米欧型の自由の崩壊【森島 賢・正義派の農政論】2022年7月25日
ウクライナ紛争で、米欧が掲げている旗印は「自由と民主主義」である。それは、唯一つの普遍的な価値だという。それをNATOの軍事力を使って東方へ広めよう、というのがウクライナ紛争である。ウクライナにNATOの軍事基地をつくり、さらに東方へ広めよう、と考えている。
わが日本はどうか。ほとんど全ての政党は、米欧型の自由と民主主義を普遍的とみているようだ。だからNATOの側に立っている。
だがそれは、普遍的な自由と民主主義、などというものではない。特殊な米欧型の自由と民主主義にすぎない。各国には、それぞれに歴史で培った自由と民主主義がある。米欧は、それを否定している。それだけではない。軍事力を使って撲滅しようとしている。
ここでは、「自由」を考えよう。米欧型の自由を社会の根幹である生産段階からみると、それは搾取の自由である。そして、それは資本主義に根ざすものである。だから、資本主義を否定する中国やインドなどの社会主義国は、受け入れない。
上の図は、主要国の経済発展の様相を示したものである。コロナ以前の20年間のGDPの年平均成長率である。
この図を見よう。上の6か国は米欧型の自由を信奉する資本主義国である。下の4か国は、それに批判的で、生産手段の社会的管理を強めようとしている、つまり社会主義的な国々である。
この2つの間には、この図から分かるように、経済発展の早さに明らかな違いがある。これは、この2つの社会体制の優劣を示している。
◇
古今東西の歴史を俯瞰すると、生産力の小さい社会体制は、やがて生産力の大きい社会体制に代わる。
いま世界は、ウクライナ紛争を契機にして、歴史の転換点に立っている。生産力の小さな資本主義から、生産力の大きい社会主義への転換である。
それは、米欧型の自由の崩壊過程、といってもいい。
上の図で、20年間という中期的な期間をみたのは、この崩壊過程は、今後数十年にわたる、と考えられるからである。
◇
さて、米欧型の自由は、これまで社会に何をもたらしてきたか。
それは、弱者にとって耐え難いほどの格差の拡大である。そこでは雇用の自由という名のもとで、労働者の搾取を強め、低賃金を強いてきた。また、貿易の自由という名のもとで、食糧安保を顧みず、農業者に低所得を強いてきた。
◇
この点について、支配の側に立つ資本者たちの言い分は、こうである。農業者には、農業をやめる自由があるし、労働者には雇用契約を破棄する自由がある、と。
なるほど、法律的にはその通りである。奴隷労働はない。だが、経済的にはどうか。
生産手段を僅かしか持っていない農業者や、全く持っていない労働者は、農業をやめ、労働者をやめて、何で食っていくのか。待っているのは、さらに低い低賃金と低所得である。これは、自由どころか経済的な強制である。
つまり、農業者や労働者には、法律的な自由はあるが、経済的な自由はない。低賃金、低所得という被搾取の強制だけがある。
これが、米欧型の自由である。それが、いま、各国の国民の反撃によって、崩壊しつつある。
◇
ウクライナ紛争は、それが先鋭化したものである。一刻も早く沈静化させねばならない。
そうして、冷静な状況のもとで、米欧型の自由を、歴史の舞台から退場させねばならない。
(2022.07.25)
(前回 コロナ対策の秘かな大転換)
(前々回 米欧型の民主主義の崩壊)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(1)養豚農家に寄り添い疾病を防ぐ クリニック北日本分室 菅沼彰大さん2025年9月16日
-
【石破首相退陣に思う】戦後80年の歴史認識 最後に示せ 社民党党首 福島みずほ参議院議員2025年9月16日
-
【今川直人・農協の核心】全中再興(6)2025年9月16日
-
国のプロパガンダで新米のスポット取引価格が反落?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年9月16日
-
准組合員問題にどう向き合うか 11月15日に農協研究会開催 参加者を募集2025年9月16日
-
ファミリーマートと共同開発「メイトー×ニッポンエール 大分産和梨」新発売 JA全農2025年9月16日
-
「JA共済アプリ」が国際的デザイン賞「Red Dot Design Award2025」受賞 国内の共済団体・保険会社として初 JA共済連2025年9月16日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」北海道訓子府町で じゃがいもの新品種「ゆめいころ」を収穫 JAタウン2025年9月16日
-
山形県産「シャインマスカット」品評会出品商品を数量限定で予約販売 JAタウン2025年9月16日
-
公式キャラ「トゥンクトゥンク」が大阪万博「ミャクミャク」と初コラボ商品 国際園芸博覧会協会2025年9月16日
-
世界初 土壌団粒単位の微生物シングルセルゲノム解析に成功 農研機構2025年9月16日
-
「令和7年8月6日からの低気圧と前線による大雨に伴う災害」農業経営収入保険の支払い期限を延長(適用地域追加)NOSAI全国連2025年9月16日
-
農薬出荷数量は1.3%増、農薬出荷金額は3.8%増 2025年農薬年度7月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年9月16日
-
林業の人手不足と腰痛課題解消へ 香川西部森林組合がアシストスーツを導入 イノフィス2025年9月16日
-
農業支援でネイチャーポジティブ サステナブルの成長領域を学ぶウェビナー開催2025年9月16日
-
生活協同組合ユーコープの宅配で無印良品の商品を供給開始 良品計画2025年9月16日
-
九州・沖縄の酪農の魅力を体感「らくのうマルシェ2025」博多で開催2025年9月16日
-
「アフガニスタン地震緊急支援募金」全店舗と宅配サービスで実施 コープデリ2025年9月16日
-
小学生がトラクタ遠隔操縦を体験 北大と共同でスマート農業体験イベント開催へ クボタ2025年9月16日
-
不在時のオートロックも玄関前まで配達「スマート置き配」開始 パルシステム千葉2025年9月16日