年、学制発布により東校は第一大学区医学校となり、明治7(1874)年4月に東京医学校となる。一方、明治10(1877)年4月に東京大学が設立される。これが明治18(1886)年3月、東京大学と工部大学校が統合され帝国大学となり、さらに明治30(1897)年に東京帝国大学となる。
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さて、環境や制度が大きく変化した時代、医学を志した若者はどう学んだのか。当時の明治政府は西洋医学を臨床で使える多数の医者を希望したはずだが、医学はそれほど簡単に習得できるものではない。これは見方を変えれば、現代のグローバル企業が「世界で使える」人材を大量に養成したいという気持ちにも通じるものがあるからだ。
詳細は別とし要点を記す。大前提として、そもそも日本に小学校が出来たのは明治6(1873)年からである。東京帝国大学卒業者名簿には明治9(1876)年卒から記載されているが、彼らは前身の東京医学校の卒業生25名である。次は明治12年卒が18名で彼らが日本初の医学士達となる。明治4(1872)年頃に66名が「東校」に入学したが卒業時には22名(4名は遅れて卒業)になっている。入学者の3分の2は落第か途中断念である。以後、続々と続くが、カリキュラムが確認できた明治7(1874)年入学、明治16(1883)年卒業の流れを見てみたい。
明治7(1874)年11月の東京医学校入学者は121名だ。その後、東京大学医学部になる過程で予科3年・本科5年を過ごしたが、予科2年目進級時点で121名は67名に減少している。この段階の履修科目はドイツ学、算術、地理学、博物学、幾何学である。
さらに、世間では西南戦争の年、予科3年から本科1年の進級で67名は31名になる。履修科目は予科2年目にラテン語と代数学が追加、予科3年目に動植物学、鉱物学、対数、三角術、が加わる。
本科1年目にようやく物理学、化学、医科動物学、医科植物学、解剖学、各部解剖、組織学などが登場する。その後は医学部の様々な科目を履修し、本科5年を経て卒業試験に合格し医学士となったようだ。
31名(うち1名は卒業前に病死)のうち26名が卒業試験に合格し明治16年10月に学位を授与(残りは後日)されており、北里柴三郎もその一人だ。
外国人教師達は明治政府の意向にかかわらずドイツ陸軍軍医学校流の徹底した養成方法を取り、学内会話や授業は全てドイツ語であったという。
また、予科3か年では語学に加え、数学、博物学、動植物学などの基礎科目を徹底的に仕込んだことにも注意したい。現代の多くの大学では、入学後1年間で新入生の半数を落第させるなど到底考えられないであろう。これがその後の1年間でさらに半数に絞られたのである。語学のハードルをクリアするため、まず予科の履修科目の構成が似ていた東京外国語学校に入り、ドイツ語を習得した上で、あらためて東京医学校の予科を受験・入学したものも多数いたようである。
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現代の大学の進級とは大きく異なりますが、これもひとつの方法ですね。それと、途中で落第・退学した人でも明治18(1885)年以降は(相当のハードルであったようですが)医術開業試験(1916年廃止)など医師免許取得の機会が存在し、このルートから医師となった人も多数いたことは覚えておいて良いかと思います。
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