日本のコロナ死者数は主要国で最多【森島 賢・正義派の農政論】2022年8月22日
政府のコロナ対策が、迷走を続けている。感染の現況が全く見えぬまま、視界ゼロで右往左往している。
これは、今に始まったことではない。2年半前の感染の当初から密かに続いている。つまり、当初から感染者が何人いるかさえも見ようとしなかった。
その原因は、必要な検査を十分に行ってこなかったからである。それでは、感染の全容が分かるはずがない。それが今まで密かに続いてきた。
そしていま、日本のコロナによる死者数は、主要国のうちで最多になった。だが、政府は開き直ったように、全容を見るのを止めることを公然といいだした。その理由は、医療が逼迫したからだ、という。
医療が逼迫したのなら、医療の供給を増やせばいいのだ。だが、それをしない。国民に対して、受診を自粛せよという。
これは、国民の健康と医療体制の保全を天秤にかけ、国民を犠牲にしたものである。
感染の全容を見ないことで、何が起こるか。非専門家ではあるが、筆者も考えてみた。
全容を見ないことで起こることは、事実と科学に基づくコロナ対策の放棄である。その結果、コロナ対策は迷走し、コロナはさらに広く蔓延するだろう。死者は、ますます増えるだろう。科学者の責任も重い。
政府は、日本も、英国などが目ざしている集団免疫の獲得を目ざそう、と考えているようだ。だが、日本と英国などとでは、医療の条件が違う。
日本には、必要で有効なワクチンも不十分だし、治療薬も不十分である。医療体制も不十分である。だから、サル真似にしかならない。その犠牲を強いられるのは国民である。
上の図は、主要国の人口100万人あたりの、コロナによる死者数である。コロナ禍の実態を見るばあい、いまや、感染者数は、その実態を示す指標になっていない。だから、次善の方法として死者数でみるしかない。死者数は、隠しきれないと思われるからである。
日本の死者数はどうか。上の図で示したように、日本の死者数は、恥ずかしながら主要国のうちで最多である。
この死者数は、感染の最盛期から、しばらく経って、その後にピークを迎える。その間、対策が遅れる。その間、死者が増える。
これは、感染者の全数把握を止めることの天罰である。この罰は、国民の全体が受ける。
次々と交代する変異種に対するワクチンと治療薬の早急な開発が不可欠、という問題もある。
◇
政府は、集団免疫の獲得を狙っているようだ。だが、いったい日本には、いま免疫を得ている人が何人いるか。その人数も分からない。政府は、知ろうともしない。
その人数は、集団免疫を獲得するまで増えつづけるのだろう。それは、どれ程か。
多数説によれば、国民の60%以上の人が免疫を得れば、集団免疫を獲得する。そうなれば、それ以上、感染は拡大しなくなるという。
◇
いま日本に免疫を得ている人が何人いるのか。
すでに感染した人は約1700万人いる、と政府はいう。だが、そのうちの何人が、いまも免疫を持っているか。何人が、すでに免疫を失っているか。それが分かっていない。
その他に無症状の、すでに感染した人がいる。だが政府は、その人数を全く知らない。まして、そのうちの何人が、いまも免疫を持っているか。何人が、すでに免疫を失っているか。それを知らない。
こうした基本的な事実を知らないままで、集団免疫を狙っている。五里霧中で迷走している、というしかない。政府は、あまりにも国民をコケにしていないか。
◇
もう1つ指摘しておくべきことがある。それは、日本は英国とは違って、充分に有効なワクチンがないまま、そして、有効な治療薬がないまま、徒手空拳でコロナの蹂躙を座視していることである。
次々と交代する変異種に対するワクチンと治療薬の早急な開発が不可欠だが、政府にその気はない。
さらに、いま、日本は持っている医療力を十分に発揮しているか。そのために医療体制を再編する気があるか。政府に、その気はない。
◇
政府は、一刻も早く目を覚まさねばならない。野党は、一刻も早く政府を揺り起こして、目を覚まさせねばならない。
11か月後には、統一地方選挙が待っている。国民の審判が下る日は近い。
(2022.08.22)
(前回 米欧型自由は偽物)
(前々回 コロナの敗北宣言)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日