(288)より暑くなるような統計数字から【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2022年7月1日
農水省から2022年2月1日時点の農業構造動態調査が公表されました。今年は全国の農業経営体数がついに975,100と100万を割り込みました。この他にもやや気になる点がありますので簡単に記しておきたいと思います。
先に述べたとおり、農業経営体数は975,100であり、経営耕地面積では、1ha未満の経営体が507,300と全体の52.0%を占めている。次いで多いのが1.0~5.0ha未満の経営体で365,500、割合は37.5%である。両者を合わせると89.5%、つまり全体の9割は5ha未満ということになる。経営耕地面積が30ha以上の経営体は19,600(2.0%)あるが、そのうち12,700が北海道である。これが現代日本農業の最新状況である。
以上を農産物の販売金額別に見ると、年間販売金額が1億円以上の経営体が9,100(0.9%)存在するのに対し、50万円未満の経営体が347,700(35.7%)、50~100万円未満が162,800(16.7%)、そして100~500万円未満が256,900(26.3%)ある。これを合計すると年間販売額500万円未満の経営体は数にして767,400、割合で78.7%、つまり全体の8割ということになる。
裏返せば、販売金額500万円以上の経営体は207,500、全体の21.3%、約2割ということだ。これが1,000万円以上になると、経営体数は128,200になり全体の13.1%、概ね上位1割強ということになる。
当たり前のことだが、農産物の販売金額がそのまま利益になる訳ではなく、そこから原価、そして経費を控除しなければ利益は出てこない。農地が自分の土地で家賃がなくても、種子・肥料・飼料などの投入財や光熱費、そして自らの労力を人件費として計算すれば、どれだけの利益が手元に残るかは容易に計算できる。とくに最近は投入費が高騰しているから大変である。
なお、基幹的農業従事者数は、1,225,500人であり、このうち60歳以上は823,600人(67.2%)と3分の2を占めている。さらにそのうち、75歳以上が403,000人と全体の32.9%、ほぼ3分の1だ。つまり、122万人とは、60歳未満が3分の1、60~75歳が3分の1、75歳以上が3分の1ということだ。
詳しくは農林水産省のウェブサイトに公表されているので、そちらを参照して頂くのが一番である。
* *
以下は雑感である。外で講演や研修などで話をする際、少し前までは東北地方の基幹的農業従事者数は25万人という覚えやすい数字であった。それが瞬く間に減少し、昨年は232,100人、今回の発表では219,300人(▲12,800人、▲5.5%)である。全国の数字は昨年が1,302,100人であったことを考えれば減少率は▲5.9%である。東北の減少率は幸い、わずかだが今年は全国レベルよりは少ないようだ。
だが、例えば、筆者が住んでいる宮城県の基幹的農業従事者は昨年31,600人であったが、これが▲5.5%ということになると、単純計算で29,862人となり、3万人を割る。昨年の数字では31,600人のうち60歳以上が26,900人で85.1%、そして75歳以上が9,300人で29.3%であった。割合は大きくは変わらないだろうが、厳しいことは確かである。
無理の無い範囲でということで、筆者は毎年、不要な作業を何とか10%減らすことをいくつかの場所で提案してきたが、労働力の減少ペースが作業量の減少ペースを上回る状況が着実に迫りつつある気がしてならない。こうした状況は恐らく東北に限らず、全国どこでも多少の差はあれ同様ではないか。極めて逆説的だが、PDCAなどと悠長なことを言っている時間は既に現場には無いと思った方が良いかもしれない。
* *
本来は梅雨が無いはずの北海道で6月に大雨が降ったと思えば、東京の気温が中東や東南アジアなどより高い、これが異常か普通かすらわからなくなりつつあります。皆さま、くれぐれもご無理をなさらないよう、十分にお気をつけ下さい。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日