米欧型自由は偽物【森島 賢・正義派の農政論】2022年8月8日
米欧諸国の多くは、誇らしげに自由を標榜している。そして、自国を自由主義国家だ、と胸をはっている。自由を政治の最高位の規範にしている、というのである。
だが、実際はどうか。自由よりも高位の規範があって、そのことを隠している。よほど恥ずかしいのだろう。つまり、彼らがいう自由は、最高位の規範に見せかけた、実は偽物である。
日本はどうか。
日本も、自由国家だといって、米欧の仲間に入れてもらっている。だが、高名な某政治家の表現をかりれば、「米国のポチ」になることを、自由よりも高位においている。これは、国家の品格にかかわることである。日本は品格を捨て、ひれ伏して、米国の強制に屈している。
ここでは、食糧の安全保障にかかわって、農産物貿易の自由について考えよう。

上の図は、日本の米の供給量を、国内生産量と輸入量とに分けて、近年60年間の実態をみたものである。
この図から分かることは、最近の20数年間、輸入量がほとんど変化していないことである。この期間は、ガットでの自由貿易交渉が妥結した以後の期間である。
自由貿易になったというのに、20年以上の間、一定の量の米を輸入している。
◇
ガット交渉の結果、日本は米の輸入を自由化した、という。だが、必要な量だけ自由に輸入しているわけではない。約9%の米を毎年輸入している。豊作で供給過剰になり、米価が下がっても、輸入し続けている。輸入するために、国内生産量を減らす、までして輸入し続けている。
輸入元は米国だが、日本は、そこまでして米国から輸入し続けている。
これは、自由でも何でもない。自由を標榜する米国による強制であり、米国の機嫌を損なわないように忖度する、哀れな日本の政治である。
このため、日本の食糧安全保障は、やがて、重大な危機に直面するだろう。
◇
さて、世界に目を向けると、いま多くの国は、ウクライナ紛争を大きな原因にして、食糧価格の暴騰にみまわれ、多くの国は食糧の安全保障が脅かされている。これにエネルギー価格の暴騰が加わって、政権の継続が危うい国もある。
日本はどうか。
日本も、小麦製品などの価格が高騰している。輸入に依存しているので、ウクライナ紛争による国際市場での供給不足で、国際価格が高騰したことが原因である。
こうした事態のなかで、ようやく日本でも、多くの国民が、食糧自給率の40%以下という低さに、目を向けるようになった。そうして、食糧安保に危機感を持つようになった。
◇
食糧安保については、農基法で次のように規定している。「・・・食料の安定的な供給については・・・国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行われなければならない。」としている。
だが、実際はどうか。自給率は40%以下である。これは「輸入を基本としている」からである。
米は91%で多い、と反論したい人がいるだろう。だが、その実態は、冒頭の図で示したとおりである。国内生産で充分に供給できるのに、一定の量を20年以上の間、輸入し続けている。米価が下がっても、減反を強化して、輸入し続けている。そうして、国内の農業を破壊している。
これが、農産物の貿易自由化の実態である。米欧型自由が偽物であることを示す実態である。
◇
食糧安保が重要な政策課題だ、というのなら、まず初めに為すべきことは、米の理不尽な輸入を止めることである。「米の輸入反対」という分かりやすい旗を、高く掲げることである。そうすれば、大多数の農業者の大喝采が得られるだろう。
そうして、心ある多くの国民の支持を結集することである。
だが残念なことに、ここに関心を持っている政党は、与野党のどこにもない。ウクライナ紛争で分かったように、全ての政党が「米国のポチ」になり下がっているからである。
(2022.08.08)
(前回 コロナの敗北宣言)
(前々回 米欧型の自由の崩壊)
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