リレーションシップ・マーケティングを実践しよう!【JAまるごと相談室・伊藤喜代次】2022年8月16日
事業利用者の細分化による関係性強化策
A・ライフ・デザイン研究所
代表 伊藤喜代次
「マーケティングなくして事業なし」が声高に叫ばれたのは30年ほど前のことです。それまでの押売り、一方的セールスのマーケティング論に代わって、消費者のニーズやウォンツを知り、関係をつくることが事業成果につながる、いわゆる第2世代のマーケティング論です。
この第2世代の中核的なマーケティング論は、リレーションシップ・マーケティング(関係性のマーケティング)でしょう。リレーションは「関係」、シップが付くと、顧客との「関係性」とか「関係力」。単なる事業取引だけでなく、事業活動を通じて、太く、強い顧客との関係性づくりが重要であるというわけです。
わが国は、空白の20年とか30年といわれ、低迷する経済状況が続いています。このために、多くの企業は新規の顧客獲得への活動を後退させ、代わって既存の利用顧客を失わない、関係性強化と満足度向上に方針を転換したのです。新規顧客の獲得には、多くのコストと営業力を要するからです。
そこで、既存顧客のなかでも、利用の多い優良顧客との関係強化を最優先にする施策を実行しています。スタッフの手間を少なくし、限りなく低コストで事業を確実に増加させ、収益性を重視してしっかり利益確保を図る、という方針転換を行っているわけです。こうした事業活動は、リレーションシップ・マーケティングの活用による顧客管理、顧客の細分化による方針とアプローチの検討が前提です。
何よりも、取引していただいているお客さんを、利用方法、金額、頻度などで3~5のタイプに分類し、さらに居住地域、年齢、家族構成などを細分化して、どのタイプのどの世帯からどんなアプローチをかけるか、スタッフの毎日の行動方針とアプローチ先が明確なので、効率的なアプローチが可能なのです。
JAの事業活動は、組合員とJAの「相互依存」の関係づくり
JAの事業活動についても、組合員の利用状況を考えながら、どのような方法が成果につながるかを検討したいですね。そして、重視すべきは、職員の活動の効率性とJAの収益性であることは、他の企業と変わりません。そこで、組合員の利用状況を分析し、事業活動を検討するためには、リレーションシップ・マーケティングの活用が必要です。
リレーションシップ・マーケティングをわかりやすく説明すると、「いかに顧客を獲得し、それを持続して、利用し続けてもらうか、のすべての活動」です。これはマーケティング界の大家の一人、セオドア・レビット氏(当時、ハーバード大学ビジネススクール教授)の言葉です。1991年にアメリカでのMBAのマーケティング講座で、彼の著作に接しました。感動的で刺激的でした。
そこで学んだのは、商品さえ売れればいい、契約さえとれればいい、というビジネスは、継続性、発展性、成長性に乏しい。ビジネスを通じ、顧客との強い関係性をつくることが重要な時代に入ったと。JAに置き換えれば、組合員との関係性をいかに育て、それを管理・開発し、強い関係にしていくのが事業活動だ、となります。
そして、レビット氏の話をさらに発展させると、JAと組合員の双方が信頼の関係を築き、互いに成長・発展していくための考え方、スキル、戦略的な展開が、マーケティングであり、その実践が事業活動だというのです。いかにも、協同組織の事業論、マーケティング論ではないか、と理解しました。
以来、30年余り、JAの事業戦略や経営計画に関係するコンサルティングでは、このリレーションシップ・マーケティングをベースにしたデータの収集、分析、検討をもとにした方針や戦略づくりを行ってきました。データによる数値化で方針づくりや具体的な取組み方法が見えやすく、目標設定が楽で、職員の理解が早く、即行動に移せるスピード感が生まれました。劇的な変化です。
組合員との接点に位置づけられている支店や事業所の職員のみなさんに、もう一つ、大切なことをお話ししています。レビット氏の言葉を借りれば、「インターフェイスからインターディペンデンスへ」です。インターフェイスは「接点、接触」、インターディペンデンスは「相互依存」の意味です。
ただ単に、組合員との接点を持ち、事業取引を増やしてもらう関係性だけを考えるのではなく、組合員とJAとの関係を、互いに信頼し、互いに必要とし合う関係づくりに変える努力が重要だ、ということです。
そのためには、職員が「待ちの姿勢」ではなく、組合員の営農や暮らしのなかに入り込んでいく姿勢と行動がポイントです。相互依存、信頼の関係は、職員の前向きな行動が必要です。組合員がやってくるのを「待つ」姿勢を改めることです。
リレーションシップ・マーケティングの実践の具体的な話は、別な機会に。
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