ラーメン用米めんの輸出価格は1袋148円 大量の米取引打診も【熊野孝文・米マーケット情報】2022年6月28日
6月22日から24日にかけて東京ビッグサイトで「日本の食品輸出EXPO」が開催された。久しぶりにリアルな会場で開催された展示・商談会とあってか連日大勢の来場者が詰めかけた。コメ・コメ加工食品を展示・紹介していたブースもあったので、立ち寄って話を聞いてみると輸出用に新たに開発した機能性を有したコメ加工食品を紹介していた出展社も数社あったほか、中には海外からの引き合いに関してビックリするような情報を教えてくれる出展社もあった。

コメ・コメ加工食品を展示・紹介していた出展社では、ポピュラーなところでは各産地銘柄米をブース正面に並べ紹介しているところがあったので、売れ筋の銘柄米を聞いてみると「岩手のひとめぼれ」と言う返事が返って来た。このブースは輸出に力を入れているコメ卸が出展していたものであったが、販促の応援に産地からも駆けつけ一緒になって自産地の銘柄米をアピールしていた。この産地には輸出に活路を見出そうとしている農協があり、4年産米の取組み数量を大幅に増加する計画。生産者組織では長野の「風さやか」の精米やそれをパックご飯にした商品やおはぎ専用ごはんといった特色ある商品を展示・紹介していた。農機会社がコメ作りに参入して設立した農業法人は地元島根のきぬむすめの玄米を30キロ9000円と言う価格の輸出用米を紹介していた。有機米の生産者も自社で生産した有機米や餅加工品を展示、それらを英語のパンフレットで紹介、試食提供したところや黒米を有機古代米と銘打って紹介しているところもあった。
有機米については、みどり戦略の制定もあってか国も支援しており、有機玄米を原料米にしたパックご飯が今週中にもJAS認証を得られる方向で、そうした商品を紹介していた。また、栄養面やSDGs面での有用性を認知してもらうべく大学の研究機関も協力、国際的な標準化会議が年末に予定されている。この狙いは、有機米の機能性を科学的に立証して、機能性食品として海外に販路を広げようというもので、その生産拠点として4県が候補に挙がっている。さらには商品デザインを芸術大学が手掛けるという力の入れよう。これ以外に有機米については、その玄米を丸ごと製粉して食品素材と提供しようとしている会社もあった。この会社は「高温熔融式粉対製造装置(特許製品)」と言う製粉装置を開発、アルファー化米粉を製造、同時に他の副素材も粉体化が可能で、複合パウダーにすることも出来るため様々な有機食品の素材に使えるとし、実際にその粉体原料を使って製造した洋菓子等も紹介していた。
ビックリする情報は、パックご飯商品に対してアジア圏の国2か国から月1000万食が欲しいという商談が舞い込んでいると言った話や、中東の国からは日本米18万トンの輸入打診があったという情報も聞かされた。5キロ精米で18万袋の間違いではないかと何度も質したのだが、18万トンであると譲らなかった。
日本米の輸出数量がそのレベルまでに達すとはこれまでの実績からすると俄かには信じられないが、そこまでは行かなくてもコメを加工した新商品を開発している出展社の中にはひょっとすると輸出が本格化するのではないかという商品もあった。
その一つがコメで作ったラーメン用の麺で、グルテンフリー商品として位置付けている。この商品を開発した会社の海外営業販売担当責任者は、これまで海外でグルテンフリーのパスタを売り込んでいたが、海外のバイヤーから「どうしてわざわざ日本からパスタを買わなくてはならないのか。それよりもラーメン用のグルテンフリー麺を作って欲しい」と言われ、商品開発を続け、今年8月に販売出来る目途が付いたことから展示会場で紹介した。その売価はFOB(日本国内本船渡し)で1袋148円。ニューヨークではラーメン1杯が日本円換算3000円で提供されているまでに円安が進み、1袋148円は極めて安い商品に写るようになるほど環境が変わってしまったので輸出用商品として有望視される。この会社は輸出向け商品としてコメ100%の甘酒を海外向けに商品アレンジした商品も開発しており、海外の需要を掘り起こす戦略に大きく踏み出している。
農水省が今月まとめた戦略的輸出事業者の参加状況によると77事業者が14万1000トンの目標を掲げている。上位5社は全農がコメ5万トン、パックご飯200万食、神明がコメ1万500トン、パックご飯200万食、全農インターナショナルがコメ1万トン、パックご飯100万食、クボタコメ1万トン、木徳神糧コメ6000トンとなっている。大きく変化した国際的な貿易環境を見るとひょっとするとこの目標数量は達成可能かもしれない。
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