コロナ対策の秘かな大転換【森島 賢・正義派の農政論】2022年7月19日
コロナの第7波が襲ってきた。累計の感染者数は1000万人を超え、国民の1割に迫っている。だが政府は、無策のままである。
政府は、国民に対して、一層の自粛を要求するだけで、いまのままの対策を今後も続け、特別の対策は採らない、としている。とうとう策に窮して、あからさまに国民を棄てたのである。
善意にとれば、政府は、コロナ対策の目的を、集団免疫の獲得に大転換した、と言い逃れしようとしているのかも知れない。
だが、集団免疫を獲得するには、そのための条件が必要である。その条件を満たしていない。
上の図は、年初から先週末までの新規感染者数の推移である。先週には、過去最多記録を更新した。
第7波に突入したことは、専門外の筆者の目にも明らかである。
この図をみて、政府はコロナ対策を放棄したのだろう。そうして、対策の目的を集団免疫の獲得に転換したように、見せかけようとしている。
◇
集団免疫とは、免疫を獲得した人を、国民の6割程度に増やし、それ以上の感染拡大の勢いを弱め、ウイルスが死滅するのを待つ、というものである。
これには、条件がある。
免疫を獲得するために、自然感染を待つ、というのでは対策でも何でもない。ただの無策である。そうではなくて、優れたワクチンを開発し、接種して、多くの国民が免疫を獲得することを対策にする。
だが、政府はワクチンの開発を怠ってきたし、不充分にしか輸入してこなかった。
◇
また、免疫を獲得しても、100%の人が感染を免れるわけではない。不運にも感染する人がいる。だから、その人たちを重篤化させないための薬を開発し、投与することが必要である。
だが、政府は薬の開発を怠ってきたし、不充分にしか輸入してこなかった。
これは、集団免疫ではない。経済が第1、国民の命は第2という、これまでのコロナ無策の継続である。その結果が、いまの日本の、国民を犠牲にした、悲惨なコロナ禍の実態である。
◇
日本のコロナ無策は、今に始まったことではない。当初から、検査を怠ってきたし、隔離も不充分だったし、治療も不充分だった。
これは、集団免疫を目指していたように見えたかもしれない。だが、実際にはただの無策だったのである。だから、大転換でも何でもない。これまでの無策を今後も続ける、という厚顔な開き直りである。
そして、このことが露見するのをおそれて、秘かに無策を続けようとしているだけなのである。
◇
いまからでは遅い、などと言ってはいられない。
政府は、持っている力の全てを使って、必要なワクチンと治療薬を、充分に供給すべきである。そうして、医療の力を最大限に発揮できるように、その体制を民主的に再編すべきである。
野党には、それを督促し、監視する責任がある。参院選の大敗に、意気消沈しているときではない。
(2022.07.19)
(前回 米欧型の民主主義の崩壊)
(前々回 NATOの焦り)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(157)-改正食料・農業・農村基本法(43)-2025年8月30日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(74)【防除学習帖】第313回2025年8月30日
-
農薬の正しい使い方(47)【今さら聞けない営農情報】第313回2025年8月30日
-
【現地ルポ JA兵庫南・稲美CE】集荷推進 安定供給の要に おいしく、安全管理心掛け(1)2025年8月29日
-
【現地ルポ JA兵庫南・稲美CE】集荷推進 安定供給の要に おいしく、安全管理心掛け(2)2025年8月29日
-
計画荷受けと適正人員配置を 全国農協カントリーエレベーター協議会 大林茂松会長2025年8月29日
-
【注意報】シロイチモジヨトウ 県内全域で多発に注意 石川県2025年8月29日
-
【注意報】ピーマンに斑点病 県内全域で多発のおそれ 大分県2025年8月29日
-
【注意報】ハスモンヨトウの誘殺数が急増 早期防除の徹底を 福島県2025年8月29日
-
【注意報】ハスモンヨトウ 県内全域で多発のおそれ 長野県2025年8月29日
-
【注意報】シロイチモジヨトウ 県内全域で多発のおそれ 栃木県2025年8月29日
-
米価下落時 備蓄米買い入れ 機動的に JA全中が要請2025年8月29日
-
概算金なぜ上がる 7月末に状況一変 不透明感、農水省にも問題2025年8月29日
-
米流通対策官を設置 来年度要求 農水省2025年8月29日
-
(450)冷蔵庫の先にある発電所【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年8月29日
-
シャリシャリ食感とあふれ出す甘さ 鳥取県産梨「新甘泉フェア」29日から JA全農2025年8月29日
-
JA全農Aコープ 短期出店支援プラットフォーム「ショップカウンター」導入2025年8月29日
-
資材店舗ディスプレイコンテスト開催 最優秀賞はJA阿蘇小国郷中央支所 JA熊本経済連2025年8月29日
-
毎月29日は「肉の日限定セール」おかやま和牛肉など約230商品が特別価格 JAタウン2025年8月29日
-
最新食品研究成果を一挙に「農研機構 食品研究成果展示会2025」開催2025年8月29日