米欧型の民主主義の崩壊【森島 賢・正義派の農政論】2022年7月11日
参院選のさなか、安倍晋三元首相が、凶弾に倒れた。痛ましい限りである。これは、民主主義を根底から否定するものである。
安倍政治には、さまざまな評価がある。しかし、人の命は何よりも重い。謹んでお悔やみ申し上げる。
民主主義の根底には、暴力の否定がある。こんどの犯行に政治的背景はない、とはいうが、この機会に日本の民主主義について考えてみよう。戦前には、疲弊する農村に無策な、政党政治に対する失望から、同様な惨事があった。今はどうか。
こんどの惨事は、日本の民主主義の未熟さを、世界中に曝すことになった。
究極の暴力は戦争だが、日本はそれを否定していない。か細い声で戦争反対というだけで、防弾チョッキをウクライナに送って、戦争を煽っている。これを着て勇敢に戦え、というのだろう。
これは、日本だけではない。米欧型の民主主義の未熟さでもある。未熟さというより、欠陥というほうが、適切だろう。

さて、上の図は昨日の参院選の結果である。前回の参院選と比較したものだが、比例区での政党別の得票数の増減を表している。
与党の圧勝だというが、それほどのものではない。だが、これまでの自公政治が信認された、とみるしかない。
この図で目立つのは、維新と新党の「参政」の躍進だが、ここで注目したいのは、立憲、共産、国民の既成野党の惨敗である。
◇
世界に目を向けよう。
世界をみると、コロナ禍のなかで、そしてウクライナ紛争のなかで、世界は、歴史の転換点にある。それは、米欧型民主主義についての争いである。
米欧は、米欧型の民主主義が普遍的だというし、中露側は、それを否定している。
もしも、それが論争の範囲で行われているのなら歓迎すべきことである。そうすれば、より質の高い民主主義になる。
だが、暴力で相手を屈服させよう、というのがウクライナ紛争である。これでは、こんどの犯人とかわらない。それどころか、戦争という究極の暴力を使っている。これを容認するのは、ジャングルの社会しかないだろう。
◇
ウクライナ紛争は、いまや歴史の転換点になろうとしている。この歴史の転換点は、米欧型の民主主義を唯一の規範とする歴史から、それを否定する歴史への転換である。
各国には、各国の共同体の長い歴史のなかで培われた固有の民主主義がある。転換点というのは、それを互いに尊重し、高めあうという国際社会へ転換する、というものである。
こうした歴史の転換期のなかで、日本は、与党も既成の野党も、歴史から消え去ろうとする米欧型の民主主義にしがみついている。そこに安住していて、批判するところがない。参院選の結果は、そのことを如実を表している。
◇
こんどの参院選の結果は、既成野党の全てが、古びた異臭のする米欧型の民主主義に、何の疑問も持っていないことを暴露した。だから、ウクライナ紛争でもウクライナやNATOを、一方的に支援している。
これを、転換しなければならない。
新しく新鮮な民主主義は、既成の野党からではなく、与党の一部から生まれてくるのかもしれない。そうなれば、既成野党の存在理由はなくなるだろう。米欧型の民主主義とともに、歴史から消え去るだろう。
そうなったら、自民党は名前を変えて「自民社党」にしたらどうか。
(2022.07.11)
(前回 NATOの焦り)
(前々回 コロナ対策の協同組合主義的な改革)
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